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日本電気、3G携帯電話のデータ通信を使った高品位映像伝送システム『MobileStream』を発表

2004年11月25日 19時39分更新

文● 編集部 小西利明

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NECが開発した高品位映像伝送システム『MobileStream』の使用イメージ。エンコーダー兼伝送装置(人物右の赤い箱)を個人で携帯できるサイズまで小型化した
NECが開発した高品位映像伝送システム『MobileStream』の使用イメージ。エンコーダー兼伝送装置(人物右の赤い箱)を個人で携帯できるサイズまで小型化した
MobileStreamについて説明する、日本電気執行役員の粉川英夫氏
MobileStreamについて説明する、日本電気執行役員の粉川英夫氏

日本電気(株)は25日、第3世代携帯電話のデータ通信を利用して、“H.264”方式の高品位なライブ映像を伝送する“高品位映像伝送システム『MobileStream』”を発表。同日販売を開始した。機材を個人で携帯できるサイズまで小型化し、なおかつ伝送にエヌ・ティ・ティ・ドコモ(株)のFOMA 64Kデータ通信を利用することにより、従来では大型の中継車が必要だったり、高価な衛星携帯電話が必要だったライブ映像/音声の伝送を、より安価に実現可能になった。

MobileStreamの一般的な利用シーンは以下のようになる。

  1. ビデオカメラから入力された映像を、“モバイル高品位映像伝送装置”でH.264方式にエンコードする。
  2. モバイル高品位映像伝送装置に装着されたFOMA対応のデータ通信PCカードを4枚同時に使用して、映像/音声データを送信。
  3. データはISDN網を経由して送られる。受信先ではISDNルーターに接続された“バンドリングルータ”を使用して、4回線分に分かれた映像/音声データを1つにまとめる。
  4. それをパソコンに転送して、“H.264ソフトウェアビューア”にてデコード、視聴する。


MobileStreamの基本的な仕組み。伝送経路はFOMAのデータ通信だけでなく、LAN経由も可能 MobileStreamに含まれる製品。映像をテレビなどで視聴する場合は、別に用意されるデコーダーを用いる
MobileStreamの基本的な仕組み。伝送経路はFOMAのデータ通信だけでなく、LAN経由も可能MobileStreamに含まれる製品。映像をテレビなどで視聴する場合は、別に用意されるデコーダーを用いる
MobileStreamの根幹を為す、モバイル高品位映像伝送装置(左)とバンドリングルータ(右) モバイル高品位映像伝送装置の上面には、PCカードスロットが4つ用意されていて…… そこにFOMA対応データ通信カード(FOMA F2402)を4枚装着して使用する
MobileStreamの根幹を為す、モバイル高品位映像伝送装置(左)とバンドリングルータ(右)モバイル高品位映像伝送装置の上面には、PCカードスロットが4つ用意されていて……そこにFOMA対応データ通信カード(FOMA F2402)を4枚装着して使用する

モバイル高品位映像伝送装置は、幅294、奥行き150、高さ253mmで、重さは約4.5kg(バッテリー含む)。肩からさげて持ち歩けるサイズで、約1時間のバッテリー駆動が可能だ。FOMAデータ通信カードを使ったデータ送信には、64kbpsの“64Kデータ通信”サービスを利用する。これを同時に4回線使用するため、通信帯域は理論上で256kbpsになる。この帯域を使って、解像度352×288ドット(10万画素相当)、15フレーム/秒の映像を、平均ビットレートにして150k~200kbpsで送信する。音声データは携帯電話向けのオーディオコーデック“AMR音声コーデック”を使い、平均ビットレート4.7k~12.2kbpsで送信する。映像は片方向のみだが、音声は双方向での通信が可能。伝送装置自体は単独で動作するが、ビットレートや送信先電話番号の設定は、側面のLAN端子経由で伝送装置をLANに接続し、ウェブブラウザーを使って行なう。

MobileStreamの利点は、従来なら大型の中継車を必要としたようなライブ中継が、FOMA携帯電話の通信エリア内であれば、個人で持ち運べる機材を使って、撮影から伝送まで行なえる点だ。MobileStreamと同種のシステムとしては、パソコンと衛星携帯電話を使った映像/音声伝送システムがある。昨年のイラク戦争の現地中継などでも活用されていた。しかし既存のシステムでは、通信帯域の狭さと映像の符号化方式の能力によって、鮮明な映像を送ることは困難だった。MobileStreamは低ビットレートでも高画質なH.264方式を使うことで、既存システムで一般的なMPEG-4よりも優れた画質を実現している。ビデオカメラとの接続は、Sビデオ入力かコンポジットビデオ入力を使うため、プロ用のビデオカメラから市販のDVカムコーダーまで、幅広く使える。

Windows XP用の“H.264ソフトウェアビューア” 従来のMPEG-4(右下の映像)に比べて、MobileStreamを使ったH.264による映像(左上と右上)は、はるかに鮮明な映像を実現している
Windows XP用の“H.264ソフトウェアビューア”従来のMPEG-4(右下の映像)に比べて、MobileStreamを使ったH.264による映像(左上と右上)は、はるかに鮮明な映像を実現している

映像伝送にかかる通信コストが安いことも特徴で、1分間あたりのデータ通信料金は200円程度と、衛星回線を使うシステムに比べて1桁は安いとのことだ。FOMA携帯電話を使えるエリアであれば、地下からでも中継が可能という利点もある。テレビ放送のクオリティーと比べれば、画質やフレームレートが劣るのは否めないが、個人携帯も可能という機動力の高さを生かして、屋外でのイベント中継や事故や災害現場からのライブ中継などに利用できるとしている。実際に放送局からの意見も踏まえて開発したシステムであり、すでに引き合いもあるそうだ。価格は伝送装置、バンドリングルータ、ビューワーソフトの一式で735万円から(伝送装置のバッテリー、データ通信カードは含まず)。テレビで視聴するためのH.264デコーダーを含む場合は785万円から。

なおFOMAの“高速パケット通信”(最大384kbps)を使わなかった理由については、通信料金面の問題に加えて、パケット通信がベストエフォート型の通信であるため、安定した帯域確保や遅延の問題が解消できなかったためとしている。またNTTドコモ以外のキャリアへの対応については、理論的には可能だが検証が行なわれていないため、現時点では対応しない。今後の要望次第で対応を検討するとのことだ。

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