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シーラス・ロジック、効率90%以上の“TrueDigital”D級アンプ製品を発表

2001年05月16日 21時14分更新

文● 編集部 佐々木千之

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シーラス・ロジック(株)は15日、東京・千代田区の本社において、90%以上の高効率で最大50W動作する“TrueDigital”D級アンプ(※1)コントローラー『CS44210』と、ヘッドホンアンプ『CS44L10』を発表した。会場ではCS44210を使った試作アンプの試聴が行なわれた。

※1 D級アンプ:A級、B級といった一般的なアンプ(リニアアンプ)が、真空管やトランジスターなどの素子の信号増幅機能を利用しているのに対して、スイッチを高速にON/OFFするスイッチング動作によって信号の増幅を行なうアンプ。

発表会で動作デモを行なったデジタルアンプ
発表会で動作デモを行なった、CS44210(中央のIC)を搭載したデジタルアンプ(出力50W)。右下がS/PDIF入力、左はスピーカー出力、上に伸びているのは電源ライン

シーラス・ロジックによると、一般的にD級アンプでは、リニアアンプの効率が40~60%程度なのに対し、90%程度と非常に高効率であることが特徴。例えば100Wのオーディオ入力に対して、これまでのリニアアンプで40~60Wのスピーカー出力だったが、D級アンプであれば90Wの出力が得られることになる。失われた部分は熱になっているので、同じスピーカー出力を得る際にD級アンプであれば、必要な電力も発熱も少ないことになる。スイッチングレギュレーター技術から開発されたPWM(パルス幅変調)D級アンプは'80年代から製造されているが、複雑で設計が難しく、リニアアンプと比べて性能が上げにくい、無線周波数・電磁気妨害(RF/EMI)が出やすいといった問題点があったという。特に電源のノイズが出力に乗りやすく、これを抑えるために複雑で高価なフィルターが必要で、コストが高くてもあまり問題とならないハイエンド製品に使用されてきたとしている。

TrueDigital D級アンプの構成
CS44210を使った、TrueDigital D級アンプの構成

同社が今回発表したTrueDigital D級アンプは、アナログ回路とデジタル回路を組み合わせて構成していたスイッチング回路をDSP(Digital Signal Processor)制御のデジタルスイッチにするなど、D級アンプシステムを構成する回路をすべてデジタル化することで、従来のD級アンプが抱えていた問題を解決したという。

例えば、これまで廉価な電源を使った場合に、電源電圧の周波数変動がアンプ自体の出力変動に影響してしまっていたが、電源電圧をA/Dコンバーターでモニターし、その変動をDSPが出力制御にフィードバックして変動の影響を取り除き、フィルターが廉価なものでも十分な性能が得られるという。また、D級アンプでは接続されるスピーカーのインピーダンスが、設計時に想定したものと異なった場合に、性能が大きく低下していたが、これについても接続されたスピーカーのインピーダンスを同様にモニターして、DSPがそれをフィードバックすることで、アンプの性能低下が防げる。RF/EMIに関しては、同社の低減技術を利用することで抑えたという。ダイナミックレンジも、従来のD級アンプによる90~95dB(デシベル)に対して120dBまで向上したとしている。

シーラス・ロジックのTrueDigital D級アンプを使用すると、仕様部品が少なくて済むため、パワーアンプのサイズをこれまでの4分の1以下に小型化したり、効率が高いことでバッテリー駆動時の動作時間を従来の3倍に伸ばしたりできるとしている。

CS44210(中央のIC)のアップ
デジタルアンプに搭載されたCS44210(中央のIC)のアップ。動作中でも暖かくなる程度

アンプコントローラーCS44210はダイナミックレンジ100dBで、出力は5~50W、最大24bit/96kHzのサンプリングをサポートする。小型のオーディオシステム、カーオーディオシステム、小型業務用アンプ、スピーカー内蔵アンプなどに向くとしている。1万個ロット時の価格は3.95ドル(約488円)。ヘッドホンアンプCS44L10はダイナミックレンジ100dBで、出力は100mW(チャンネルあたり)、最大24bit/96kHzのサンプリングをサポートする。1万個ロット時の価格は2.81ドル(約347円)。2製品とも現在サンプル出荷中で、8、9月には正式出荷を開始する予定。エンドユーザーが搭載製品を目にするのは、2002年の春ないし夏ごろになるとしている。

PWM D級アンプのブロック図
PWM D級アンプのブロック図。中央の点線で囲まれた部分が今回のCS44210。今後DSPなどを含めた白い四角で示される回路をまとめた製品を予定している

CS44210では、DSPやサンプリングレートコンバーター、S/PDIFインターフェース、電源などをモニターするA/Dコンバーターが外付けとなっているが、今後それらの回路も含めてパッケージ化し、50~1000Wの高出力に対応した製品を、年内に出荷する予定という。

今後のD級アンプ製品ロードマップ
今後のD級アンプ製品ロードマップ

発表会では、CS44210を使った試作アンプの試聴が行なわれた。かなり大きな音量で何分間も音楽を流したが、試作アンプの基板上のCS44210は指で触って暖かい程度で、アンプ効率の高さが実感できるものだった。音質もダイナミックレンジの広い品質の高いものだった。

記者自身は音の専門家ではないので、音質の評価は参考程度にとどめられたい。

シーラス・ロジックはTrueDigital D級アンプを、コンシューマーオーディオからプロフェッショナル用まで広く応用できる製品と位置づけており、これまでオーディオ半導体を提供してきた、ソニー(株)、松下電器産業(株)、米ボーズ社、Harman/Kardon(米ハーマンインターナショナル社)などに売り込んでいくと見られる。

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