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丸紅とコンピュータウェーブ、複数のECサイトを通じた電子書籍のダウンロード販売事業を開始

2002年07月16日 00時31分更新

文● 編集部 佐々木千之

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丸紅(株)と(株)コンピュータウェーブは15日、都内で出版関係者を集め、16のECサイトを通じた電子書籍のダウンロード販売事業説明会を開催した。事業は6月末から開始しているが、この説明会を機に本格的に展開するという。

コンピュータウェーブ代表取締役社長の辻本和孝氏
コンピュータウェーブ代表取締役社長の辻本和孝氏

コンピュータウェーブ代表取締役社長の辻本和孝氏によると、コンピュータウェーブは1989年6月に(株)ビーエヌエヌのソフトウェア流通事業を分離して設立した企業。1991年に丸紅の傘下に入り、現在は丸紅のIT事業部門の1つ。パソコンのソフトウェア販売がメインビジネスだが、1999年にECサイト向け電子カタログ“S-CAT/P(エスキャットピー)”を開発、2001年7月にはダウンロードによるソフトウェア販売“ESD(Electric Software Distribution)サービス”をECサイト向けに提供開始している。

コンピュータウェーブが展開しているESDサービスのビジネスモデル
コンピュータウェーブが展開しているESDサービスのビジネスモデル。電子書籍においても同じビジネスモデルとなる
野村総研によるネットワーク配信型コンテンツ市場の伸び予測
野村総研によるネットワーク配信型コンテンツ市場の伸び予測。グラフ上のピンクの部分がオンライン出版

コンピュータウェーブIT本部の小山琢氏によると、書籍、特にいわゆる実用書は書店の店頭に足を運んで購入するスタイルから、ECサイトで注文するスタイルに変化しており、さらに今後は家庭へのブロードバンド環境の浸透によって、ダウンロードによる“即時購入・即時利用”という方向に進むと考えられるという。(株)野村総合研究所の予測によると、オンライン出版の市場規模は2002年に30億円、その後2003年に70億円、2004年に120億円と増加し、2006年には8倍の240億円に達するという。小山氏は、現在電子書籍を販売している“電子書店パピレス”((株)パピレス)が売り上げを1年で5倍に伸ばしていることを挙げて、「この8倍という(野村総研の)数字はあながち不可能なものではない」としている。

電子書籍のダウンロード販売事業の概要
電子書籍のダウンロード販売事業の概要

コンピュータウェーブが展開する電子書籍のダウンロード販売事業の特徴は、他社が自社サイトで展開しているのに対して、ESDサービスでソフトウェアの販売を行なっている複数のECサイトを通じて販売する点。(株)ソフマップの“Sofmap.com”、ニフティ(株)の“@nifty”など16社のサイト経由で販売する。さらに9月までに10社のサイトを追加予定としている。コンピュータウェーブによると、このように複数のECサイトを通じて書籍のダウンロード販売事業を行なっている企業は世界でも例がないという。

ユーザーが購入する際の流れ
ユーザーが書籍を購入する際の流れ

ユーザーが書籍をダウンロードする場合には、サイバーソース(株)の“スマートサートテクノロジー”を利用する。ユーザーがECサイトを通じて書籍を購入すると、ユニークなURLが記されたメールが届く。ユーザーはそのURLから、購入した書籍をダウンロードするプログラム『スマートサート』(容量300KB程度)をダウンロードする仕組み。このスマートサートは、書籍を単にダウンロードするだけでなく、ユーザーがその書籍を購入した“証明書”を兼ねている。このスマートサートプログラムは、あるパソコンでダウンロードをした場合、ほかのパソコンに移してもダウンロードできないようになっているという。ただし、ダウンロード後の電子書籍自体のセキュリティー機能については、コンピュータウェーブとしてはタッチしない。

“スマートサート”プログラムの例。『現代用語の基礎知識2002』を購入していることが分かる
“スマートサート”プログラムの例。『現代用語の基礎知識2002』を購入していることが分かる。誰が購入したかも表示されている

サポートする電子書籍ファイル形式は、PDF、kacis(※1)、t-time(※2)、textなど幅広い。コンピュータウェーブは、電子書籍1タイトルあたり初期登録費用として2万円、2年目以降年額保管料2000円(1タイトルあたり)を徴収する。ユーザーがECサイトで購入する金額は、出版社が設定した価格+コンピュータウェーブが通信コストなどを加算した価格+ECサイトがマージンを加算した金額となり、販売価格数千円程度の書籍であれば、おおよそ半額が出版社の取り分になるとしている。

電子書籍化の準備ができていない出版社に対しては、電子化を請け負う事業者の紹介や、コンピュータウェーブが窓口となっての受託、電子化のためのコンサルティングなどを行なう予定で、2004年9月末(同社の決算年度末)に「1000タイトルを揃えたい」(小山氏)としている。

※1 kacis(カシス):(株)メディアヴィジョンと(株)カシスが共同開発した、電子書籍作成ソフト『Kacis Publisher』が使用するファイル形式。

※2 t-time(ティータイム):(株)ボイジャーの電子書籍ソフト『T-Time』が使用するファイル形式。

出版者向け説明会でのパネルディスカッション
出版者向け説明会ではイースト(株)常務取締役下川和男氏(左)、日本電子出版協会会長長谷川秀記氏(中央)、(株)インプレス代表取締役社長塚本慶一郎氏(右)が、電子書籍とはどういうものか、現状の問題点はといったことについてパネルディスカッション形式でレクチャーした

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