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【IDF Spring 2003 Vol.2】Pentium-Mに続く90nmプロセスのモバイルプロセッサー“Dothan”が年内にも登場!!

2003年02月20日 00時00分更新

文● 塩田紳二

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IDFの2日目は、“CLIENT Day”と題して、モバイル、デスクトップ、そして組み込み用のプロセッサーの話題が中心。

Pentium-Mのダイ
Pentium-Mのダイ。下の規則的なパターンが並んでいる部分が2次キャッシュ

モバイル系プロセッサは、Pentium-M(コード名Banias)の登場が近いこともあって、これが話題の中心。デスクトップ用は、現在のPentium 4であるNorthwoodの後継となる“Prescott”が、組み込み用は、最近発表された『PXA-800F』(コード名Manitoba)が話題。

Xscaleを使ったスマートフォンのプロトタイプXscaleを使ったスマートフォンのプロトタイプ。マイクロソフトの携帯電話用OSを採用

Dothanは年内登場

まだ、製品の出荷もされていないPentium-Mだが、すでに次の製品である“Dothan(コード名)”は2003年内に出荷されることが明かになった。このDothanは、90nmプロセスを使ったインテル最初の製品となる予定で、簡単にいえば、低電圧版のPentium-Mプロセッサー。プロセスが小さくなるために、コストが下がり、消費電力が小さくなる。Baniasが、現在のモバイルPentium III並なので、Dothanは、より高性能で、より消費電力が小さくなる。Baniasは、900MHzの超低電圧版から最高1.6GHz版が用意されるが、Dothanは2GHz程度になる予定。この感じからすると、今年は、ノートパソコンの購入が難しくなりそうな感じ。夏のボーナスで最初のPentium-Mを買うか、あるいはこれを見送ってDothanまで待つか?

消費電力比較
モバイルPentium III-1.2GHz(緑のライン)、モバイルPentium 4-M-2.4GHz(青のライン)、Pentium-M-1.6GHz(赤のライン)の消費電力比較。Pentium-Mが最も待機時の消費電力が小さく、最も速く実行が終わる(グラフが一番最初に待機状態に戻る)。また、実行途中の消費電力は、モバイルPentium IIIとほとんど変わらず、実行時間が短いために、同じ処理で比較するとトータルでの消費電力が小さいことがわかる

今日のキーノートでは、Pentium-M、モバイルPentium III、モバイルPentium 4を比較したデモが行なわれた。この中で、Pentium-M-1.6GHzは、2.4GHzのモバイルPentium 4よりも早く、1.2GHzのモバイルPentium IIIとほとんど変わらない消費電力だった(ただし、同じ処理なら、Pentium-Mのほうが速く実行できるために合計の消費電力は小さくなる)。つまり、Pentium-Mは、1.5倍のクロックを持つモバイルPentium 4と同等の性能を持つことになる。

実行時間、バッテリー寿命のグラフ
実行時間、バッテリー寿命のグラフ。やはりPentium-Mが最も成績が良い

また、キーノートでは、モバイルをより長時間動かすための技術として、燃料電池や高解像度の低温ポリシリコンTFT液晶といった技術も披露された。燃料電池に関しては、フォームファクターなど、一定の仕様を決めるようだ。

PoliFuel社の燃料電池 燃料電池をこのフォームファクターとする
実際に動作しているPoliFuel社の燃料電池。ノートパソコン用としては世界で初めてのものだというインテルでは、燃料電池をこのフォームファクターとし、ノートパソコンへの普及を図るという

Prescottはどうなる?

現在のデスクトップ用Pentium 4であるNorthwoodコアの後継となるPrescottは、NetBurstマイクロアーキテクチャーを強化する。そのほか、ハイパースレッディングの強化や13の新しい命令の追加、強化されたパワーマネジメントなどがある。また、1次キャッシュ(トレースキャッシュ)が16KBに、2次キャッシュが1MBとなり、FSBは800MHzとなるため、クロック向上とあわせてより高性能となる予定。また、Dothanと同じく90nmプロセスを使い、クロックは当初4~5GHzとなる予定。

7つの強化点 Prescottで追加される13の新しい命令
Prescottは、ハイパースレッドをサポートするNorthwoodに加え、7つの強化点がある。これにより、プログラムの実行効率を上げ、さらにクロック向上で性能強化を図るPrescottで追加される13の新しい命令。浮動小数点やMMX関連など、マルチメディアなどで比較的よく行なわれる処理を1命令で実行するものと、ハイパースレッドでのスレッド間の同期をとるものが追加されている
NetBurstアーキテクチャーの強化点とは、
  1. 命令プリフェッチと分岐予測の強化
  2. パワーマネジメントの強化
  3. La Grandeのサポート
  4. 乗算命令のレイテンシー短縮
  5. WCバッファー
  6. ハイパースレッディングの強化
  7. Prescott新命令の追加

となる。追加される命令は、浮動小数点から整数への変換命令や複合演算命令、SIMD(MMX)命令や、スレッド間同期用の命令などとなる。これらは、広く一般のプログラムで使うというより、現在のMMX命令のように、特定のアプリケーションがこれを使ってより高い性能を出すためのものといえる。

Powersville1 Powersville2
2004年に登場予定の一般向けコンセプトプラットフォーム“Powersville”。Prescottの次のプロセッサである“Tejas”を採用しPCI-Expressを利用
Mable Falls1 Mable Falls2
同じく、ビジネス向けワークステーションのコンセプトプラットフォームである“Mable Falls”。PCI-Expessを応用した“デバイスベイ”であるNew Cardスロットを採用

モバイルは、トランスメタ(Transmeta)、デスクトップは、AMDというライバルがいるインテルは、両分野でのリードをとりたいところ。モバイルでは、“Centrino”というプラットフォームブランドを作り、Pentium-M、855チップセット、無線LANモジュールのセットでの導入を図る。表向きには、ホットスポットとの接続検証やベリサイン(VeriSign)社のセキュリティーミドルウェアでの検証などが行なわれていて、メーカーの負担を軽減ということになっているが、この組合せでないと、現在インテルが行なっている“Intel Insideプログラム”(広告費の一部をインテルが負担するもの。最大で半分をインテルが負担すると言われている)の負担率が大きく下がるらしい。メーカーにしてみれば、コストの中でも大きな割合を占める広告宣伝費を削減できる効果は大きく、多くのメーカーが同プログラムを利用している(テレビコマーシャルなどでインテルインサイドって出るやつは全部これである)。ただ、現在ちょっと悩ましいのは、IEEE 802.11gが当初はサポートされず、IEEE 802.11a/bデュアルバンドの無線LANモジュールも6月以降の供給となる点(Centrinoでは、インテルの無線LANモジュールの搭載が必要条件となる)。また、メーカーとしての独自性をどこで出すか? という点も難しい問題。

デスクトップは、引き続き、クロックで差を付けつつ、単位時間あたりの命令実行数についても、さまざまな機能強化で対応する予定。ただし、AMDは、64bitプロセッサーという大きな違い(実際には、速い32bitとして使われることがほとんどだろうが)があること、マルチプロセッサー化が容易であるなどのメリットもあり、Prescottが決定打とはならないだろう。もっとも、AMDの場合、製造などの問題もあって、競合という点で今年どうなるのかは不明なのだが……。

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