――“2010年のFTTH3000万加入を目標に、光配線“DIY化”を目指して”
NTT、光配線工事のスキルレス化と工事時間短縮を目指す新ケーブル&キットを開発
2005年11月08日 20時39分更新
“曲げフリー光ファイバーコード(仮称)”のコネクタ部 |
日本電信電話(株)(NTT)は8日、東京・大手町のアーバンネット大手町ビル内NTTコーポレートニューズルームにプレス関係者を集め、FTTH(家庭向け光ファイバー網)の普及を目指して、同社内NTTアクセスサービスシステム研究所が“曲げ”“折り”“結び”が自在にできて、専門知識やスキルがなくても接続が容易に行なえるという“曲げフリー光ファイバーコード(仮称)”を開発。年内に商品化、年度内に一部ユーザー向けに出荷開始すると発表した。
アクセスサービスシステム研究所 第二推進プロジェクト担当部長プロジェクトマネージャの山内 修氏 |
また同時に、同社と松下電工(株)と共同で、住宅内の光配線工事をスキルレス化/工事時間短縮を実現すると言う“FTTH対応先行光配線キット”を開発したと発表した。こちら来年度(2006年度)の商用化を目指して、研究開発を推進するという。
ディレクタ主幹研究員の鎌 光男氏 |
発表会にはアクセスサービスシステム研究所 第二推進プロジェクト担当部長プロジェクトマネージャの山内 修(やまうちおさむ)氏、同ディレクタ主幹研究員の鎌 光男(かまみつお)氏、アクセスメディアプロジェクト媒体応用グループ主幹研究員で工学博士の倉嶋利雄(くらしまとしお)氏らが出席し、技術的な詳細や開発の背景などを説明した。
折り曲げや結びも自在の新型“光ファイバーコード”を商用化
“曲げフリー光ファイバーコード(仮称)”の用途 | “曲げフリー光ファイバーコード”の特徴 |
曲げフリー光ファイバーコードは、オフィスの光LAN環境における“光情報コンセント”からメディアコンバーター、あるいは宅内の光コネクターローゼットからONU(Optical Network Unit)を結線する光ファイバーコード。従来のコードでは、アダプターの手前で予長をある程度大きな半径(理論値30mm以上)で丸くまとめる“輪取り”が必要になるほか、さらにケーブルの直角な曲げ状態、束ね状態、折り返し状態にすると光が漏れ出してしまった(断線状態になった)。これは光が反射しながら通過する“コア部”(石英ガラスにゲルマニウムを混ぜて、屈折率を高めたもの)と、コアの周囲を覆う“クラッド部”(石英ガラス)で屈折率の差が小さいため、折り曲げた部分で光の入射角度が高すぎると反射せずにグラッド部を通過して漏れ出してしまうためだ。
従来の光ファイバーコードは、折り曲げると“てきめんに”速度が落ちる | “曲げフリー光ファイバーコード(仮称)”では、このように結んだ状態でも転送速度に影響が出ない | |
光ファイバーコードの折り曲げによる転送速度への影響 |
それに対して曲げフリー光ファイバーコードでは、コア部の周囲に6つの空孔(空気孔、約10μm)を囲むように設けて、石英ガラスと空気の大きな屈折率の差を利用して、入射角が高くても光を反射させて閉じ込める効果が高まるという。同社の測定では、最小半径2mmというほぼ折り曲げた状態でも光の透過を確認できたとしている。なお、この折り曲げ角許容範囲の拡大に合わせて、コード被覆もしなやかに曲がって、曲がり癖のつきにくい新たな素材に変更した(従来はポリエチレン製)。
新たに開発した“空孔アシスト型光ファイバ”と従来の光ファイバーの構造の違い | 簡易清掃機能と防塵機能を持つ新型コネクタ部 |
また、コネクター部も改良している。従来は光ケーブル同士やコネクターとの接続には、ほこりやゴミの付着が大敵で、専門の洗浄剤や洗浄の技術が不可欠だった。新たに曲げフリー光ファイバーコードの両端に取り付けたコネクターは、接続部にシャッターを取り付け、輸送/保管時のほこりやゴミの付着を防ぐとともに、シャッターを移動してコネクターを露出させる際に、光ファイバーの先端=フェルールをシャッター内側に取り付けた清掃部がこすって簡易清掃を行なう機構になっている。
現行の電気通信事業法では、家庭の光コネクタローゼットからONUまでは回線事業者の所有物であり、接続/結線などをユーザー自身では行なえないことになっている。これが規制緩和された暁には、部屋の掃除や模様替えなどでONUの位置を動かしたりローゼットから一時的にケーブルを外したい、という際に、光配線スキルを持つ専門の業者に依頼するのではなく、DIY(Do it yourself.)感覚で自分の好きなように手軽に結線できるようにしていきたい、と開発の狙いを示した。
新築/リフォーム時などで屋内の光配線を手軽に行なう“FTTH対応先行光配線キット”
“FTTH対応先行光配線キット”の構成 |
同時に発表されたFTTH対応先行光配線キットは、家庭のコンセントを増設/追加するような感覚で、光配線の知識やスキルがない事業者などでも配管配線工事を行なえるようにするもの。キットの内容は、
- 配管
- 光カールコード
- 光カールモード戻り防止部材
- 短ブーツ光コネクター(光カールコードに取り付け済み)
- 引き込み用牽引端
- 光キャビネット(屋内結線用)
- 光アウトレット(屋外結線用)
で構成される。特徴的なのは光カールコードと短ブーツ光コネクターで、光カールコードはコードを巻き糸(カール)状に成形することで最大20倍(カール状態で1mのものを、最長20mまで)延長可能にしている。これを引き込み用牽引端に接続して配管を通すことで、通常の電源などと同様に引き回せる。また、コネクターブーツ(ケーブルとコネクターを固定する部分)が短い“短ブーツ光コネクター”を開発/採用したことで、既存の電気コンセントと同様のコンパクトな光キャビネットに固定して、情報コンセントの小型化を可能にしたという。このキットを商用化することで、宅内光配線のスキルレス化を前進させ、FTTHの3000万世帯普及(2010年目標)を目指す、としている。
光カールコードによる配線の効率化。余長処理が不要になる | 従来の1/4程度(約7mm)に短縮した“短ブーツ光コネクタ” | |
会場では9ヵ所の折り曲げを含む約12mの宅内配管モデルを作って、実際にケーブルを配線するデモを行なった | 光ケーブルを配線する際の“融着接続”や“メカニカルスプライス”(専用工具)が不要になり、屋外に設置する“光アウトレット”も小型化できるという |