デジタルコンテンツの制作や流通、利用のための技術や製品を紹介する“デジタルパブリッシング フェア”が24日に東京ビッグサイトで開幕した。主催はリード エグジビション ジャパン(株)と、(社)日本書籍出版協会などの出版業界団体が構成する東京国際ブックフェア実行委員会で、27日まで開催される。
“デジタルパブリッシング フェア”は、おもに出版物を紹介するイベントである“東京国際ブックフェア2003”の1ジャンルとして開催されている。“東京国際ブックフェア2003”は、会場を“自然科学書フェア”“人文・社会科学書フェア”“児童書フェア”“編集制作プロダクション フェア”“学習書・教育ソフト フェア”“デジタルパブリッシング フェア”という6ジャンルに区分し、出版社と書店の仕入れ交渉や、一般読者向けの書籍の割り引き販売などが行なわれる。会場の左奥を占める“デジタルパブリッシング フェア”では、デジタルパブリッシングのためのコンテンツ作成や利用、書籍の流通のための技術や製品を展示、販売している。
印刷会社が考える書籍流通システム
印刷会社である凸版印刷(株)と大日本印刷(株)は、それぞれが書籍管理用のRFID(Radio Frequency Identificationの略で、電波を用いた認識技術)システムのデモを展示していた。凸版印刷は、約1mm角のチップに実装したRFIDタグを参考出品していた。一方の大日本印刷は、RFIDタグを利用し、書店で書籍を管理するシステムのデモを展示していた。
また、両社はそれぞれにデジタルコンテンツの表示デバイスを出展していた。凸版印刷は米イー・インク(E Ink)社が開発した“電子インク”によるビューワーのモックアップを展示しており、一方の大日本印刷は有機ELを利用したポスターなどを展示していた。
電子インクを利用したデバイスのモックアップ。すでに量産体制は整っており、年内には製品が登場する予定だという | 有機ELを利用したポスター。「2003春号」「NEW」といった定型のキャッチコピーを点滅させ、見る人の関心を引くことができるという |
4月23日に松下電器産業(株)が発表した、記憶型液晶を利用した読書用端末について、それぞれの説明担当者にたずねると「記憶型液晶は現在のところカラー出力ができない。電子インクはすでにカラー表示の実験に成功している。また有機ELと異なり、表示している間は電力を消費しないため、長時間同じ内容を表示するデバイスに向いている」(凸版印刷の説明担当者)、「有機ELは発光するのでよく目立つ。目立つポスターなどに使用するのであれば、記憶型液晶や電子インクよりも有機ELが適している」(大日本印刷の説明担当者)との回答を得ることができた。
コンテンツ制作ツール類
凸版印刷のブースでは、(株)セルシスのマンガ描画ソフト『ComicStudio』と連携する組版ソフト『ComicWrite』のベータ版を展示していた。
『ComicWrite』ベータ版のデモ |
『ComicWrite』は、『ComicStudio』で作成したマンガ原稿を、絵のレイヤー、テキストのレイヤー、絵とテキストをまとめたレイヤーに分けて読み込み、テキストと絵を個別にレイアウトして印刷用の版下を作成するソフト。『ComicStudio』で作成したデータを読み込むと、自動的にページ番号を割り当てた印刷用のイメージを生成するほか、文字レイアウトの修正やフォントの一括変換、白抜き文字や縁取りのある文字の挿入といった機能をもつ。現在開発が行なわれており、8月に発売する予定だ。当初の対応プラットフォームはMac OS 9のみになる。同社説明担当者は「プロの編集現場ではMac OSが多く使われているので、Mac OS版を先に開発した。Windowsへの移植はそれほど難しくないと考えている」と、製品化への取り組みを説明した。
アドビシステムズ(株)のブースでは、ページレイアウトソフト『Adobe InDesign 2.0』を紹介するプレゼンテーションや、実際の書籍編集業務を想定した『Adobe InDesign 2.0』のデモを約30分おきに行ない、多くの来場者の関心を集めていた。
アドビシステムズ(株)のブース。30分おきに行なわれるプレゼンテーションの度に、多くの来場者が足を止めていた |