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凸版印刷、有機ELディスプレーに関して英オプシスとの提携、英CDTへの資本参加を発表

2002年10月28日 21時54分更新

文● 編集部 佐久間康仁

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凸版印刷(株)は28日、都内で記者会見を開催し、有機ELディスプレーの新材料“デンドリマー”の開発を進める英オプシス(Opsys)社とのフルカラー有機ELディスプレーに関する共同開発契約締結、ならびに同じく有機ELディスプレーの材料“ポリマーEL”の開発を進める英ケンブリッジ・ディスプレイ・テクノロジー(CDT:Cambridge Display Technology)社の株式取得について、詳細を発表した。

3社の関係図
記者会見で説明された凸版印刷、英CDT社、英オプシス社の関係図

記者会見場には、凸版印刷の生産・技術・研究本部長 河合 英昭常務取締役と、CDTのクレイ・シェファード(Clay Shepherd)氏が出席し、契約締結の経緯や3社の関係について説明を行なった。

クレイ・シェファード氏
CDTのクレイ・シェファード氏は、「凸版印刷の資本参加、および技術提携を歓迎する。高度な印刷技術を持つ凸版印刷が有機EL技術の進化に重要な役割を果たすと確信する」という、同社社長兼CEO(最高経営責任者)デビッド・ファイフ(David Fyfe)氏のメッセージを読み上げた

3社の関係は、

  • 凸版印刷は、すでに2002年7月に英オプシスと“デンドリマーEL素子”の共同開発で提携
  • CDTは2002年10月にオプシスの経営権と株式購入権を取得(ただし、株式取得には至っていない)
  • 同じく10月に凸版印刷はCDTと“ポリマーEL素子”に関して提携
  • さらに12月に凸版印刷がCDTに約800万ドル(約10億円)を出資予定

となり、凸版印刷はオプシスとCDTが進めている2つの有機EL素子の開発に関して提携を結んだことになる。

原理とメリット 市場予測
記者会見でのプレゼンテーション資料より。有機EL(OLED)の原理とメリット有機ELの市場動向予測。今年は携帯電話やゲーム機など、小型画面を使ったデバイスで有機ELパネルが登場するが、ノートパソコンのディスプレーやTVなどの大画面化は2007~2010年になると予測
各種有機EL ポリマーとデンドリマー
有機ELの開発の歴史。「現在実用化に最も近いのは低分子の有機EL素子によるものだが、これらは均一な蒸着が必要で、大画面化は難しい」と説明。塗布が可能な高分子有機EL素材のメリットをアピールしたCDTが多くの特許を持つポリマー方式(上)と、オプシスが開発を進めるデンドリマー方式。デンドリマーは中心で発光するコアを高分子が取り巻くというもので、デンドリマー同士の電子の移動を高効率化するためには均質な塗りわけが必要で、ここに凸版の印刷技術が応用できるとしている

これについて凸版印刷の河合氏は、「CDT社が開発しているポリマーEL素子は、電子が鎖状に連続した素子を移動する際に発光する“蛍光”方式で、電子の移動効率がよく長寿命化などの研究も進んでいる。製造方式も、インクジェットなどの印刷技術を応用したシンプルな方法で行なえるようになっているが、ポリマーEL素子が溶剤に溶けにくく塗布プロセスでの効率がよくない。これに対して、オプシス社のデンドリマーEL素子は蛍光方式よりも発光効率のいい“燐光”方式のナノ素子で、ポリマーEL素子よりも溶解度も高いという特徴がある。ただし、研究開発はまだ始まったばかりで、蛍光方式に比べて寿命が短く(数1000時間)、電子の移動効率を高める、効率的な塗りわけなどの技術開発が必要。従来競合していた両社が手を組むことで、互いの利点を伸ばし、さらに凸版が培ってきた印刷/製版技術や液晶パネルのカラーフィルター製造技術により、大画面化・低価格化の早期実現を目指したい」と説明している。

3社は今後、共同でポリマー/デンドリマーを用いた有機ELディスプレーの開発および事業化を進め、2007年ごろの実用化を目指すとのこと。

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