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マイクロソフト、HPC向けWindows『Windows Compute Cluster Server 2003』の技術/戦略説明会を開催――標準技術とWindowsのメリットをHPCに活用

2006年01月19日 23時25分更新

文● 編集部 内田泰仁

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マイクロソフト(株)は19日、都内同社本社オフィスにおいて開発中のHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)向けWindows『Windows Compute Cluster Server 2003』の製品戦略や技術概要に関する記者説明会を開催した。同社が日本国内でマスコミ向けに同製品に関する説明会を開催するのは今回が初めて。

『Windows Compute Cluster Server 2003』の特徴『Windows Compute Cluster Server 2003』の製品構成。Windows Server 2003+機能パックからなる

米マイクロソフト社の会長兼チーフソフトウェアアーキテクトのビル・ゲイツ(Bill Gates)氏、日本法人代表執行役社長兼米マイクロソフト コーポレートバイスプレジデントのダレン・ヒューストン(Darren Huston)氏はこれまでの講演などの中で、マイクロソフトがこれから取り組む“新分野”としてHPCを挙げている。現在開発中の『Windows Compute Cluster Server 2003』(2005年11月15日にβ2が配布開始)は、このHPC分野に向けたプラットフォームとなる。基本的な特徴としては、Windows Server 2003をベースに開発が進められ、Windowsならではの使いやすさとコストパフォーマンス、Active Directoryを利用したセキュリティー性や既存管理ツールの継承、クラスターコンピューティングにおける業界標準機能(MPI2、RDMA over GbE、InfiniBandなど)のサポートなどがある。

サーバープラットフォームビジネス本部 Windows Server製品グループ マネージャーの中川哲氏

市場や戦略などについて説明したサーバープラットフォームビジネス本部 Windows Server製品グループ マネージャーの中川哲氏によると、大規模/高速な演算が求められる科学研究などの分野では、計算/シミュレーションのベースとなる情報を収集するためのセンサー技術の発達(高精度化や適用範囲の多様化)や、シミュレーション用モデリングデータの微細化(現在は10~100GB程度の情報量。近い将来には10~100TBに)が進み、活用分野が従来よりも広がると同時に、情報の増大によるコンピューターの処理能力に対する要求がますます高くなっているという。一方、ハードウェアの進化/低価格化により、HPC環境は従来の高度な研究目的に限定された利用から、産業分野などの分野での使用も広がり、汎用化と容易な多用途活用の可能性が見込まれ、さらに使用されるハードウェアも、かつての独自/特殊技術を利用したものから、x86系プロセッサーや標準技術を用いた環境の利用が拡大しているという。

中川氏は、現在の4000ドル(約45万円)のデスクトップパソコンは、1991年当時最高峰の10GFLOPSクラスのシステムに匹敵する演算能力を持ち、演算能力の低価格化により、ミドルレンジ~ローエンドのクラスター市場が今後盛況になると分析

そこで同社では、従来から同社が得意とするx86環境や標準技術を使ったHPC向けプラットフォームの展開に新たに取り組み、「インターネットを利用するためのOSがUNIXを中心としていた時代に、使いやすいOSとしてWindowsを投入し、市場で高い評価を集めた」(中川氏)という過去のケースになぞらえ、「この流れと同じように一部の研究者らのみが利用可能だったクラスター技術を、Windows上でより多くのユーザーが利用できるようにする」と述べた。同製品のターゲットは、64ノード以下規模のクラスターサーバーや高性能ワークステーションなどを中心としたミドルレンジ~ローエンドの市場で、対象とする産業は、自動車/航空宇宙/生命科学/地球科学/金融サービスなど。研究用途のほか、産業活用での展開にも期待しているという。

なお、『Windows Compute Cluster Server 2003』の基本構造は、基盤となるOS部分がWindows Server 2003 x64 Editions SP1をベースとした『Microsoft Windows Server 2003,Compute Cluster Edition』で、この上に専用のクラスター機能パック“Comupte Claster Pack”を導入する。サポートするCPUは、AMD64やIntel Extended Memory 64 Technology(Intel EM64T)に対応したx86系64bit CPU(いわゆるx64)で、32bit CPUやIPF(Itanium Processor Family)には対応しない。なお対応CPUに関して中川氏は、同社のサーバー製品では“x86はスケールアウト、IPFはスケールアップ”という基本方針を採っていることから、典型的なスケールアウト技術であるクラスター技術はx86系を用い、さらに今後10年の市場の推移予想からx64 CPUをサポートすることとしたと説明している。



サーバープラットフォームビジネス本部 エンタープライズ&プラットフォームマーケティンググループの田中源太郎氏『Windows Compute Cluster Server 2003』のシステムと動作の構造。操作や処理には認証用にActive Directoryが必要
『Windows Compute Cluster Server 2003』の管理コンソール“Compute Cluster Administrator”の画面

続いて登壇したサーバープラットフォームビジネス本部 エンタープライズ&プラットフォームマーケティンググループの田中源太郎氏は、『Windows Compute Cluster Server 2003』の技術概要を説明し、『Windows Compute Cluster Server 2003』の動作の基本構成や、管理コンソール“Compute Cluster Administrator”の機能紹介(ノード追加/管理、同コンソール内でのノードへのリモートデスクトップアクセス)、セキュアーな通信環境の構成(クライアント操作から計算ノードまで、同製品内でのあらゆる通信はActive Directoryの認証機能を用いる)を紹介。またこの中で田中氏は、HPC分野では特に重要視されるアプリケーションの開発については、同社の統合開発環境『Microsoft Visual Studio 2005』をアピールしている。

なお、この日の説明会は、『Windows Compute Cluster Server 2003』の“発表会”と位置付けられたものではなかったため、発売時期やライセンス体系、価格などに関する情報は提示されなかったが、同社では今後、日本国内独自のパートナーシップ開拓、研究機関などと連携した開発/導入の展開などを進め、随時情報を提供していくとしている。



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