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あのTurboシリーズがボーランドから再び登場――初心者向けに無償の開発環境も提供


2006年9月6日

若者の“コード離れ”

どんな業界でも、若いうちは現場で仕事の経験を積むもの。工場に行ったり、販売や工事の現場に足を運ぶ。ところが最近なぜかソフトウェア業界だけはクールな話をしていて、若い人たちがコードを書いていない――。

ソフトウェア開発ツールを提供するボーランド(株)の藤井等 マーケティングディレクターは、記者会見で、こんな危惧を口にした。「ソフトウェア業界では上流工程重視の傾向が強く、現場でコードを書こうとか、勉強しようという意識が薄れているのではないか。でも、UMLを描いても、ただの絵だから動かない。コードに立ち返っていかないといけない」。UMLとは、プログラムやシステムの設計を抽象化された図で示す標準的な方式。UMLよりも、まず実際のコードを書くことが重要だという指摘だ。

藤井等氏
藤井等(ふじいひとし)氏

こうした若者の“コード離れ”の原因はさまざまにあるだろうが、手軽にプログラミングを学べる環境が失われてしまっていることも大きな要因だろう。プログラミングを学習してみたいという学生が、本格的で高価なツールを入手し、UIやOS固有のライブラリーの学習から始めなければならないとしたら、敬遠するのも無理はない。ちょっと試してみるには大げさで、専門的すぎるのだ。プログラミングとはプログラマーだけが行なう“仕事”となってしまい、プログラミングの学習や楽しみ、あるいは自分の日々のルーチンワークを自動化するといった目的で非プログラマーが扱えるレベルを超えてしまっている。

こうしたコード離れに対するボーランドの答えの1つが、“Turbo”シリーズの復活だ。ボーランドは6日、Windows向けの開発ツール“Turbo”シリーズ4製品を19日から出荷開始すると発表した。

Turboシリーズは、1980年代から1990年代にかけて、C言語やPascal、アセンブラといったプログラミング言語の開発環境として幅広い支持を得たボーランドのブランドだ。現在、第一線で活躍するプログラマーの多くは、その名前を懐かしく思うだろう。

今回発表された新Turboシリーズは、往年のTurboシリーズとは直接の関係はなく、最新の開発環境となっているが、Turboシリーズが体現していた“利用の手軽さ”や“プログラミングを楽しむ”といったコンセプトは受け継がれている。

フルのアプリケーション開発環境を無償で提供

発表されたのは4製品。『Turbo Delphi(ターボ・デルファイ)』、『Turbo Delphi for .NET(ターボ・デルファイ・フォー・ドットネット)』、『Turbo C++(ターボ・シープラスプラス)』、『Turbo C#(ターボ・シーシャープ)』で、それぞれProfessional版(4万1895円)とExplorer版(無償)、アカデミック版(8400円)がある。機能限定版のExplorer版は、6日より同社のポータルサイト、“Turbo Explorer”からダウンロードできる。

パッケージ
画面

Turboシリーズは、同社の上位製品の開発ツール“Borland Developer Studio 2006”シリーズと同等のコンパイラーやデバッガーを備え、開発に必要な環境はひと通りそろう。Borland Developer Studio同様に、デスクトップ/ウェブ/ウェブサービス/データベースアプリケーションの開発ができる。TurboシリーズとBorland Developer Studioの主要な違いは、Turboシリーズでは開発ターゲットとなる言語は1つだけしか選べず、C++とC#など複数言語の開発ができないこと。また、無償のExplorer版ではカスタムコンポーネントを利用した開発環境の拡張ができないなどの制限がある。ただし、Explorer版でも商用利用や商用ソフトの開発は可能だ。

機能比較
異なるエディションごとの機能比較
アップグレードパス
製品アップグレードパスを用意。プロジェクトファイルは共通で移行も容易だ

プログラミングを再び楽しいものに!

Turboシリーズのターゲットユーザーは、プログラミングを学習したい学生や個人ユーザー、趣味のプログラマーといった入門者をはじめ、プログラミング専任でない技術者などだ。本格的な開発ツールの購入を躊躇する層を狙った製品だ。利用目的は学習、業務の自動化などを想定しているという。

製品発表の会見に臨んだ米ボーランドのデビッド・インターシモーネ副社長は、コードを書き始めたばかりのプロや、プロでない技術者、あるいは学生などの新世代に対して、どうすればいいプログラムが書けるのかといいうことを教育してきたのがTurbo製品だと説明。今回も、安価な開発環境を提供するだけでなく、オンラインや書籍での情報提供にも注力。「プログラミングは楽しいものである」という意識を取り戻すことにも力点を置いていると話す。

デビッド・インターシモーネ氏
デビッド・インターシモーネ(David Intersimone)氏

米ボーランドは7月、開発ツールを提供するデベロッパーツールズ事業を本社から切り離すことを発表している。オープンソースの開発環境登場などでソフトウェア開発ツール事業自体の見直しを迫られ、ボーランドはIT管理とガバナンス機能を提供する製品や要件定義支援ツールを相次いで発売している。今回のTurboシリーズの発表は、切り離された事業部隊から出てきた最初の製品ということになる。開発ツールのメインストリームに近いところにオープンソースの開発環境が登場したことで、より上流工程向け製品に向かった本社と、プログラミングの入り口の方向に間口を広げたデベロッパーツールズ事業部という構図だ。

いっぽうライトなプログラミングの世界では、Ruby on RailsやPHPといった、ウェブやデータベースとの相性がいいスクリプト言語が、ますます流行している。スクリプト言語と通常のプログラミング言語は異なるが、手軽な“プログラミングの楽しさ”を求めるユーザーはスクリプト言語を好むだろう。将来本格的開発ツールへのアップグレードを前提したユーザーであれば、上位製品と同等の、最新の開発モデルに触れられるというメリットは大きいが、果たしてTurboシリーズが往時ほどの訴求力をもてるか。教育や啓蒙のための良質で豊富な情報提供が鍵ではないだろうか。

(編集部 西村賢)


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