このページの本文へ

Tzero、480MbpsのUWB無線チップを7月から出荷

2006年06月26日 16時43分更新

文● 編集部 西村賢

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

映像機器など家電向けに出荷

無線LANがカバーするのより狭い範囲で、480Mbpsという高速な無線通信を実現するWPAN(Wireless Personal Area Network、無線PAN)を搭載した家電製品が、年内にも登場しそうだ。テレビ、HDDレコーダー、DVカムコーダー、ゲーム機といった製品は、電源を除いて“配線不要”になっていくのかもしれない。

米Tzero Technologies社は26日、ハイビジョン映像を3本以上同時に無線伝送可能な家電向けUWBチップセット“Tzero TZ7000”を7月から出荷すると発表した。家庭やオフィスで利用するテレビ、DVD、ゲーム機、パソコンを含む家電機器をターゲットに普及を目指し、チップは家電メーカーなどに対して提供する。製品は2チップ構成で、主要OSをサポートするソフトウェアも付属する。価格は1万セット出荷時、1セットあたり20ドル(約2330円)。

TZ7000
Tzero TZ7000のリファレンス実装

WiMedia Allianceの方式を採用

UWBは“Ultra Wide Band(ウルトラ・ワイド・バンド:超広帯域)”という名前が示すとおり、携帯電話や無線LANの通信方式に比べて、はるかに広い周波数帯域を一度に利用する。データの変調方式が同等であれば、利用帯域に比例して伝送速度は大きくなるため、UWBはきわめて高速な通信方式として期待されている。距離による減衰の大きい高周波数を含む、幅広い周波数帯域を使うため、屋外や長距離の伝送には向かないが、近距離の伝送では802.11a/gの約10倍の速度で通信が可能だ。

UWBの利用帯域
UWB(図中、緑の部分)は広い帯域の電波を利用する

標準化団体のIEEEによるUWBの標準化は、“IEEE802.15.3a”として数年前から始まっているが、UWB ForumとWiMedia Allianceという2つの業界団体が存在したまま、統一規格は長らくまとまらなかった。今年1月にハワイで行なわれたIEEEの会合では、ついに両団体による規格の統合を断念。いち早くUWBの製品化を進めることが、業界にとってもマーケットにとっても最善という判断から、2つの規格を別々に製品化するすることで両団体は合意した。WiMedia Allianceにはインテルやソニーなど主要プレーヤーが参加するほか、今年3月にはBluetooth SIGが次期規格のBluetooth 3.0にWiMedia Allianceの通信方式の採用を決めるなど、WiMedia Allianceに業界のモーメンタムが傾きつつある。

送受信とも2本のアンテナを利用

今回、Tzeroが製品化したのは、WiMedia Allianceが提唱する標準で、送受信双方とも2本のアンテナを利用し、480Mbpsの伝送速度を実現する。独自技術により、他の機器からの電波干渉を受けづらく、干渉電波の強度が信号電波の10倍でも、干渉の影響を除去できるという。

壁越しなど見通しの悪い環境でも、5m以内では480Mbps、15~30mの範囲で100Mbpsの速度を実現。WiFiの仕様に従えば、120分のハイビジョン映像を伝送するときに起こるパケットエラーレートは、766万回以内となっているところ、TZ7000は1回未満という仕様となっており、もっとも厳しいアプリケーションである高品質映像の伝送に適しているという。

スループット比較 デモ
FTPのスループット比較。802.11nドラフトの3~4倍の速度ハイビジョン映像の伝送デモ。金属製カップで2本のアンテナをふさいでも受信

802.11の代替ではなく、より大きな市場を目指す

記者会見で製品戦略について説明したマイケル・グレットCEOは、高品位映像の伝送とPC用ケーブルの代替がターゲット市場だと説明。価格、速度、耐ノイズ性能のどれをとっても802.11よりも技術的に勝るものの、明日から、オフィスや家庭の無線LANルーターを置き換えるわけではないという。「802.11は業界標準として長い実績があるが、われわれの技術はまだ新しい。まずは802.11と、もっとも差がつく映像関連製品での普及を目指す。テレビ、DVD、HDDレコーダーなどの市場は、パソコン市場に比べてはるかに大きい」と話した。

マイケル・グレットCEO
マイケル・グレットCEO(Michael Gulett)

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン