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インテル、すべてのWi-Fi 802.11規格に対応するデュアルバンドCMOSトランシーバーを発表――転送速度100Mbps以上を実現する802.11nにも対応可能

2005年06月20日 21時52分更新

文● 編集部 小西利明

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無線通信機器の研究を担当する、インテル コミュニケーション技術ラボ 通信回路リサーチ担当のクリシュナムティ・ソーミャ氏 公開されたデュアルバンドRFトランシーバーの試作チップ
無線通信機器の研究を担当する、インテル コミュニケーション技術ラボ 通信回路リサーチ担当のクリシュナムティ・ソーミャ氏公開されたデュアルバンドRFトランシーバーの試作チップ

インテル(株)は20日、無線LAN機器で使われるWi-Fi規格(IEEE 802.11a/b/g)と、現在規格策定中のIEEE 802.11nの4モードに対応可能なデュアルRFトランシーバーの試作品を、CPUなどと同じCMOSプロセス技術で開発することに成功したと発表した。この発表は14日から18日まで京都で行なわれた半導体関連の学会“2005 Symposia of VLSI Technology and Circuits”にて発表された。

発表された試作品は、周波数の異なる(2.4GHz帯と5GHz帯)4つの無線データ通信規格を1つでサポートする機能を備え、無線信号を受信、増幅するアナログ回路からベースバンドプロセッサーまでを備える。CPUやパソコン用チップセットと同じ90nm CMOS製造プロセスで製造されており、同社では無線データ通信機器の小型化や低消費電力化、さらには低価格化を可能とするとしている。同社は以前よりコンピューターの使い方を拡大する技術として、新しい無線LAN技術の規格化や無線LANチップセットの開発に力を入れている。今回開発・発表を担当した米インテル コミュニケーション技術ラボ 通信回路リサーチ担当のクリシュナムティ・ソーミャ(Krishnamurthy Soumyanath)氏は、この20年間でコンピューターと通信の融合が進んでいると述べたうえで、さらなる進化のために必要なのは、「低コストで大量生産により、融合の負担をユーザーがしなくてもいいようにしなければならない」とし、その解決のひとつがCMOS製造プロセスに利用にあると説いた。

また現在は複数の無線LAN標準規格をひとつひとつ異なるデバイス(たとえばIEEE 802.11a/b/gとBluetooth)で対応しているが、CMOS無線技術によりひとつのデバイスで複数規格に対応可能にするだけでなく、異なる規格間をシームレスにローミング可能(たとえば建物内では無線LANで、外にでるとWiMAXや携帯電話などに切り替わる)とすることが求められていると述べた。

無線データ通信技術の進化の流れ。現在は異なる規格ごとに対応するデバイスが必要だが、近い将来はそれがひとつに統合され、さらにシームレスな接続手段へと進化していく
無線データ通信技術の進化の流れ。現在は異なる規格ごとに対応するデバイスが必要だが、近い将来はそれがひとつに統合され、さらにシームレスな接続手段へと進化していく

今回の試作品の特徴についてソーミャ氏は、90nm CMOS製造プロセス利用により、1.4Vと非常に低い電圧での駆動を可能したことをまず挙げた。対応する帯域幅も従来ソリューションの20MHzから100MHzへと拡大され、802.11nにも対応可能となった。またアンテナからの信号を増幅してチップのダイに送る“低ノイズ増幅回路”などをチップのパッケージ上に実装。デジタル回路とアナログ回路を1パッケージ上に集積する“システム・イン・パッケージ”を実現し、低コストでの量産化を可能にしている。そのほかにも、チップごとに異なるレシーバーとトランシーバー(トランスミッター)間の影響を補正するために、問題がどちら側にあるかを分離する効果的な補正スキームも開発したとしている。

パッケージ表面の拡大図と、断面図。パッケージ表面に2.4GHz用と5GHz用の増幅回路などが実装されている チップのトランシーバー部分のダイ写真。複数の周波数帯に対応する機能が実装されている
パッケージ表面の拡大図と、断面図。パッケージ表面に2.4GHz用と5GHz用の増幅回路などが実装されているチップのトランシーバー部分のダイ写真。複数の周波数帯に対応する機能が実装されている

今回の発表はあくまで研究成果の発表であり、これがただちに製品化されるわけではない。しかし1チップで4モードの無線LANに対応できるチップの量産化にめどがついたことで、将来のCentrinoモバイル・テクノロジ対応ノートパソコンへ応用されることも期待できるだろう。

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