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アドビシステムズ、『Adobe Acrobat 4.0日本語版』を発表

1999年05月12日 00時00分更新

文● 千葉英寿

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アドビシステムズ(株)は本日、Adobe Acrobatの最新版日本語バージョンである『Adobe Acrobat 4.0日本語版』を発表した。すでに米国において発表済みのAdobeAcrobat 4.0の日本語対応版の登場となる。発売日は6月18日。価格はオープンプライスで、市場予想価格は3万円前後。

なお、Adobe Acrobat 3.0Jの正規登録ユーザーに対しては、同社よりアップグレードパッケージが9800円で提供される。アップグレードパッケージはディーラーや販売店でも購入できる。販売中のパブリッシングスィート『AdobePublishing Collection』に含まれるAcrobat 3.0JもAcrobat 4.0日本語版に切り替わる。また、PDFドキュメントを見るための『Adobe Acrobat Reader 4.0日本語版』は、本日より同社ウェブサイトからの無償ダウンロードが開始された。



Adobe Acrobat 4.0は「他に類を見ない」もの

発表会の席上、同社代表取締役社長のジェシー・ヤング氏は、Acrobat 4.0日本語版について「豊富なセキュリティ、注釈ツールを加えたもので、単なるデジタルドキュメントから、ドキュメント共有プラットフォームとなっている」と語り、「Acrobat Everywhereと表現するとおり、どこにでもPDFを配信できる、他に類を見ないもの」であるとした。

Acrobat 4.0日本語版の基本コンセプトについては「インターネット時代のドキュメント共有プラットフォーム」としている。ターゲット市場としては、出版、デザイン、広告、サービスプロバイダー、印刷といったプロフェッショナル・グラフィックス市場、およびコミュニケーション、金融、政府官庁といったビジネス市場としている。

情報公開法にはPDF!?

ヤング社長のプレゼンテーションを受けて、Acrobat 4.0日本語版の製品紹介は、同社ドキュメント・プリンティング製品グループプロダクトマーケティングマネージャの岡本明彦氏が行なった。岡本氏は詳細説明に先立ち、同社が電子の紙と位置づけるPDFを「情報公開法が施行されれば、電子の紙が必要になるのでは?」とPDFの積極的な利用を呼びかけた。

同社のAcrobat担当であるドキュメント・プリンティング製品グループプロダクトマーケティングマネージャの岡本明彦氏
同社のAcrobat担当であるドキュメント・プリンティング製品グループプロダクトマーケティングマネージャの岡本明彦氏



岡本氏は、Acrobat 4.0日本語版の主要な強化ポイントとして、Microsoft Officeとの連携の強化、PDFファイルのバインディング、WebページをPDFに変換するウェブキャプチャ機能(Windows版のみ)、12言語のサポートによるワールドワイドなPDF共有、自動メール添付機能(Windows版のみ)、オンライン文書校正、日本語フォントの埋め込みなどについて説明した。

さらに電子署名機能については、日本ベリサイン(株)のプラグインソフト『VeriSign Document Signer』およびエントラスト社の提供するEntrust/PKI環境について、それぞれデモが行なわれた。

VeriSign Document Signerは、Acrobat 4.0日本語版のプラグインソフトとして無償バンドル(Windows版のみ)されており、同社のウェブサイトにおいて暗号技術を元に証明書を発行するシステムとなっている。なお、個人ユーザーの利用については、ウェブサイトにアクセスすることで、自動的に取得できる。なお、企業利用については同社の『VeriSign ON SITE』システムも含めたコンサルテーションを受けることになる。

また、Entrust/PKI環境は、公開鍵を使った電子署名システムで、署名に変更、改竄が加えられると、Acrobat 4.0日本語版のナビゲーションパレット内の署名パレットに変更の履歴が表示され誰がいつ、どのような変更を加えたか一目でわかるようになっている。

最後に大日本印刷(株)、電通(株)、(株)JALプランニングといったユーザーが登場し、Acrobat 4.0日本語版への期待を表明した。(株)JALプランニングは、同社の国内線時刻表をPDF化して、紙媒体に先行して同社ウェブサイトに掲載し、インターネットユーザの便宜を図っているという。また、今後もPDFを活用して紙での制作の削減、省資源に役立てたいと語った。

Adobe Acrobat 4.0機能詳細

Adobe Acrobatは、デファクトスタンダードとなりつつあるドキュメント・フォーマットPDF(Portable Document Format)ファイルを生成する上で欠かせないソフトウェア。コンパクトなデータフォーマットであるPDFは、プラットフォームやアプリケーションに依存せずに電子的なドキュメントを配布することを可能とする。

