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日本IBMとシチズン、Linux腕時計を発表――腕時計でサーバーをコントロールできる!?

2001年10月11日 22時36分更新

文● 編集部 中西祥智

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日本アイ・ビー・エム(株)およびシチズン時計(株)は11日、IBMの研究開発部門であるIBMリサーチとシチズンが共同で、Linuxを搭載した腕時計型コンピューター『WatchPad 1.5』の試作機を開発したと発表した。

『WatchPad 1.5』
『WatchPad 1.5』表示しているのはブート画面。ブートしてはシャットダウンするという動作を、延々と繰り返している。さすがに文字は判読できない

WatchPad 1.5 は、Linuxを搭載し、Bluetooth経由でパソコンをコントロールできる。また、搭載する指紋センサーを利用して、個人認証端末としても使用できる。

IBMリサーチは2000年8月に、WatchPad 1.5の前身となるLinux搭載腕時計を発表している。同日の記者発表会で、日本IBM理事で東京基礎研究所所長の鷹尾洋一氏は、長年ウェアラブルコンピューターの研究を行なってきて「究極(のウェアラブルコンピューター)は腕時計だ」との結論にたどり着いたと語る。

日本IBM理事で東京基礎研究所所長の鷹尾洋一氏
日本IBM理事で東京基礎研究所所長の鷹尾洋一氏

鷹尾氏は「昨年の第1世代のWatchPadで、基本的なシステムのアーキテクチャーはある程度できていたが、プロトタイプは“ひ弱な子”だった。色々な可能性を探ろうにもできなかった。そこで、時計メーカーと組むことを考えた」とし、両社の協業によって、WatchPadはほとんど実売レベルに達したとしている。ただし、デザインについては「IBM色が出すぎて好きではない」という。

2モデル
IBMとシチズン、それぞれのロゴの入る2モデルがある

また、シチズンの白崎雄三取締役生産本部副本部長は、日本IBMとの協業で「腕時計を高度な情報ツールとして活用するための共通プラットフォームを手に入れること、これまで単体で扱ってきた腕時計のネットワーク化を図れること、そして従来の時計からの新たな成長・発展を」狙うと説明した。

シチズンの白崎雄三取締役生産本部副本部長
シチズンの白崎雄三取締役生産本部副本部長

WatchPad 1.5は、クロック周波数18~74MHzの32bitCPU(ARMをベースにしているという)、320×240ドットの反射型モノクロ液晶ディスプレー(タッチパネル装備)、8MBのDRAMと16MBのフラッシュメモリー、Bluetooth、IrDA、RS-232C、スピーカー、マイク、バイブレーター、ライン型の指紋センサー、加速度センサーなど、数多くの機能を搭載する。ベルトやリューズ部分を除いた本体サイズは幅46×奥行き16×高さ65mmで、重さは約43g。OSはバージョン2.4のカーネルを実装したLinuxで、GUIとしてMicrowindowsを搭載し、Bluetoothプロトコルスタックとして日本IBMの『BlueDrekar』を実装する。

ペンギン
手を上げるペンギン。なお、光の加減でカラーに見えるが、モノクロ液晶だ

また、本体にはリチウムイオンバッテリーを内蔵しており、通常の使用なら約1日はバッテリー駆動するという。駆動電圧は3Vもしくは2.5V。充電は、RS-232C経由で接続するクレードルを介して行ない、AC電源のほか、4本の単3電池からも充電できる。操作は、リューズやボタン、加速度センサーで行なう。リューズを採用した理由については、防水という点でリューズが優れているからだという。

両社はWatchPadの用途として、パソコンへのログインやセキュリティーゾーンへの入退場を行なう本人認証用の指紋センサーや、サーバーのフロントエンドユーザーインターフェースなどを想定している。発表会場では、Bluetooth経由でノートパソコン『ThinkPad』を操作し、PowerPointのスライドを切り替えて見せた(ただし、使用したのは第1世代のWatchPad『WatchPad 1.0』)。また、内蔵する加速度センサーによって、画面に表示するペンギンマークが手を上げるというデモも行なった。なお、2002年3月ごろを目処に、大学などの研究機関と連携して実証実験を行ない、「こういう小型で多機能な機器が、どういうシーンを消費者に提供できるか研究する(鷹尾氏)」としている。

WatchPad 1.5の内部
WatchPad 1.5の内部

また、OSにLinuxを採用した理由について、日本IBMは「スーパーコンピューターからクライアントパソコンまで、Linuxの普及を推進する」ためで、シチズンは「すでにLinuxを搭載したプロトタイプがあった」からだという。なお、シチズン側ではLinux以外にWindows CEなども検討したが、開発に時間がかかるため候補から外した。

WatchPad 1.5のシステムの基本設計およびソフトウェアはIBMが、基板の設計や製造はシチズンが行なう。一般に発売する時期は未定で、価格については、日本IBMの担当者によると、まだコスト計算をしていないが「(日本IBMのPDA)『WorkPad』の最上位機種くらい(『WorkPad c505』で4万9900円)」になるという。なお日本IBMでは、今後搭載するLinuxのソースコードを公開することと、PowerPCをCPUに搭載することを行なうとしている。また、シチズンは近日中に、外装をより腕時計に近づけたモデルを発表する予定。

『WatchPad 1.0』
こちらは第1世代のWatchPad『WatchPad 1.0』。記者発表会でPowerPointのスライドをめくるデモをしたのはこのWatchPad 1.0のほうだ
大容量バッテリー
その発表会のデモでバッテリー切れにならないために、大容量バッテリーを搭載していた

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