このページの本文へ

インテル、サーバー向け高速接続技術“InfiniBand”のデモを日本初公開

2001年09月10日 22時09分更新

文● 編集部 佐々木千之

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

インテル(株)は10日、都内で報道関係者を集めて、同社などが中心となって策定したサーバー向け高速接続技術“InfiniBand(インフィニバンド)”について説明した。席上、InfiniBand対応機器を実際に動かすデモンストレーションを日本で初めて公開した。

米インテル社のアリソン・クライン氏と米Lane 15 Software社のジョン・ベントン氏
米インテル社アドバンスド・コンポーネント事業部インダストリアル・マーケティングマネージャのアリソン・クライン氏(右)と、米Lane 15 Software社テクニカル・リレーションシップ・マネージャのジョン・ベントン氏(左)

説明会ではまず、InfiniBandの開発と普及を目指す業界団体“InfiniBand Trade Association”(※1)のメンバーという立場から、米インテル社アドバンスド・コンポーネント事業部インダストリアル・マーケティングマネージャのアリソン・クライン(Allyson Klein)氏と、米Lane 15 Software社テクニカル・リレーションシップ・マネージャのジョン・ベントン(Brad Benton)氏が、InfiniBandの技術と利点などについて説明した。

※1 創設メンバー企業は、米コンパックコンピュータ社、米デルコンピュータ社、米ヒューレット・パッカード社、米IBM社、米インテル社、米マイクロソフト社、米サン・マイクロシステムズ社の7社。現在220社以上が参加する。

InfiniBandのチャネルの構成図
InfiniBandのチャネルの構成図

InfiniBandはもともと、ISAやPCIの後継となる高速バス技術としてコンパック、ヒューレット・パッカード、IBMなどが中心となって進めていた“Future I/O(フューチャーアイオー)”と、サン・マイクロシステムズ、デルコンピュータ、(株)日立製作所、日本電気(株)らが中心となって進めていた“NGIO(Next Generation I/O)”の2つのグループが、'99年9月に統合して策定したもの。2000年10月には基本仕様のバージョン1.0(※2)をリリースし、2001年6月には100人以上の技術者が参加して機器を実際に接続して検証する“プラグ・フェスタ”を開いている。クライン氏は、InfiniBandの必要性について「CPUは12~18ヵ月で2倍のパフォーマンスになっており、I/Oバスに要求される帯域は3年で倍増する。CPUに合ったI/Oバスにするための性能アップが必要」と語った。

※2 InfiniBandは、1チャネルあたり毎秒2.5Gbitのバンド幅を持つ。現在の仕様では、1チャネルを1本のケーブルに収めたもの、4チャネルを1本のケーブルに収めたもの、12チャネルを1本のケーブルに収めたものの3種類が規定されている。10数mまでの距離では銅線で、それ以上の距離では光ファイバーを利用する見込み。

InfiniBandはサーバーの外部I/O規格として、ストレージやネットワーク、クラスタリングにも使えるだけの、高速性能や拡張性を持たせるように考慮したという。InfiniBandでは、コンピューター(サーバー)本体と別にスイッチ製品(ファブリック)を用意し、コンピューター同士やストレージ、ネットワークとはこのファブリックを介して接続する仕組み。このアーキテクチャーによって、プロセッサーとI/Oを独立して拡張が行なえるメリットがあるという。また、従来のようにI/Oアダプターをコンピューターごとに持たず、小型のケーブルでスイッチに対して接続することになるため、ボード状のサーバーである“ブレード・サーバー”といった高密度化への要求にも、対応できるとしている。

これは64bit PCIのInfiniBandインターフェースカード
これは64bit PCIのInfiniBandインターフェースカード
InfiniBandのケーブル、コネクターとソケット
InfiniBandのケーブル、コネクターとソケット

サーバーのクラスタリングでは、従来は各サーバーメーカーが独自規格によって接続していたが、InfiniBandは初めてメーカーの壁を超えた統一規格でのクラスタリングが可能になるという。さらに、InfiniBandのファブリックは数千ノードまで拡張でき、リンクも多重化が可能な仕組みになっており、可用性を高めているという。

エントリーサーバー市場におけるInfiniBand対応製品の占める割合の予測
エントリーサーバー市場におけるInfiniBand対応製品の占める割合の予測

ベントン氏によれば、サーバーメーカー、チップメーカーをはじめとして、InfiniBandへの業界の賛同は得られており、現在はそのなかから、最初の製品を出そうというスタートアップ企業がプロトタイプを作っている段階だとしている。

続いてインテルのInfiniBandに対する取り組みについてクライン氏が説明した。

それによるとインテルでは、InfiniBand製品として“チャネル・アダプター”“スイッチ”“ソフトウェア”といった製品を開発しており、すでにサンプル出荷している状況で、開発キットなどと共にインテルと顧客で検証している段階だという。まず2002年上半期にInfiniBandアーキテクチャーベースのスイッチ製品を投入する予定としている。

クライン氏が示した、サーバーにおける2段階のInfiniBand対応
クライン氏が示した、サーバーにおける2段階のInfiniBand対応

またインテルでは、ユタ州に、インテルのInfiniBand製品へのアプリケーション最適化を希望するISVに対して、機材やテスト環境を提供する“InfiniBandソフトウェア最適化ラボ”を用意しているほか、InfiniBand開発者であれば誰でも参加できる“相互運用性検証ラボ”をオレゴン州に2001年第2四半期にオープンしたという。すでに30社を超える企業が参加して、検証を行なっているという。

ケース内の下2つがInfiniBand対応サーバー。上から2つめがInfiniBand対応スイッチケース内の下2つがInfiniBand対応サーバー。上から2つめがInfiniBand対応スイッチ。ケース上のノートパソコンでは、Lane 15 SoftwareのInfiniBand管理ソフト『Lane 15』が動作している

国内で初公開となったInfiniBandのデモンストレーションでは、InfiniBandでスイッチに接続した2台のサーバーにおいて、片方のサーバーに接続したストレージを、ソフトウェアのみの操作によって、もう一方のサーバーのストレージとして認識させ、直接接続したのとまったく同様に扱えることを示した。

InfiniBand、USB 2.0、3GIOと、次世代の高速I/Oはシリアルベースになる
InfiniBand、USB 2.0、3GIOと、次世代の高速I/Oはシリアルベースになる

インテルでは、コンピューターのI/Oのアーキテクチャーを、信号の遅延などの問題から高速化が難しいパラレル方式から、InfiniBandやUSB 2.0、次世代のシステム内I/O技術“3GIO(3rd Generation I/O)”などのシリアル方式へ移行させて、システム全体の高速化を図る計画を立てている。InfiniBandとUSB 2.0、3GIO、さらには米AMD社が提唱する高速データバス“Hyper Transport”や、“Fibre Channel”と競合するのではないかという質問が出たが、「InfiniBandはサーバーの外部I/O、USB 2.0はクライアントパソコンの外部I/O、3GIOとHyper Transportはシステム内のチップを接続するI/O、Fibre Channelはストレージを接続するI/Oであり、それらは共存するものだ」(クライン氏)と述べた。

インテルは8月に開催した開発者向け会議“Intel Developers Forum Fall 2001”で、InfiniBandで接続したサーバーを使い、DWHやRDB、ERPといった大規模なソフトウェアを使ったデモンストレーションを行なっている。インテルでは、InfiniBandを積極的に推進することで、これまで限られたメーカーしか提供できなかった技術を、より広く安価に展開して、インテルプロセッサーを使ったサーバーの適用範囲を大きく広げる戦略のようだ。

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン