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ムーンライダーズ、新曲『Pissin' till I die』と『Pissism』をインターネットで無料配信


1999年11月19日

ムーンライダーズとメディア・アーティスト協会は共同で、ムーンライダーズの新曲2曲をインターネットで無料配信する実験を11月25日午前中に開始する。

このインターネット音楽配信実験“Pissin' on-line”は、アーティスト主導で行なわれるもので、楽曲の権利はレコード会社ではなくアーティスト自身が保有する。

“Pissin' on-line”画面
“Pissin' on-line”画面



配信するのは、ムーンライダーズの新曲『Pissin' till I die』、『Pissism』の2曲。これらはネット配信用に制作された新曲で、同一音源のCDは発売しない。“Pissin' on-line”のホームページから無償でダウンロード可能。配信データ形式は、MP3(エンコーダー別にLAME版、F-IIS版、Xing版を用意)、Real Media、TwinVQ、Windows Media Audio、MP4 AAC、ATRAC3を揃えている。演奏時間は、『Pissin' till I die』が5分16秒、『Pissism』が4分21秒。データのダウンロード時間は圧縮形式とユーザー環境によって異なる。

試聴用のページもあり、楽曲のサビの部分を10秒間全データ形式で試聴可能。各データ形式に対応したプレーヤーを取得するための説明コーナーも用意されている。

そのほか、ムーンライダーズとのチャットイベントが行なわれる“Around the playground”、今回の実験に参加/協力しているメンバーの紹介と、楽曲に関する詳細を掲載する“pissists”、著作権などの権利に関して説明する“大切なこと、とても”、音楽配信実験についてのアンケートページ“Be a groundhog”といったコンテンツを提供する。

発表会場で、ムーンライダーズの鈴木慶一氏は、「11月25日に僕らの新曲2曲を無料で配信する。23年間バンドをやってるが、ムーンライダーズは常に新しい器材やテクノロジーに飛びついてきた。最近は楽器の技術進歩が停滞していて、何か面白いものはないかと思っていたところ、ネット配信のアイデアが浮かんだ。誰がどうやって曲を受け取るか大変興味がある。坂本龍一氏と相談して、メディア・アーティスト協会を紹介してもらい、協力いただくこととなった」

「いろいろな圧縮技術を揃えて、聴き比べができる環境を作った。これまで作った曲に関しては、レコード会社や出版社、著作権を管理しているところを通してお金が入っていたが、今回の2曲はすべてフリーで、ただ物を作った権利だけがある。お金が入ってくるわけではないので、自由な感じがする」

「この2曲は、CD化は行なわず、ネット配信のみの提供となる。ジャケットを作ろうという話もあって、壁紙のようなものを用意する予定だ。僕らが作った奇妙な贈り物と思っていただければいい」と語った。

ムーンライダーズの鈴木慶一氏「お金はもらおうとすればもらえたと思う。でも、いくらもらっていいかよくわからないから無料にしたんだ」
ムーンライダーズの鈴木慶一氏「お金はもらおうとすればもらえたと思う。でも、いくらもらっていいかよくわからないから無料にしたんだ」



また、各種配信データ形式について鈴木氏は、「音楽をやっている者の耳で聴くと差はかなりある。差ではなく特徴と言ってもいいだろう。例えば、帯域が広い、高音が出ているなど、各々違うということは確実に言える。それらを試聴して好きなものを選んでもらえたらいいと思う。サウンド自体もネット配信向けに作った。ムーンライダーズの音楽はいつもは濃密だが、今回の2曲はうっすらしているので聴き比べやすいと思う」

「この形式はこういう感じ、とは言えるが、優劣ではない。僕自身の好き嫌いはあるが、それはユーザーにもあるだろう。ただ今後、アコースティックギターの曲に向く形式、アップテンポな曲に向く形式というのは出てくるだろう」としている。

曲に関する権利はすべてムーンライダーズが所有しているため、個人で楽しむ以外、テープやMDに録音して知人に配布するなどの行為は禁止されている。「これらの曲を第三者にあげたり、カバーしたりするのは勘弁してほしい。1個人と僕らとのフェアな関係を作りたい」(鈴木氏)

実験期間は未定。「いつまでという考えは無駄な気がする。ずっとあればとも思うし、さらに別のアイデアが出たら更新するかもしれない。アイデアを思い付いたらすぐ実行できるところがインターネットの非常に魅力的なところ。ある日突然なくなる可能性もあるしね(笑)。ムーンライダーズは今後もネット配信を行なうし、CDももちろん出し続ける。PC持ってない人たちにも聞いてもらいたいからね」

「ただ、今回の2曲はCD化はしない。ネット配信曲とCDで提供する曲は違うもの。ネット配信曲は形のないものであり、作り手の持つ意識の違いがある。今回の曲は、詩にダークサイド的な部分もあるし、もう遅いかもしれないけどラップもやってる(笑)。このラップ部分は、特に各データ形式の違いが分かって、聴き比べに便利なんだ。インターネットのホームページというものは、変えたいと思ったらすぐ直せる。完成はないんじゃないかという考えもできる。そこが面白い。別の表現手段を獲得した気分だ」(鈴木氏)

また、発表会場に同席したメディア・アーティスト協会の竹中直純氏は、「今回の配信実験では、従来の企業のプロモーションなどではなく、アーティスト主導の音楽流通をやろうということで、圧縮技術や音質にフォーカスした。無料配信は、流通の間に権利処理が入らないので、アーティストとユーザーが直接つながる」

「これまでの音楽ネット配信は特定の圧縮技術を利用したものが多く、ユーザー側での聴き比べが難しかったが、今回はフラットに手に入るデータ形式のものをすべて聴き比べることが可能。企業主導の実験とは異なる個人レベルの協力で、どこまでできるか試してみたい。メディア・アーティスト協会では、このような配信を第2弾、第3弾と行なっていきたい」としている。

メディア・アーティスト協会の竹中直純氏(左)と岸博幸氏(右)
メディア・アーティスト協会の竹中直純氏(左)と岸博幸氏(右)



最後に鈴木氏は、「無欲の力を共有し、たくさんのみなさんにダウンロードしていただきたいと思う。それが望みのすべて。この実験は、場所を提供し、作品を作り、コーディネートもできたという見事な場。個人と僕らのお付き合いにしたいので、人からもらうのではなく、自分でダウンロードして自分で聴いてほしい。そういう意識はすごく大事だと思うから」と締めくくった。

(編集部 桑本美鈴)


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