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日本HP、50インチディスプレー3台利用のテレビ会議システムを販売開始


2006年8月22日

相手が数千キロを隔てた場所にいることを忘れてしまいそうな、ほとんど直に会ってミーティングをしているような錯覚を覚えるリアルなテレビ会議システムが現われた。価格は非常に高価で、おもにグローバルに活動する大企業向けだが、今後何年かでシステムの普及と低価格化が進めば、ビジネスマンの“ミーティングのための出張”というのは過去の話になるのかもしれない。

相手が眉をひそめたのか、感心しながら聞いているのかが分かる

日本ヒューレット・パッカード(株)は22日、50インチディスプレー3台に実物大で参加者を映し出すバーチャル会議システム『HP Halo Collaboration Studio』(以下、Halo)の販売を同日から開始すると発表した。

HP Halo Collaboration Studio
HP Halo Collaboration Studio

価格は設置スタジオ数などによって異なるが、スタジオ2室導入時の初期設置費用は1室あた約4888万円。回線費用やサポート料は国ごとに異なり、日本では1室あたり月額3万ドル(約347万円)。米国で1万8000ドル(約208万円)となっている。設置したHalo専用会議室は24時間利用でき、回線予約などは不要。

Haloのパッケージに含まれるのは会議室、回線、運用サポートなど。会議室の“Haloコラボレーションスタジオ”には、50インチディスプレー4台(人物用×3、コラボレーション画面用×1)、人物撮影用カメラ3台、ズームカメラ1台、サーバーや無停電電源装置などの機器をはじめ、専用の照明器具や会議机、椅子、防音壁、会議室設備など一式を含む。

Haloは専用の光回線ネットワーク“HVEN(Halo Video Exchange Network)”を利用する。HVENは光波長多重を用いた622Mbps(OC-12)の高速回線で、公衆回線や、他のネットワークとの相乗りがないため、遅延を最小限に抑えることができるという。世界23ヵ所に設置されたHP社内の拠点をベースにネットワークを展開する。光回線が使える地域であれば、基本的に世界中でサービス利用が可能。

実際にワシントン−東京間の会議を体験

日本HPでは市ヶ谷事業所内にHaloスタジオを開設。発表会では、記者向けにワシントンDCと東京を結んだミーティングを設定し、その使い勝手の良さをアピールした。

会議室に入るなり、画面の向こうに居並ぶ面々が手を振って挨拶してくるものの、やはり“画面の中の映像”という感が強く、違和感を覚える。ところが、数分も話を聞き、向こう側とこちら側でやりとりをするのを見ていると、同じ会議室という場所、“ここ”を共有しているという感じが強くなってくる。

Haloの会議室
Haloの会議室。入るなり視線がこちらに……
マイク
テーブルに3ヵ所埋め込まれたマイク
VGAケーブル
手元のパソコンの情報を上部ディスプレーで共有するためのVGA接続ケーブル

Halo開発チームの一員で、人間集団の社会行動を研究するデニス・サンドウ(Dennis Sandow)氏は、「心理学者や精神分析学者、社会学者といった人々は、遠隔通信技術に対して懐疑的でした」という。遅延が発生するために、遠隔コミュニケーション技術を使っても、実際に対面するほど自然なコミュニケーションは無理だろうということだ。

一般に人間が会話のタイムラグに違和感を感じるのは、300ミリ秒以上というが、Haloシステムでは遅延は200ミリ秒以下に抑えられている。「光の速度の限界というのもあるが、それは実は大きな問題ではない。遅延はディスプレーの信号処理や画像のエンコード処理といった部分でも発生する。一貫したシステムを1社で作り上げることによって、そうした遅延のトータルを、実用上、人間が遅延を感じないレベルにまで抑えることができた」(レイ・サィウタ(Ray Siuta) マーケティング・マネージャ)という。

