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セルシス、マンガ制作ソフトの入門版『ComicStudioDebut』を発売

2002年06月28日 20時43分更新

文● 編集部 桑本美鈴

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(株)セルシスは28日、マンガ制作ソフト『ComicStudio』シリーズの新ラインナップとして『ComicStudioDebut(コミックスタジオデビュー)』を8月2日に発売すると発表した。

通常モデルパッケージ
『ComicStudioDebut』通常モデルのパッケージ。パッケージイラストはいしかわじゅん氏が担当。このイラストについていしかわ氏は「タブレットで絵を描くことってハードルが高いと思っている人が多いけど、描いてみるとなんてことないよ。絵を描かない人は違和感があるんじゃないかって言うんだけど、全然平気。そのイージーな感じを出してみました」とコメント

『ComicStudioDebut』は、ComicStudioシリーズの入門版となるマンガ制作ソフト。従来のComicStudioの基本機能を備えており、ネーム作成からコマ割り、下描き、ペン入れ、仕上げ、セリフ入力、印刷まで行なえる。従来のComicStudioが主にプロ作家やハイアマチュアを対象としているのに対し、『ComicStudioDebut』は、マンガ制作に興味を持つパソコンユーザーや、パソコンでマンガを作ったことのないアマチュアマンガ家などを対象としている。初心者向けに各種機能の操作を簡略化/自動化しており、詳細な設定はできないが、直感的に扱えるようになっているという。また、用紙設定を簡略化するため、30種類以上の原稿テンプレートをあらかじめ収録している。

用紙選択画面
ComicStudioDebutの用紙選択画面。原稿テンプレートから選択可能

従来のComicStudioと機能を比較すると、ペンタブレットで入力した線のタッチをそのまま画面上で再現できるペン機能では、線のぶれを滑らかに整える補正設定や、ペンの入り/抜き設定が可能だが、描いた線を曲げたり線の太さを変えたりはできない。また、定規機能では、直線/曲線定規のみを搭載している。テキスト(セリフ入力)機能は、基本的なテキスト入力は可能だが、ルビ振りや手書き文字認識に対応していない。編集機能では、ツールパレットのカスタマイズが不可、また拡張機能であるマテリアルパレットやフィルター機能は搭載されていない。対応レイヤー数は12で、レイヤーのグループ化は不可、さらに下書きレイヤーのカラー表示機能が除かれている。

ペン入れ画面
ComicStudioDebutのペン入れ画面

作画したデータの書き出し対応フォーマットはBMP/JPEG/PSD。PSD形式で書き出す場合レイヤー情報もそのまま保存できるため、レイヤー構造を保持したままAdobe Photoshopで編集できる。読み込み対応フォーマットは、線画取り込みがBMP/JPEG、背景取り込みがJPEG。なお、データの読み込みは、初心者でも容易に操作できるよう自動調整で行ない、従来のComicStudioのように、ユーザーが読み込み時に画像の位置や角度を調整するといった詳細設定や、ゴミ取り機能などは用意されていない。印刷機能では、見開き印刷が不可となっている。

『ComicStudioDebut』は、店頭販売用の通常モデルのほか、主に同人誌即売会等のイベントでの販売を想定した『ComicStudioDebut サークルモデル』、(株)ワコムのペンタブレットを同梱した『ComicStudioDebut WACOMタブレットセットモデル』の3種類が用意される。いずれも対応OSはWindows 98SE/Me/2000/XPで、グラフィックスツール『Pixia』や、トーン素材集『PowerTone』のデータ(100種類)が付属する。

通常モデルは、いしかわじゅん氏のイラストをパッケージに起用し、いしかわ氏がマンガへのこだわりやデジタル導入の心得を語った冊子『デジ漫のスゝメ』や、いしかわ氏へのインタビュー映像が付属する。価格は1万1500円。

サークルモデルは、的井けるな氏のイラストをパッケージに起用、デジタルマンガ制作のポイントを解説した冊子『デジタルで本を作ろう』が付属する。価格は1万1500円。

WACOMタブレットセットモデルは、通常モデルにワコムのペンタブレット『FAVO』を同梱したセット製品で、1000本の限定販売となる。価格は1万9800円。

サークルモデルパッケージ
『ComicStudioDebut サークルモデル』のパッケージ。こちらのパッケージイラストは的井けるな氏が担当

発表会には、通常モデルのパッケージイラストを担当したいしかわじゅん氏が登場、マンガのデジタル化およびComicStudioについて語った。いしかわ氏とセルシスとは、いしかわ氏が週刊アスキーの連載『だってサルなんだもん』でComicStudioを取り上げて以来の付き合いとのこと。

いしかわじゅん氏と川上社長
いしかわじゅん氏(右)と、セルシスの川上陽介代表取締役。マンガのデジタル化についていしかわ氏は、「デジタル手法が現われたことで、これまでと違うこともできるようになる。これまで閉塞的だったマンガの世界に広がりが出てきた。マンガのデジタル化はスタートしたばかりで、この先どうなるか分からないけど、可能性は大きいと思う」とコメント。なお、これからのComicStudioに期待することとしては、「ペンの感覚。あのガリガリ書いてる感触がもっとリアルに再現されていくといいな」とのこと

いしかわ氏は、ComicStudioを初めて使ったときのことについて、「最初、『こんなソフトが出たんで使ってみませんか』って言われて、やだったの(笑)。ソフト使うのってめんどくさいじゃない。でもその時ネタがなくて仕方なく。それまでもマンガを描けるソフトはあったけど、もうひとつ使い勝手が悪くて、紙で描くように描けなかった。だからComicStudioも期待しないで使い始めたら、予想を裏切って面白くて(笑)。これは一所懸命やろうと思って、3週間使い続けてひと通りの機能をマスターして、結局、こうやったら描けたというセルシスの宣伝のようなレポートになっちゃった(笑)」と説明。

その良さについて「何が面白いって、紙に描いてるように描けること。今までのソフトには絵を自分の手で描くという楽しさがなかった。それまではグラフィックスソフトで描くイラストってみんな同じようなテイストだったの。例えば3Dソフトだとツルピカのつまんない絵ばっかりでさ。それってソフトの機能を使ってるだけで、“表現”とは違うんだよ。でもComicStudioは“表現”ができるソフトだと思った」

「例えば、線の入り抜きってマンガの命であって、どう入ってどう抜くかに命かけてるんだけど、これまでのソフトでは再現できなかった。ComicStudioはかなりのところまで調整できて自分の思う線が描ける。あと、集中線て、作家ごとに結構クセがあるんだよ。それがかなり再現できて、紙とペンで描いてるように描ける。それからトーン。トーンて大変なんだよ。アシスタントに頼むとしても、細かい部分だと指定するのもめんどくさくて。それが再現できるし、モアレも出ない」と語った。

最後にいしかわ氏は、ユーザーに向けて「ComicStudioはソフト、つまり道具なんだよね。お絵描きソフトユーザーは、ソフトに使われてる人が多いと思う。ソフトのレベルが上がると、誰にでもそこそこのものが作れるようになるけど、それは“表現”じゃない。例えば、ComicStudioには取り込んだ写真を線画にして背景として使える機能があるんだけど、それをそのまま使っているだけじゃ他人と同じものにしかならない。モノを表現するというのは書き手の主観が入るということ。ひとりひとりのゆがみが個性であり、それを見る側に提供することが表現。ソフトをどう使うかに本人の個性が出る。ただ単にソフトに頼るのではなく、自分の道具として使ってほしい」とメッセージを送った。

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