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ソニー、メモリースティックをオープンプラットフォームに

2000年10月25日 21時09分更新

文● 編集部 桑本美鈴

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ソニー(株)は25日、メモリースティックに関するビジネス概況を紹介する説明会を開催、さまざまな業種の企業にメモリースティックを活用してもらうための“メモリースティックオープンプラットフォームプログラム”を開始すると発表した。

説明会で参考出展されたメモリースティックDuo搭載機器のコンセプトモデル。写真左は小型のデジタルカメラで、本体にやわらかい素材を採用し、折りたためるようになっている。右は小型ウォークマン

2001年4月までに128MB容量のメモリースティックを出荷

メモリースティックは、'99年度の出荷数が300万枚であったのに対し、2000年度は1000万枚、2003年度は6000万枚の出荷数が見込まれるという。IC記録メディア市場のシェアも全体の23%を占めており、2000年9月単月の集計ではコンパクトフラッシュを追い越したという。

メモリースティック対応機器もPCやデジタルカメラなどのほか、PDAやポータブルオーディオ、携帯電話などカテゴリーが増え、10月現在で10カテゴリー60モデルがリリースされている。対応機器のワールドワイドでの出荷数は2000年度で450万台(国内220万台)、2003年度にはワールドワイドでの出荷数累計は1億台(国内3000万台)を超える見込み。メモリースティックの活用に賛同する企業は現在国内外で104社となっている。

同社は今後、ポータブルオーディオ機器への対応やコンテンツの大容量化に向け、メモリースティックの容量を拡大、2001年4月までに128MB容量タイプを商品化する。さらに、2001年半ばには256MB、2002年には512MB、2003年には1GBにまで拡張していく。また2002年には、転送スピードを現在の8倍となる毎秒20MBに高速化した製品を市場に導入するという。

幅20×長さ31×厚さ1.6mm/重量2gの超小型メディア“メモリースティックDuo”は2001年中旬に発売、Duo対応製品も2001年中に商品化する。まず、8MB/16MB容量のメモリースティックDuoと、32MB/64MB容量のマジックゲートメモリースティックDuoを2001年に出荷し、2002年に128MB、2003年に256MBまで容量を拡大するという。

また、メモリースティックの拡張モジュールは、指紋照合モジュール、GPSモジュールなどを2001年末までに商品化し、携帯情報端末『CLIE』をプラットフォームとしたモデルを中心に製品展開していくという。

同社が提唱するメモリースティックのネットワークライフスタイル。音楽や書籍、スポーツ、映画、ゲーム、金融サービスといったコンテンツ/サービスを、メモリースティックを通してPCやPDA、ボイスレコーダー、ポータブルオーディオ、ホームオーディオ、デジタル映像機器、カーAV、自動車、次世代テレビ、携帯電話、キオスク端末に展開、メモリースティック1枚ですべてを“つなげる”という

メモリースティックのオープンプラットフォームプログラムを開始

同社は、メモリースティックをメモリーカードからネットワークプラットフォームメディアへと発展させるため、コンテンツ企業やネットワークプロバイダーなど、ハードウェア企業以外からのメモリースティック関連ビジネスへの参画を可能にする“メモリースティックオープンプラットフォームプログラム”を開始する。

プログラムの第1弾として、“配信技術のライセンスの開始”、“アプリケーションコミッティの設立”、“ウェブサイトによるメモリースティック情報の公開”、“各社のビジネスをプロモーションできる場の設定”を行なう。

提供するライセンスは、“メモリースティック対応機器向けライセンス”、“マジックゲート・メモリースティック対応機器向けライセンス”、“OpenMGライセンス”。メモリースティック対応機器向けライセンスは、メモリースティック対応機器やメモリースティック対応IC、I/O拡張モジュールの開発に必要な情報を公開するもの。年会費は50万円(フォーマット維持費)。

マジックゲートメモリースティック対応機器向けライセンスは、上記のメモリースティック対応機器向けライセンスの項目に加え、マジックゲートメモリースティック対応機器の開発に必要な情報の提供と、ATRAC3の使用権が含まれる。年会費は80万円で、使用権が1台当たり80円。

OpenMGライセンスは、マジックゲートメモリースティック対応機器を音楽配信などの各種ネットワークサービスに接続するための著作権保護技術“OpenMG”のライセンス。

