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三洋電機、最大128和音対応の携帯電話用MIDI音源チップを開発--フュートレックのライセンスを受け、3D-Audioにも対応

2005年04月21日 22時17分更新

文● 編集部 小林久

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三洋電機(株)は21日、携帯電話機用の音源LSIを開発し、サンプル出荷を開始した。最大128和音のフルPCM(MIDI音源128音+ADPCM)発声に対応した音源チップの『LC823872』、最大64和音の音源チップにMP3/AACデコーダーを統合した『LC823553』、同じく最大64和音でMP3デコードのみに対応した『LC823501』の3製品。サンプル価格はそれぞれ800円/1000円/600円。

三洋電機が開発した携帯電話機向け音源チップ。左から順に『LC823872』『LC823553』『LC823501』

(株)フュートレックから、ハードウェア音源用コア技術IP(Intellectual Property:知的所有権)のライセンスを受けて開発した製品で、ウェーブテーブルに格納された各楽器の音色を合成してよりリアルな音質を提供するPCM音源となっている。基本のウェーブテーブルと音程を微妙にずらしたウェーブテーブルを再生時に重ねて音にふくらみを持たせる“Double Wave Table”方式や、音域に応じて使用するウェーブテーブルを変更する“Tone Split”といった技術に加え、携帯電話でリアルな音場を再現できる“3D-Audio機能”などもサポートする。

携帯電話機用音源チップの市場は、ヤマハ(株)が圧倒的なシェアを持ち、沖電気工業(株)、ローム(株)などがこれに続くような状況となっている。三洋電機は、これまでこの市場に取り組んでこなかったが、携帯電話向けの音楽配信サービスなどが盛んになっていくなか、満を持しての参入となった。なお、フュートレックのコアIPはすでにNECエレクトロニクス(株)などが採用しており、三洋電機のチップとほぼ同等の機能を持った製品を3月に発表している。

音源チップのロードマップ。MIDI音源だけではなく、MIDIにデコーダー機能を統合したものも積極的に提供していく予定

携帯電話の将来的なメロディーフォーマットの標準化動向も視野に入れており、3GPPの“Mobile-XMF”などの標準仕様にも対応可能だという。XMF(eXtensible Music Format)のように、MP3やAACといった圧縮した音楽データを送受信するのではなく、携帯電話機に内蔵されているMIDIなどの音源を呼び出す形で演奏することで、ファイル容量を小さくできる仕様が検討されている。auの着信メロディー形式ではヤマハの提唱するSMAF形式が採用されているため、シェア獲得が難しい状況だが、NTTドコモの“iメロディ形式”(MFI形式)の中には、3D-Audioの仕様も盛り込まれており、NTTドコモやボーダフォンといったキャリアーの標準仕様決定に対して、フュートレックは力を持っている技術だという。

将来的には音源とコーデックだけでなく、音源チップのロードマップ。MIDI音源だけで周辺デバイスとの統合も進めていく

今回リリースされた、3つの製品のうち、128和音に対応した『LC823872』は主に国内の携帯電話向けの製品。残りの2製品は、デコーダーと音源を低価格に手に入れられる選択肢として、中国・ヨーロッパ市場向けに販売していく方針だ。LC823872に搭載されているハードウェアデコーダーは、MP3/AACともに消費電力8.5mW(演奏時)となっており、これは他社製品の20~30mWに比較してかなり省電力であるという。

三洋電機は、コーデック、アンプ、NTSCエンコーダー、ビデオドライバーなどに対して高い技術とノウハウを持っており、今後はこれらを音源と統合した、低消費電力、高機能、低コストなチップを提供していく。

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