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野村総研、数学理論を応用したコンテンツ配信システムを発表


2001年4月17日

(株)野村総合研究所は16日、都内で記者発表会を開催し、米Digital Fountain社が開発した“メタ-コンテンツ”技術を利用したデジタルコンテンツ配信システム『Aqualink(アクアリンク)』を開発し、6月に発売すると発表した。デジタルコンテンツ配信分野の技術協力と販売提携に関する合意に基づくもの。

(株)野村総合研究所取締役 e-ソリューション部門長 室井雅博氏
(株)野村総合研究所取締役 e-ソリューション部門長 室井雅博氏

メタ-コンテンツ技術は、オリジナルのデジタルファイルに“Luby-Transform”(※1)という数学的アルゴリズムを適用することで、メタ-コンテンツと呼ばれるファイル形式に変換するというもの。メタ-コンテンツは“メタ-コンテンツパケット”から成るが、それぞれのパケットはユニークなもので、かつそれぞれにオリジナルファイル全体の情報が含まれているとしている。メタ-コンテンツ形式で送り出されたパケットデータは、順序に関係なく、また途中のパケットが欠落していても、ある必要なだけのパケットを受信すれば、一種の連立方程式を解くことで、オリジナルファイルが復元できる仕組み。

※1 米Digital Fountain共同設立者の1人で、現最高技術責任者マイケル・ルビィ(Michael Luby)博士が考案した数学的アルゴリズム。ルビィ博士は米カリフォルニア州立大学バークレー校(UCB)の元教授で、符号理論、暗号学、確率アルゴリズム、グラフ理論の世界的に知られているという。

米Digital Fountain共同設立者のマイケル・ルビィ博士
米Digital Fountain共同設立者で最高技術責任者のマイケル・ルビィ博士
メタ-コンテンツパケットから、オリジナルファイルを復元する仕組み
メタ-コンテンツパケットから、オリジナルファイルを復元する仕組み
米Digital Fountain社社長兼CEOのクリフォード・メルツァー氏
米Digital Fountain社社長兼CEOのクリフォード・メルツァー(Clifford Meltzer)氏

野村総研のAqualinkは、このメタ-コンテンツ技術をIPネットワークを使ったデジタルコンテンツ配信に応用したもので、送信帯域幅、送信スケジュールなどの配信管理や配信制御といった、コンテンツ配信センターとして必要な管理が行なえるシステム。野村総研e-システムソリューション部の森本教稔氏は、メタ-コンテンツを利用するメリットとして以下の4つを挙げ、コンビニエンスストアなどチェーン加盟店へのコンテンツ配信、企業内ネットワークにおける大量のパソコンへのプログラム配信、通信衛星によるビデオコンテンツ配信などに広く適用可能とした。

  1. IPマルチキャストベースのコンテンツ配信を行なう場合、従来であればサーバーに近い上位ネットワークほど広い帯域幅が必要だが、Aqualinkではネットワークのどこでもクライアントがアクセスするのと同等の帯域幅しか必要としない(パケットの複製はルーターで行なわれる)
  2. パケットの受信順序や途中が欠落していても必要な数のメタ-コンテンツパケットが受信できればオリジナルコンテンツの復元が可能で、信頼性が高い
  3. 受信側は送信側と同期をとる必要はなく、任意のタイミングで受信を始めればよい
  4. 複数のサーバーから同一のオリジナルコンテンツを送信した場合、受信側はどのサーバーから受信してもよく、システムの二重化が容易
通常の配信技術とメタ-コンテンツ技術のコスト差
通常のネットワーク配信技術では、クライアントの増加に比例して配信コストが増加するが、メタ-コンテンツでは配信コストはほぼ一定となっている

AqualinkはWindows 2000 Server上で稼働する配信管理サーバーと配信制御サーバー、Digital Fountain製配信エンジン(サーバー)、受信クライアント(Winwows 95/98/Me/NT4.0/2000)で構成されるAqualinkの価格は、クライアント数により異なるが、1システム2500万円〜1億円。初年度20システムの販売を見込んでいる。

Aqualinkによるマルチキャスト配信の概念図
Aqualinkによるマルチキャスト配信の概念図

また米Digital Fountainは、オリジナルファイルからメタ-コンテンツ形式への変換と、ネットワークへの送信を行なうサーバー製品として、オンデマンドストリーミングビデオサーバー『Streaming Fountain 3030』と、FTPサーバーにとって代わるプル型コンテンツ配信サーバー『Download Fountain 1010』を米国で販売するが、野村総研はこの2製品についても国内で販売する予定(現時点では価格は未定)。

『Streaming Fountain 3030』
『Streaming Fountain 3030』これ1台で1万のVHS品質のビデオストリーミングまたは4000のDVD品質のビデオストリーミングを送信できる

発表会では、サーバーから送信されたデータをクライアントパソコンで受信中にネットワークケーブルを引き抜き、しばらくして戻すとエラーを起こすこともなくファイル受信が再開されるデモや、ストリーミングビデオを2台のクライアントでタイミングをずらして受信開始し、2台がそれぞれのタイミングでビデオ再生をするデモが披露された。

Digital Fountainのメタ-コンテンツ技術は、IPネットワークであればファイル形式に関わりなく応用が可能で、復元に必要な計算量も少なく、CPUのわずかのパワーしか必要としないとしている。現在クライアントはWindowsプラットフォームのみだが、モバイル機器への展開も念頭に開発したとしており、将来携帯電話への応用も可能という。

メタ-コンテンツ技術によるデータ配信は、ネットワークやサーバーにかかる負荷が比較的低く、データを大量のクライアントに配信してもコストはほぼ一定であるなど、放送に近いシステムだ。ブロードバンド時代のキラーコンテンツとして、ビデオオンデマンドを、という話を聞くが、現状のシステムではサーバー側に大きな投資が必要で、コスト回収のため現実的な料金でサービスができるかどうかが問題とされていた。メタ-コンテンツ技術は、コンテンツ配信コスト削減の手段として期待できそうだ。

(編集部 佐々木千之)


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