OpenMGは、PC上でデジタル音楽データを記録/再生する場合に利用するSDMI準拠の著作権保護技術。各種音楽配信サービスとの間での音楽データ/権利情報の授受や、マジックゲートメモリースティック対応のポータブルプレーヤーとPCとの接続、サービスごとに異なるさまざまな圧縮方式のATRAC3への変換が可能。

OpenMGライセンスは、ポータブルデバイス用ライセンス、DRM用ライセンス、OpenMGに対応した音楽再生ソフト『Jukebox』用ライセンスが用意されており、それぞれに必要な情報を公開する。ライセンス条件は、ネットワークサービスに必要な仕様により異なる。例えば、ポータブルデバイスメーカーがライセンスプログラムを利用する場合、ポータブルデバイスをPCに接続するためのライセンスと、ソニーのJukeboxを使用するためのライセンスを組み合わせたり、独自でJukeboxを開発する際はプロトコルを公開したりといったさまざまな条件に対応できる。

同社はオープンプラットフォームプログラムの事例として、同社と米リアルネットワークス社が23日付で発表した音楽配信技術の提携概要について説明した。リアルネットワークスは、OpenMGライセンスを受け、『RealJukebox』にOpenMGを採用、RealJukeboxでマジックゲート対応のメモリースティックプレーヤーをサポートする。この場合、リアルネットワーク社が独自でJukeboxを開発するため、プロトコルの公開がライセンス条件となっている。

アプリケーションコミッティは、メモリースティック上のさまざまなアプリケーションの仕様を検討決定する場で、賛同企業各社と協議しながら11月中旬に詳細を決定し、発表するという。

開発者向けウェブサイトは、メモリースティックの概要や搭載機器の開発に関する必要技術情報を掲載し、機器やサービスの開発サポートを行なうサイトで、10月25日にオープンした。

メモリースティックをオープンにしより使いやすいものに

説明会場で、同社執行役員常務でメモリースティック事業センター長の中川裕氏は、「“SD対メモリースティック”と取り上げられることが多いが、メモリースティックはSDの開発がスタートした1年半前から事業を展開しており、現在メモリースティック対応機器は市場にたくさんある。IC記録メディアでもっともシェアが大きいのはスマートメディア(53%)だが、今後は著作権問題などによりメモリースティックやSDのシェアが増えていくだろう。賛同メーカーに関しては、実態はSDとメモリースティックのどちらにも協賛している人が多く、数を比較しても意味がない。いかにメーカーがいい商品を開発してくれるかで重要度が決まる」

同社執行役員常務でメモリースティック事業センター長の中川裕氏

「メモリースティックはソニーフォーマットのクローズドなもので、SDはフォーラムによるオープンなものと言われる。そのため今回オープンプラットフォームプログラムを用意した。メモリースティックはOSでいうとWindows 95や98。ベースはあるが、いろいろなアプリケーションは自由に使ってもらう。オープンプラットフォームプログラムにより参入障壁を極力なくす。メモリースティックをメディアだけでなく、音楽などのコンテンツ配信やポータブルデバイス、コーデックなどを含め広くオープンにし、使いやすいものにしていくことで、新しいマーケットを作っていきたい」と語った。

メモリースティック拡張モジュールのモック。右からGPS位置情報モジュール、カメラモジュール、Bluetooth対応無線通信モジュール、ジョグダイヤルモジュール。COMDEX/Fallでは実際に動くモデルを展示し、CLIEを利用してデモを行なう。COMDEXでデモ展示されるGPSモジュールは、GPS部分が写真のモックより大きく、カメラモジュールはCLIEに挿入するとディスプレーが見えなくなるので、ディスプレー部をなくすという
マジックゲートメモリースティックを利用して音楽データをエンコード/デコードできる携帯電話の参考モデル。写真はNTTドコモの携帯電話
こちらはauのマジックゲートメモリースティック対応携帯電話の参考モデル
13日付で同社が発表した『メモリースティックハイファイシステム』(メモリースティックの音楽を再生したり、PCを介してPC内の音楽データをメモリースティックに記録できるオーディオシステム)を拡張したモデルのコンセプトモック。メモリースティックスロットのほか、DVDドライブ、MDドライブを搭載。オーディオシステムの新ラインナップとしての導入を予定しているという

同社は、11月に米国で開催される“COMDEX/Fall 2000”に、“メモリースティックパビリオン”を出展、国内外53社の企業が、メモリースティック対応の機器を展示紹介するという。

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