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米トランスメタ、『Efficeon TM8000 マイクロプロセッサ』を発表――次世代省電力技術“LongRun2”もプレビュー


2003年10月16日

米トランスメタ社は15日、次世代x86互換プロセッサー『Efficeon TM8000 マイクロプロセッサ』を発表した。Efficeon TM8000は、クロックごとに最大8命令を実行できる256bitのVLIW(Very Long Instruction Word)エンジンを搭載し、1MBのL2キャッシュメモリーと統合ノースブリッジを集積した低消費電力タイプのプロセッサーで、“Crusoe”の次世代製品に相当する。

同日、都内で開催された記者発表会は、米国と同時開催となったため、日本では、トランスメタ(株)代表取締役社長の村山隆志氏と米トランスメタのシステムマーケティングディレクターであるジョン・ハインライン(John Heinlein)氏がステージに上がり、米トランスメタ社の創設者/最高技術責任者のデビット・ディッツェル(David R.Ditzel)氏はビデオによるプレゼンテーションとなった。

村山隆志氏
トランスメタ(株)代表取締役社長の村山隆志氏

最初に、代表取締役社長の村山隆志氏が、“Efficeon”プロセッサーとビジネス戦略についてプレゼンテーションを行なった。

4つの分野
効率的なコンピューティングは4つの分野

同氏はまず、2000年に“Crusue”を出すまでは本当のノートブック向けプロセッサーがなく、モバイルコンピューティング分野において業界に与えた影響が大きいことを示し、モバイルパソコンメーカーのトップ10社のうち5社がCrusoeを採用していることを紹介した。次に、今回発表したEfficeonにより“効率化(effiency)の新たな時代(eon)”が到来するとし、Efficeonが目指す効率的なコンピューティング“efficient computing”の主な分野として、

  1. 高性能化
  2. 低消費電力化
  3. 低コスト化
  4. 柔軟性と選択肢

の4つを挙げた。高性能化では、Crusoeではクロックあたり最大4命令だったものを8命令に増やし、低消費電力化ではスタンバイモードでの電力消費を低減し、低コスト化ではチップセットを集積した小型パッケージの提供などを進めているとした。

スペース効率
市販のPentium M搭載マザーボードとEfficeonを採用した場合のスペース効率を比較

村山氏は、Efficeonが狙う市場として、これまでCrusoeが使われていた“ウルトラ・ポータブル・ノートブック”などのモバイルパソコンだけでなく、性能の向上によりメインストリームノートパソコンや、静音型デスクトップ、ハイエンド組み込みアプリケーションをターゲットとしていることを示した。トータルソリューションの提供を重要視していることから、半導体メーカーやパソコンメーカーとの協力体制を強化していることに触れ、ファウンドリーとして、0.13μmプロセスの製品を台湾のティーエスエムシー(TSMC:Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)社が製造し、次世代の90nmプロセスのファウンドリーとして富士通を選んだことなどを紹介した。富士通については、ゲート長が40nmの90nmプロセスであるため選択したと説明した。

市場の拡大
EfficeonによりCrusoeから市場が広がる
富士通
富士通はCrusoe搭載ノートを発売しており、Efficeonに期待を表明
シャープ
シャープはEfficeonを搭載した次世代ノートパソコン“Mebius MURAMASA”の開発を表明
エンドースメント
ディッツェル氏はビデオ
日米同時発表のためデビット・ディッツェル(David R.Ditzel)氏はビデオで登場

続いて米トランスメタ創設者/最高技術責任者のデビット・ディッツェル氏が、Efficeonの概要を説明した。Efficeonは、AGP 4X、DDR400、LPCバス(Rev.1.0)、HT(HyperTransport)I/Oなどをサポートし、拡張版CMS(Code Morphing Software)とVLIWハードウェアを搭載しており、命令キャッシュを128KB、データキャッシュを64KB、L2キャッシュを1MB搭載している。メインストリーム向けにクロックあたり最大8命令(“atom”と呼ばれる32bit命令×8)を実行できる新マイクロアーキテクチャーを採用しており、パイプラインは整数パイプが6ステージ(※1)、浮動小数点パイプが8ステージであることを示した。

※1 整数パイプは、IS:命令の発行、DR:命令の解読、RM:ALUオペランドのためのレジスターの読み込み、EM:ALU操作の実行、CM:ALU条件フラグの完了、WB:整数レジスターファイルへの結果の書き戻し、の6ステージ。浮動小数点パイプは、IS:命令の発行、DR:解読-1、DT:解読-2、XA:浮動小数点計算ステージ-1、XB:浮動小数点計算ステージ-2、XC:浮動小数点計算ステージ-3、XD:浮動小数点計算ステージ-4、WB:浮動小数点レジスターファイルへの結果の書き戻し、の8ステージ。

