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より“アクセシブル”なウェブサイトを目指して――麻生外務大臣も登場した“アックゼロヨン・アワード2006”


2006年11月1日

“アクセシビリティー(accessibility)”という言葉をご存知だろうか。もともとは“近づきやすさ”や“利用しやすさ”といった意味の英単語で、ウェブサイトに関していう場合、そのサイトが誰にでも使えるか、そしていかに使いやすいかということを指す。

10月31日、東京国際フォーラムで、ウェブサイトのアクセシビリティーを評価するアワード“アックゼロヨン・アワード2006”(主催:アックゼロヨン実行委員会、社会福祉法人プロップ・ステーション)の表彰式が行なわれた。麻生太郎外務大臣も登場したこの表彰式で分かった、日本におけるウェブ・アクセシビリティーの現状と課題をお伝えする。

アックゼロヨン・アワード2006に登場した麻生外務大臣
アックゼロヨン・アワード2006に登場した麻生外務大臣

すべてのユーザーが簡単に使えるウェブサイト

誰にでも使いやすいウェブサイトといっても、それを実現するのはなかなか難しい。レイアウトに統一性がある、サイト全体が分かりやすく階層化されているといった配慮はもちろん、正しいコードでHTMLやCSSが記述されていることも重要である。見出しタグや画像の代替テキストがきちんと書かれていなければ画面読み上げソフトを使う視覚障害者がサイトを閲覧できないし、コーディングが不自然だとウェブページ上の要素がキーボードで指定できなくなり、手や腕の障害でマウスが使えない人に不都合が生じるからだ。

ウェブ・アクセシビリティーに対しては、WWW(World Wide Web)で使われる技術の標準化を進める団体“W3C”が2002年12月にガイドラインを制定したのに始まり、2004年6月には日本でもJIS規格が定められるなど、近年着実に注目度が高まっている。日本でもウェブ制作者たちの間でアクセシビリティーに対する意識が高まり、2004年、有志によるアックゼロヨン実行委員会が誕生。2005年にはウェブ・アクセシビリティーをアワードという形で評価しようという“アックゼロヨン・アクセシビリティアワード”を開催した。そして2006年、同アワードがアクセシビリティーだけでなく、クリエイティブ性も同時に評価するものとして新たなスタートを切ったのが、アックゼロヨン・アワード2006である。

これまでのウェブサイトでは、ビジュアルやデザインにこだわったサイトは操作性に欠けるものが多く、シンプルで使いやすいサイトはデザイン的に見劣りするという傾向があった。アックゼロヨン・アワード2006の目的のひとつは、そんな傾向を変え、両者の融合を図っていくことだといえるだろう。授賞式に先立って行なわれたパネルディスカッションでは、この話題に関する活発な意見交換がなされた。

パネルディカッションに登場したパネリストたち
パネルディカッションに登場したパネリストたち

パネルディスカッションに登場したのは、植木真氏((株)インフォアクシア代表取締役社長)、神森勉氏(アンカーテクノロジー(株)テクニカルディレクター)、住太陽氏(ボーディー(有)代表取締役)、中根雅文氏(“Network Accessibility Project(NAP)”代表)、NORI氏((有)トゴル・カンパニー代表取締役)、森田雄氏((株)ビジネス・アーキテクツ取締役)、吉橋昭夫氏(多摩美術大学美術学部デザイン学科助教授)の7人。このメンバーはアックゼロヨン・アワード2006の審査員でもある。司会はアックゼロヨン実行委員会の森川眞行氏が務めた。

パネリストたちはまず、アックゼロヨン・アワード2006において、それぞれどのような点を重視して審査したかを披露。アクセシビリティーの専門家である植木氏は「去年とくらべると、全体にわたって(アクセシビリティーの)レベルは確実に上がっている」と語った。画像のALT属性を付けたり、見出しレベルに応じて<H1>、<H2>のタグを使い分けているなど、実装レベルでアクセシビリティーを意識したマークアップを行なっているサイトが増えたという。

積極的に発言を行なった森田氏
積極的に発言を行なった森田氏

大規模サイトを中心に手がけていていて、その観点から審査を行なったという森田氏は、「HTMLやCSSがきちっと書かれているという意味でのアクセシビリティーをそなえているのはもはや当たり前で、これからはコンテンツそのものがアクセシブルであること(目的とする情報に迅速にたどり着けること)が重要になる」と語った。そのためコンテンツホルダーにはエディトリアル的な感覚や、編集能力といったものがより求められていくという。例えばコマースサイトであれば、迷わないインターフェースや画面遷移のほか、商品の魅力が伝わるテキストや写真なども重要になるだろう。

NORI氏はFlashの専門家としての発言が目立った
NORI氏はFlashの専門家としての発言が目立った

Flashのアクセシビリティーを専門にしているというNORI氏は「今回アワードに応募されたサイトにFlashを使用しているものが多くてうれしかった」と語る一方、「Flashのアクセシビリティーは2年前とほとんど変わっていない」ことを指摘。「Flash制作者の間でアクセシビリティーに関するノウハウが蓄積されていない、あるいはアクセシブルなFlashを制作しようという意識そのものがないかもしれない」という現状を語った。例えばFlashは作り方さえ正しければ読み上げソフトで読んだり、ボタンをキーボードで操作することも可能なのに、それが制作者たちの間であまり知られていないという。