今回のバージョンアップでは、Microsoft Officeとの親和性の向上をはじめ、ビジネスをサポートする機能が多く盛り込まれている。また、プロフェッショナル・グラフィックス分野については、日本語フォントのエンベッド(埋め込み)など、パブリッシング・ツールとしての機能も充実している。

サムネールパレットを使えば、文書のバインディングも簡単だ
サムネールパレットを使えば、文書のバインディングも簡単だ



Microsoft Officeとの親和性を強化し、オフィスでのスタンダードを目指す

Adobe Acrobat 4.0は、オフィスにおけるあらゆる文書をPDFに変換することを大きな目的に据えており、特にMicrosoft Officeで作成された文書をワンステップでPDFに変換することを可能としている。Windows版のみの機能となるが、Microsoft Office文書(Microsoft Word / Excel / PowerPoint)をAdobe Acrobatのアイコンやウィンドウにドラッグ&ドロップするだけでPDFに自動的に変換することができる。同様にAdobe Acrobatのファイルメニューの[開く]ダイヤログから、Office文書を選択してPDFを生成することも可能となった。特にMicrosoft Wordについては、WordのスタイルをPDFに継承し、見出しや索引をPDFの“しおり”に変換することができる。

サムネールパレット上でサムネールをドラッグ&ドロップすることで、ページの並び替えや削除を行なうことが可能。さらに複数のPDFを同様のドラッグ&ドロップ操作で、1つのファイルとしてバインディングすることもできる。この機能を使えば、Wordの文書にExcelファイルを取り込んでひとつの文書にしなくとも、両方のファイルをPDFに変換して、ページを構成しなおすこともできるわけだ。

オンライン文書校正も自在

Adobe Acrobat 4.0を使うことで、いくつかの機能を利用することにより、効率的なオンライン文書校正を行うことができる。自動電子メール添付機能は、PDFファイルを開いたまま電子メールに添付して送付することができるというもの。受け取った側では、付箋やスタンプ、マーカーといった12種類の注釈ツールを使って、コメントや修正指示を付け加えたり、Touch Up機能によりテキスト属性を訂正することができる。これを電子メールに添付して送受信することでオンラインでの校正作業が成り立つ。

さらに、訂正の前後を自動比較する機能(Windows版のみ)により、訂正の間違いを防ぐこともできる。また、ベリサイン社の電子署名機能(Windows版のみ)が導入されており、セキュリティーに関しても対策がとられている。電子署名機能を活用すれば、オフィスでの稟議書ワークフローにPDFを活用することもできる。

多言語対応については、12種類の言語(英語、フランス語、ドイツ語、日本語、中国語(簡体字/繁体字)、韓国語、スウェーデン語、スペイン語、オランダ語、イタリア語、南米スペイン語、ブラジルのポルトガル語)を共通でサポートしているので、ワールドワイドなドキュメント交換が可能だ。

2バイトフォントの埋め込みがようやく実現、ワークフロー支援機能も充実

Adobe Acrobat開発の主因ともなったプロフェッショナル・グラフィックス分野については、日本語フォントをはじめ、ハングル、中国語といった2バイト文字の埋め込みがようやく実現した。日本語フォントは、埋め込み許可されたCIDフォントか、もしくはWindowsのTrue TypeフォントをサブセットとしてPDFファイルに埋め込むことが可能。これにより、出力機側に適切なフォントが搭載されていなくとも埋め込まれたフォントを使って出力が可能となる。

日本語フォントの埋め込みは、Acrobat Distillerでのみのサポートとなる。これまでのAcrobat Distillerは設定の煩雑さが課題であったが、本バージョンでは難しい設定は不要だ。Acrobat Distillerのダイアログから、Web配信用、プリンター出力用、ハイエンド印刷用の3種類から選択するだけでOKだ。

Distillerの操作も大変簡単になった
Distillerの操作も大変簡単になった



EPS、PostScriptの書き出しは書かせない機能だ
EPS、PostScriptの書き出しは書かせない機能だ



プロフェッショナル・グラフィックスにおいては、電子ストリップ修正が重要だ。オンライン校正同様、注釈ツールを使って、オブジェクトの移動、コピー、削除、レタッチ、テキストの訂正といった修正作業を行なうことができる。さらにデジタル送稿を行う上で欠かせないEPSフォーマットへの書き出しも簡単となった。また、PostScript 3をサポートしているので、Adobe Illustrator 8.0のグラデーションメッシュをそのまま継承できる。

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