新アーキテクチャー
新マイクロアーキテクチャーを採用

同社のプロセッサーの特徴のひとつとなっているCMSは、Crusoeで採用していたものから機能を強化した拡張版を搭載し、“4ギアシステム”を採用していることを説明。これは、頻繁に実行されないコードを除去し1度に1命令を実行する“第1ギア”、第1ギアでプロファイルしたデータを利用して最初の変換を行ない、最大100個のx86命令の“リージョン”を変換する“第2ギア”、第2ギアの“リージョン”を最適化する“第3ギア”、複数リージョンの結合やリージョン境界を超えた最適化などにより“最もホット”なコードリージョンに対して最適化を行なう“第4ギア”で構成されていることを示した。

■90nm以降の第3世代のロードマップを提示

続いて、Efficeonのロードマップとして示したのは、2003年第4四半期に130nmプロセスでTSMCが製造する第1世代、2004年に90nmプロセスで富士通が製造する第2世代、2005年には90/60nmプロセスの第3世代というもので、Efficeonファミリーとして、1MBのL2キャッシュを搭載する標準パッケージ『TM8600』(130nm)、『TM8800』(90nm)、L2キャッシュを512MBとして低コスト化を図った『TM8300』(130nm)、『TM8500』(90nm)、L2キャッシュが1MBで小型パッケージを採用する『TM8620』(130nm)、『TM8820』(90nm)をラインアップするという。富士通が製造する第2世代製品は、2.0GHz/25W動作までが想定されている。基板に占める面積については、米エヌビディア社のサウスブリッジ(nForce3 Go 150)とTM8600(標準パッケージ)を組み合わせた場合が2066mm2で、nForce3 Go 120とTM8620(小型パッケージ)の組み合わせでは925mm2となり、Pentium Mとノースブリッジ(MCH)、サウスブリッジ(ICH)を組み合わせたCentrinoの35922より最大で4分の1まで縮小できるとしている。

ディッツェル氏は、Efficeonが、ファンレスのノートパソコンでは最大熱設計電力(TDP)の上限がほぼ7Wであるとしたうえで、同クラスの競合製品(Centrino)と同等の温度範囲での最高動作周波数がCentrinoの900MHzに対して1100MHzであること、整数演算性能(AES暗号処理の場合)で約2.2倍、浮動小数点演算性能(LINPACK)が約1.3倍になるというグラフを示した。また、3Dグラフィックス性能(3DMark 2001)については、Pentium M-900MHzとi855GMチップセットと比べて、Efficeon-1100MHzとエヌビディアのGeForce4 420Go&サウスブリッジの構成では約1.6倍になることを強調した。待機電力(CPU+ノースブリッジ+DRAM)については、Windows XPのアイドル時の消費電力を、Centrinoの8分の1以下の0.18Wまで低減できることを示した。

900MHz動作時の温度上昇を比較
EfficeonとCentrinoで900MHz動作時の温度上昇を比較
待機電力は10分の1
Windows XPでの待機時の消費電力は10分の1
デモビデオ

そして、今後、90nmから65nmプロセスに移行する際に最大の問題となるのが、トランジスターのリーク電力(漏れ電流)であると捉えていることを挙げ、同社では対応するためのソリューションとして“LongRun2”を採用すると述べた。

桜井貴康教授
東京大学の桜井貴康教授

ここでトランジスターのリーク電力について、“90nm世代以降での技術的な課題”として、東京大学 国際・産学共同研究センターの桜井貴康教授がビデオでプレゼンテーションを行なった。同氏は世界初のDRAM混載ASICや、世界初のMPEG-2用LSIなどを開発したことで知られている。同氏は、半導体産業界は“ムーアの法則”を追求しているが、プロセスの微細化に伴い、サブスレッショルドリークだけでなく、ゲートリークやPN接合のリークなどによりリーク電力が爆発的に増大することから、ムーアの法則が成り立たなくなってしまうとし、今後はリーク電力としきい値電圧が課題になることを示した。

リークの増加
トランジスターのリーク電流が増加する

■次世代Efficeonで搭載する“LongRun2”をプレビュー

同社では、2000年1月にソフトで電圧と周波数を動的に調整する技術“LongRun”を発表しており、今回発表したEfficeonの次世代製品に搭載を予定している“LongRun2”では、さらにトランジスターの“しきい電圧”(Vt)を動的に調整することにより、リーク電力を制御することで消費電力を低減している。Efficeonにはすでに必要な回路を組み込んでいるという。この技術は、トランジスターのリーク電力が動作電圧に比例することから、システムの動作時にはトランジスターにかかる電圧を動的に変更して過剰なリークを低減するとともに、待機時にはトランジスターにかかる電圧を上げてリークを低減するというもので、これまで待機モードで144mWだったリーク電力を、LongRun2により約70分の1の2mWまで低減できるとしている。

ハインライン氏
ハインライン氏がデモを行なった

最後に、米トランスメタのシステムマーケティングディレクターであるジョン・ハインライン氏が“LongRun2”のデモを行ない、ゲームやDVD再生、待機時などで、実際にリーク電力などがダイナミックに変更されている様子を見せた。

Efficeon搭載ノート
Efficeon搭載ノートなどが並べられた
基板も
搭載した基板も
会場の参考展示

(編集部)


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