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トヨタ自動車、車からもケータイからも利用できる情報サービス“G-BOOK”を発表

2002年08月28日 23時51分更新

文● 編集部 佐々木千之

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トヨタ自動車(株)(以下トヨタ)は28日、都内で記者発表会を開催し、車載無線端末での利用を中心とした情報ネットワークサービス“G-BOOK(ジーブック)”を、10月1日にパソコンや携帯電話向けとして一部サービスを開始し、今秋に発売するG-BOOK対応の新型車に合わせて正式サービスを開始すると発表した。ただし、利用料金については未公表。

発表会で展示した車載用G-BOOK端末
発表会で展示した車載用G-BOOK端末。液晶画面下のボタンと、画面表示を直接指で触ることによって操作する。このシステムのOSは“Windows CE for automotive”だが、OSを限定しているわけではないとしている

G-BOOKはトヨタが1998年から展開している会員制情報サービス“GAZOO”(※1)を発展させた、移動体向けの情報サービス。車内から、車載用データ通信モジュール(DCM)と連動したカーナビゲーションシステムを使って利用するスタイルが基本だが、パソコン(ウェブブラウザー)、PDA(専用ソフト)、携帯電話(ウェブブラウザー)からも利用できる。ユーザーごとのカスタマイズ情報は“ユーザー カスタマイズド サーバー(UCS)”と呼ぶサーバー側で管理しており、車載端末、パソコンやPDA、携帯電話で、ほぼ同じユーザーインターフェースとなっている。携帯電話から、車の位置や走行距離などの情報を参照できるほか、将来は車の中からG-BOOKのシステムを使って家庭のエアコンやセキュリティーシステムなどの操作も可能になるとしている。

※1 GAZOO(ガズー):新車・中古車情報や点検・整備情報などカーライフに関する情報を中心として、本やCD、雑貨、衣類、電気製品などが購入できるショッピングモール、金融サービス情報、旅行予約、フォーラムやチャットなどのコミュニケーションスペースを提供している。利用は、インターネットに接続したパソコンのほか、コンビニやトヨタディーラー店舗に設置した“ガズー端末”から行なう仕組み。会員登録が必要だが、登録料や年会費は無料。現在の会員数は約372万人。

車載用のデータ通信モジュール(DCM)
車載用のデータ通信モジュール(DCM)。“QUALLCOM 3G CDMA”の文字が見える

車載用G-BOOK端末のデータ通信には、ケイディーディーアイ(株)の携帯電話サービス“au(エーユー)”のCDMA2000 1xパケット通信網を利用し、下り最大144kbps/上り最大64kbpsの通信が可能としている。

G-BOOKのコンセプト
G-BOOKのコンセプト

G-BOOKのサービスやコンテンツとしては、運転中のトラブル発生時に位置情報を情報センターで把握することで救援車両を手配するサービスや、店舗などのタウン情報を検索し、得られた情報をカーナビと連携させて、画面上に表示したり目的地設定できるサービス、メール送受信、メール読み上げ、カラオケ、オンライン決済可能なショッピングモールを用意する。G-BOOKのコンテンツ提供元としては、47社が提携予定先となっているが、トヨタでは幅広い業界・業種の参加を受け付けるとしている。“G-BOOK-ML”と呼ぶコンテンツ開発言語や標準のテンプレートを用意し、これを使うことにより、アクセスする機器の違いを意識することなくコンテンツ開発が容易に行なえるとしている。

G-BOOKのシステム構成図
G-BOOKのシステム構成図

一方、G-BOOKを利用したいユーザーは、“G-BOOK利用契約”を結ぶことで、車載端末による通信と約30の標準サービスが利用できる。利用料金はデータ通信料と標準サービス利用料を含んだ定額だが、サービス開始時に発表するとして、本日は明らかにしなかった。標準サービス以外の有償サービスは、ユーザーがサービス提供会社と契約する必要があるとしている。なお、車載端末ではデータ通信だけが可能であり、音声通話には携帯電話が必要となっている。また、車載端末を持たないユーザー向けに、パソコンやPDA、携帯電話でのみ利用可能な“G-BOOKライト”も用意する。

G-BOOK専用アプリケーション『Pocket G-BOOK』を使ってPocket PCでアクセスしたところ
G-BOOK専用アプリケーション『Pocket G-BOOK』を使ってPocket PCでアクセスしたところ
携帯電話を使ってアクセスしたところ
携帯電話を使ってアクセスしたところ。携帯電話キャリアーは問わない

トヨタは、今秋に発売予定の、車載用G-BOOK端末を搭載する新型車について発売日や車種を明らかにしていないが、2001年10月に開催された“東京モーターショー2001”では、G-BOOK端末搭載の『WiLL VC』を出品しており、WiLL VCがG-BOOK搭載車の第1弾となる可能性が高い。またこの新型車の以降は、2003年の中旬以降に発売するトヨタ車では、メーカー純正カーナビシステムの標準機能としてDCMを搭載するとしている。

G-BOOKのビジネスモデル
G-BOOKのビジネスモデル。この図に示された流れのほか、Eコマース関連コンテンツからは、商品の販売にあたって、決済代行料を徴収するという
コンビニに設置しているキオスク端末“E-TOWER”
コンビニに設置しているキオスク端末“E-TOWER”

発表会では、松下通信工業(株)製のG-BOOK対応カーナビとデンソー(株)製のDCMを組み込んだダッシュボードを使ったデモンストレーションを披露した。デモでは、比較的サイズの大きなコンテンツ配信用としてトヨタが“ファミリーマート”や“スリーエフ”などのコンビニに設置している“E-TOWER(イータワー)”と呼ぶキオスク端末で、SDカードを使って、音楽ファイルや地図などの情報をダウンロードし、車載用G-BOOKシステムのSDカードスロットに差して利用するといった例や、Pocket PCに専用アプリケーション『Pokcet G-BOOK』をインストールし、車載用システムと同様に利用できることなどを紹介した。

G-BOOKのサービス展開ロードマップ
G-BOOKのサービス展開ロードマップ

トヨタはコンテンツ同様、G-BOOK向けのハードウェアについても、特定の企業とのみ開発するのではなく、広く募集するとしている。例えば発表会で使ったシステムはSDカードスロットを搭載しているが、ソニー(株)もG-BOOKのメモリースティックへの配信や家電に関する連携に関してトヨタと提携しており、将来メモリースティック対応のG-BOOK機器が登場することも予想される。

常務取締役の豊田章男氏
常務取締役の豊田章男氏

常務取締役の豊田章男氏は、「G-BOOKは、走る、曲がる、止まるという車の基本性能に“繋がる”という新しい価値を加えるもの。車がより楽しく利便性の高い商品としての価値を高め、自動車市場の活性化とともに豊かな社会作りの一助となることに期待している。来るべきユビキタスネットワーク世界に向け、自動車の進化と、人と車と社会に新たなネットワーク作りに必要なものとして開発した」と挨拶した。また、「顧客のライフスタイルが多様化する中でトヨタ単独ではお客様のニーズに応えることはできない。オープンで幅広い協力関係を拡大していきたい」としてG-BOOKの展開では“オープン”を基本とすると強調した。

豊田氏はユーザー数目標に関して「現在のメーカー純正カーナビオプション装着率は50%であり、その3~4割に利用してもらえるのではないか」と述べた。また「G-BOOKは自動車事業の一環として考えている」と述べ、単独の情報サービス事業としての位置づけではないとした。料金についても「手頃な価格での設定。(新型車で)燃費が良くなった分ぐらいのイメージ」としており、G-BOOK事業単独で利益を上げるようなビジネスモデルではない模様だ。

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