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ウェブサービス相互運用の推進団体“WS-I”、今後の動向についての説明会を開催

2004年08月31日 23時12分更新

文● 編集部 美和正臣

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ウェブサービス相互運用の推進団体“Web Services Interoperability Organization”(以下、WS-I)は31日、同団体の現状と今後の動向についての記者発表会を“東京コンファレンスセンター・品川”で開催した。これは同所(株)IDGジャパンが開催している“Webサービス カンファレンス 2004”に合わせて行なわれたもの。

WS-Iは2002年に富士通(株)、米アクセンチュア社、米BEAシステムズ社、米ヒューレット・パッカード社、米IBM社、米インテル社、米マイクロソフト社、米オラクル社などの主要なベンダーが設立した業界団体。さまざまな企業や標準化団体がウェブサービスの独自の仕様を公開しており、お互いに互換性がないものが多いため、各仕様を統一してウェブサービスを互換性の高めようとしたのがWS-I設立の背景にある。

WS-Iの理事メンバーであるマーケティング/コミュニケーション委員会議長のアンディ・アストール(Andy Astor)氏WS-Iの理事メンバーで前リエゾン委員会議長のエドワード・コブ(Edward Cobb)氏

最初にWS-Iの概要について説明したWS-Iの理事メンバーであるマーケティング/コミュニケーション委員会議長アンディ・アストール(Andy Astor)氏によれば、WS-Iの協賛企業/団体は現在約130団体。内訳はハードやソフトのベンダーとエンドユーザーの比率が7:3となっており、このうち8割が北米の企業や団体とのこと。WS-Iは、“World Wide Web Consortium(W3C)”や“Organization for the Advancement of Structured Information Standards(OASIS)”、“Internet Engineering Task Force(IETF)”といった標準化団体から出された仕様と、業界団体やエンドユーザーからの要望を取りまとめ、折衝を行なう“橋渡し”のような役割を果たす。

WS-Iの活動報告では、業界コンソーシアムやエンドユーザーに提供するガイドラインや資料、プログラムソフトウェアについても言及した。現在WS-Iには“Web Services Basic Profile”や“Scenarios and Sample Applications”、“Testing Tools and Materials”と呼ばれる3つのワーキンググループが活動している。“Web Services Basic Profile”はウェブサービスの仕様を実装する際の細かな定義(プロファイル)作成を、“Scenarios and Sample Applications”はウェブサービスのサンプルアプリケーションの開発を、“Web Services Basic Profile”はプロファイルを検証するツールやホワイトペーパーなどの策定を行なっている。こうしたワーキンググループの活動により「“XML Schema”や“WSDL”、“UDDI”などのセキュリティーの分野のプロファイル策定が完了した。いずれはすべてのウェブ上のサービスのプロファイルを策定をしたい」と将来の希望を述べた。

WS-Iのメンバーは現在約130団体。日本のWS-I“Japan SIG”も高い評価を受けている業界コンソーシアムやエンドユーザーは、WS-Iを介して各標準化団体と意思疎通する。仕様の策定では、お互いのエゴがぶつかりあうため、このような組織が必要になってくるという
WS-Iの3つの柱。この中で最も重要なのは“プロファイル”と呼ばれる仕様を決める部分だ2年間の活動でWS-Iが策定した部分がオレンジ色で表示されている。アストール氏は「すべてのウェブサービスの仕様を決定したい」という

そのほかWS-Iが策定したプロファイルに関しては、「ウェブサービスの相互運用性を保証する“Basic Profile 1.1”やSOAPメッセージの構造を規定する“Simple SOAP Binding Profile 1.0”などの仕様が決定し、24日に公開できた。また、セキュリティーの分野も“Security Scenarios”や“Basic Security Profile 1.0(ドラフト)”などが年内に策定される予定で、ビジネス上のセキュリティー問題の解決の糸口になるだろう」と語った。

WS-Iの今後の活動としては2点ほど例を挙げた。まずプロファイルの改定だ。氏は「“SOAP 1.2”、“WSDL 2.0”、“UDDI 3.0”などのプロファイルを改定しなければならないだろう」と語った。また、新たなプロファイルの策定にも言及し、「ウェブサービスメッセージングの信頼性を向上させるプロトコル“リライアブルメッセージング”機能や、サーバーのデータを並列化して同期処理させる“オーケストレーション”機能などのプロファイルを設定しなければならないが、これはまだ不確定。マーケットからの要件を収集するグループからの報告を待ってから決定する」と語った。

会見では日本のWS-Iグループである“Japan Special Interest Group(Japan SIG)”にも言及し、「日本のグループはテストツールやサンプルアプリケーションの日本語化、公開されているプロファイルを日本語に翻訳するなど、WS-Iに非常に貢献している」とアピールした。

会見後、記者から「現状、組織が抱えている課題は何か」との質問がとんだ。それに対しWS-Iの理事メンバーで前リエゾン委員会議長のエドワード・コブ(Edward Cobb)氏は「標準化に時間がかかるのが問題だ。いろいろなベンダーが新たな革新的な技術を発表し、ユーザー側も策定の中にその仕様を入れてほしいと希望する。しかし、競合するベンダーが、お互いに自分の仕様を標準化しようとするため、調整に時間がかかる。調整には政治的な要因も含まれるため、最終的にはユーザーが望むものとは異なるものが登場する場合もある」と、標準化に際しての苦労も紹介した。

WS-Iは2年間の活動の間に、7つのプロファイルやプロトコルなどを策定した現在、いくつものプロファイルやプロトコルなどの策定が残っているが、これは市場のニーズに合わせて変更されるという日本のWS-I団体“Japan SIG”は、WS-Iで策定されたプロファイルや仕様書の翻訳のほかに、啓蒙活動などを行なっている

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