中根氏が代表を務めるNAPは、情報・通信分野における障害者のアクセシビリティーの確立を目的とした団体だ
中根氏が代表を務めるNAPは、情報・通信分野における障害者のアクセシビリティーの確立を目的とした団体だ

多くのパネリストたちの話題にのぼったのが、HTMLページを特定のルールに基づいて生成・公開するコンテンツマネージメントシステム(CMS)の存在。膨大なコンテンツを効率よく管理するためには、もはや必須のシステムとなっている。CMSは現在急速に普及が進んでいて、アックゼロヨン・アワード2006で入賞した地方自治体のウェブサイトの多くがCMSを導入していることからもその勢いがうかがえるが、パネリストたちからはCMSを扱うウェブ制作者たちが見た目を良くしようとカスタマイズを重ね、その結果アクセシビリティーが損なわれているという問題点も指摘された。中根氏は「これからはアクセシビリティーを保ったままCMSをカスタマイズするための知識を、ウェブ制作者たちが共有しなければならない」と語り、CMSベンダーやウェブ制作者の努力を促した。目が見えないため読み上げソフトでウェブページを閲覧しているという中根氏の発言の数々には、その立場ならではの重みがあった。

「審査した中で印象に残ったウェブサイトは?」という質問では、パネリストたちから“みずほ証券”や“COLORs catalog|カラログ”の名前が挙がった。みずほ証券は文字を大きくすると、文字だけでなくページ全体が拡大されるなど、配慮が行き届いていることが高く評価された。COLORs catalogは、アクセシビリティーやクリエイティブ性もさることながら、好きな色から商品を選んでいくというサイトのコンセプトそのものがパネリストたちの心をつかんだようだ。

みずほ証券のトップページ
みずほ証券のトップページ
COLORs catalog|カラログのトップページ
COLORs catalog|カラログのトップページ
パネリストたちが上げた印象深いサイト

それぞれ意見の違いはあったものの、パネリストたちに共通していたのは、ウェブサイトは何らかの目的を果たすためのツールであり、アクセシビリティーもクリエイティブ性もそれを助けるために存在するという認識だった。以前は銀行のATMや電車の券売機などのインターフェースを手がけていたという吉橋氏は、「ウェブサイトは使うものであり、つまり道具である。道具は使いやすくなければいけない。ウェブサイトであればユーザーが買い物や情報収集といった目的を達成できるかどうかが大事になる。郵便局のATMの画面が美しかったり音楽が流れたりしても、お金が下ろせなかったら意味がないでしょう」とユーモアを交えて語った。また、審査をはじめた直後、エントリーしたサイトのトップページがどこも同じように良くできているように見えて、審査員を引き受けたことを後悔したという笑い話も披露。しかし3階層くらい進むと、前のページに戻れなくなったり今どこにいるのか分からなくなったりするサイトとそうでないサイトに分かれて、差が明確になったという。

森田氏は審査員総評のなかで、「アクセシビリティーという言葉にはクリエイティブ性が含まれていて、クリエイティブ性はアクセシビリティーがなければ実現しない。どちらも必ず両立することは可能だ」と語った。まさに至言だといえよう。

パネルディスカッションの後に行なわれた表彰式では、みずほ証券(株)がグランプリにあたる“内閣総理大臣賞”を受賞。式では麻生外務大臣、冬柴鐵三国土交通大臣、柳澤伯夫厚生労働大臣をはじめとするそうそうたる顔ぶれがプレゼンターを務め、会場の注目を集めていた。

左より柳澤厚生労働大臣、冬柴国土交通大臣、みずほ証券(株)の佐久間氏、麻生外務大臣
左から柳澤厚生労働大臣、冬柴国土交通大臣、みずほ証券の佐久間氏、麻生外務大臣

最後に、アックゼロヨン実行委員会事務局長の馬渕明弘氏より、来年度もアックゼロヨンアワードが開催予定であることが発表され、授賞式は幕を閉じた。

グランプリを含めた各部門賞と大臣賞の受賞者は以下のとおり。なお文部科学大臣賞は受賞作なし。

グランプリおよび各部門賞
グランプリ・内閣総理大臣賞 みずほ証券:みずほ証券(株)
最優秀コーポレートサイト みずほ証券:みずほ証券(株)
最優秀プロモーションサイト johnson'sブランドサイト:ジョンソン・エンド・ジョンソン(株)
最優秀コマースサイト 無印良品 ネットストア:(株)良品計画
最優秀公共サイト 兵庫県ホームページ:兵庫県庁
最優秀Flash賞 NTTデータ公式ホームページ:(株)NTTデータ
特別賞(チャレンジド賞) 横浜市立盲学校Webサイト:横浜市立盲学校
大臣賞
総務大臣賞 島根県ホームページ:島根県庁
経済産業大臣賞 COLORs catalog|カラログ:綱崎誠志
厚生労働大臣賞 富士通:富士通(株)
国土交通大臣賞 兵庫県ホームページ:兵庫県庁
環境大臣賞 ファミリーマートホームページ:(株)ファミリーマート
外務大臣賞 浜松市公式Webサイト:浜松市役所

(編集部 若林健太)


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