試しに話を遮って途中で割り込むと、実際の会話に比べて若干のタイムラグがあるものの、ほぼリアルタイムで相手はこちらに発言を促してくるといった感じだ。とても約1万キロ離れているとは思えない。巨大なスクリーンに実物大で映しだされる相手の表情やしぐさも、あまりに自然で、対面の錯覚を覚えるレベルだ。

ディスプレー
表情やしぐさなども伝わる

消音ボタンも敢えて装備せず、“自然さ”を追求

標準的なシステムでは3つの画面それぞれに2人ずつが映る6対6のミーティングになる。向こう側の誰かが席を立って右から左へ移動すると、その人物はディスプレー間を移動する。その際、ディスプレーの切れ目は、単に柱の蔭のように感じられ、目の前の空間で相手が移動しているような錯覚を覚える。

ディスプレーの上に設置されたカメラで人物を捉えるため、原理的に視線を合わせることはできない。ディスプレー中の人物の目を直視すれば、それはカメラから目をそらすことになるからだ。しかし、不思議と違和感を感じない。「われわれは赤ん坊の時代には顔の一部分を凝視するが、成長するにつれ顔全体を見るようになる」(デニス・サンドウ氏)のが理由だという。

“自然なコミュニケーション”を実現するために、随所に細かな配慮が見られる。たとえば、照明。顔に蔭が出ないように天井に特殊な照明が取り付けられているが、かといって強い光を当てられていると感じないよう工夫されている。また、椅子には肘掛けがない。なるべくテーブルに手を置いてコミュニケーションにコミットさせるための配慮だ。テーブル周りにはケーブル類や機械類が目に入らない。これも会話に集中してもらうため、システムを徹底して隠蔽した結果だという。

消音ボタンもない。従来の電話会議システムには消音ボタンが装備されることが多く、Haloも当初は消音ボタンを備えていたが、途中から取り外したという。実際の会議同様、もし誰かと個別に会話をしたければ会議室を出なければならないが、そのほうが、より自然なコミュニケーションとなるからだ。

出張88回が44回にまで減った自社の事例

テーブルの中央にはVGAケーブルが埋め込まれており、接続したパソコンの画面を双方で共有することができる。また、天井には高精細のズームカメラが仕込まれており、テーブル中央に置いた物体を、鮮明な映像で相手に伝えることができる。ズーム操作は双方からマウス操作で可能で、たとえば開発中の試作品を見ながらミーティングが可能だ。プリンターやスキャナーといったイメージ処理技術で培ったカラーマッチング技術によって、高い色再現性を実現していることも、こうしたシステムを作る上で、HPの強みだという。

HPでは、すでにInkjetシリーズの製品開発で北米、欧州、中東、アジアをオンラインで結ぶ形でHaloを使用しており、それまで年間88回の出張が発生していたものが、Halo導入で出張回数は44回へと文字通り半減。1年で約1億円のコスト削減となったという。「出張コストの削減もメリットだが、それ以上に重要なのは時間コストの削減。コミュニケーションの密度を上げることで、製品開発のサイクルが加速され、タイム・トゥー・マーケットを短縮できる」(日本HP、取締役副社長 石積尚幸氏)と話す。

ズームカメラ
天井に取り付けられた高精細ズームカメラ。テーブル上のモノをアップで撮影する
被写体
たとえば、インクカートリッジを被写体に
被写体撮影画像
細かい凹凸や質感といったディテールもよく伝わる

Haloの企業導入実績としては、米AMD、米ペプシコ、米ドリームワークスなどがあり、日本でもキヤノンが開発部門に対して導入を決めた。ドリームワークスは、Halo導入によってアニメ生産を年1本から2本にペースアップできたという。

日本HPでは、Haloビジネス推進部を新設。グローバルにビジネスを展開する企業、アウトソースやオフショアを積極展開している企業、海外パートナーとのアライアンスを積極展開している企業などをターゲットに販売していく。また、秋には最大4ヵ所の拠点を結ぶマルチポイントのサービスの開始も予定しているという。

石積尚幸氏
取締役副社長 石積尚幸(いしづみなおゆき)氏

(編集部 西村賢)


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