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日本AMD、日本発のパフォーマンスモバイルノート向けプラットフォーム“Yamato”を公開!――デュアルコア版のTurion 64は06年前半に投入


2005年12月15日
AMD JEL(ジャパンエンジニアリングラボ)で開発されたモバイルノート向けプラットフォーム“Yamato”のデモ機(写真右側)
AMD JEL(ジャパンエンジニアリングラボ)で開発されたモバイルノート向けプラットフォーム“Yamato”のデモ機(写真右側)
米AMD マイクロプロセッサソリューションズセクター モバイルプロセッサ事業部 副社長のクリス・クローラン氏
米AMD マイクロプロセッサソリューションズセクター モバイルプロセッサ事業部 副社長のクリス・クローラン氏

日本エイ・エム・ディ(株)(以下AMD)は15日、報道関係者向けのプレスブリーフィングを開催。同社のノートパソコン分野に向けた取り組みを解説したほか、日本で開発されたモバイルノート向けプラットフォーム“Yamato”を公開した。

2005年はAMDにとって、大きな躍進の年となった。3月にはAMD64アーキテクチャーベースの初のモバイルノートパソコン向けCPU“Turion 64(テュリオン64)”を出荷したほか、デスクトップ〜サーバー分野でも、デュアルコアCPU“Athlon 64 X2”と“デュアルコアOpteron”を投入。10月に発表された2005年第3四半期決算では、マイクロプロセッサー事業は前年同期比で44%の売上増加を達成したという。その決算発表の中で強調されていたのが、Turion 64シリーズの好調さだ。前四半期比で72%増という、大幅な増加を示したと述べられている。世界的なノートパソコン需要増加の波に、Turion 64の投入でうまく乗れた形だ。

AMDの2004年第3四半期から2005年第3四半期にかけてのプロセッサー市場シェアの変化。トータルでは3%程度のシェア拡大を実現した
AMDの2004年第3四半期から2005年第3四半期にかけてのプロセッサー市場シェアの変化。トータルでは3%程度のシェア拡大を実現した

米AMD社でモバイルプロセッサ事業部の副社長を務めるクリス・クローラン(Chris Cloran)氏は、同社のモバイルプロセッサー戦略について“3本の大きな柱”があると述べ、その柱として「コンシューマー向け市場を今後も成長させていく」「商用(企業)向け市場へのプレゼンス拡大」「OEMメーカーが製品開発をしやすいように、業界標準に基づいたアーキテクチャーやプラットフォームを提供する」を挙げた。Turion 64搭載ノートは、ワールドワイドで60種以上の製品が発売されており、日本でも8機種で採用されているという。

会場の一角には日本で発売されているTurino 64搭載ノートパソコンも展示されていた。日本人の意識としては、モバイルというより可搬性もあるデスクノートに近いが、Turion 64の採用事例は確実に増えている
会場の一角には日本で発売されているTurino 64搭載ノートパソコンも展示されていた。日本人の意識としては、モバイルというより可搬性もあるデスクノートに近いが、Turion 64の採用事例は確実に増えている

クローラン氏は今後のモバイル向けプラットフォームのロードマップも提示した。それによると、2006年のモバイル向けCPUは、デュアルコア、デュアルチャネルDDR2対応、仮想化技術、熱/電力管理機能の強化などが盛り込まれるという。さらに先では、新しいモバイル向けコア(詳細についてはコメントせず)、DDR2/3対応、セキュリティー機能の実装などが計画されている。

AMDによるモバイル向けプラットフォーム(CPU、チップセット、無線LAN)のロードマップ
AMDによるモバイル向けプラットフォーム(CPU、チップセット、無線LAN)のロードマップ

またチップセットベンダーが2006年に投入する同分野向けチップセットは、内蔵グラフィックス機能がWindows Vistaの新しいユーザーインターフェース用ビジュアル効果“AeroGlass”をサポートできる機能を備えるほか、“Display Cache”と呼ばれる表示関連機能も備える。またSATA IIや無線LAN(IEEE 802.11a/b/g/n)も標準で搭載する。

Display Cacheが求められる背景には、AMD64アーキテクチャーではメモリーコントローラーがCPU側に搭載されるため、メインメモリーがチップセットではなく、CPUに接続されている点がある。チップセット内蔵グラフィックス機能(GPU)を使う低〜中価格のパソコンでは、ビデオメモリーをメインメモリー内に確保する。メインメモリーがチップセットに接続される形態(インテル社のアーキテクチャー)ならば、チップセット内GPUはメモリーに短いレイテンシーでアクセスできる。しかしCPUにメモリーが接続されるAMD64では、チップセット内GPUはCPUを経由してのメモリーアクセスしかできず、パフォーマンス面でハンデを抱えることになる。これを解決するために、“ローカルフレームバッファ”と呼ばれる小容量(16〜64MB程度)のメモリーをチップセットに接続する形で実装する製品もあるが、結果としてコストの増加につながるので、チップセット内GPU使用による低コスト化のメリットがなくなる。Display Cacheの仕組みの詳細については語られなかったが、チップセット内に小容量メモリーを搭載して、描画に必要な画面データを蓄積し、表示時にはそのメモリー内からデータを読み出して表示することで、メインメモリーにアクセスするロスを省いて、表示を高速化できるという仕組みのようだ。メモリー量が少ない分、ロスレス圧縮の機構(Lossless compression engine)を搭載して、画面データを圧縮保管することも可能なようだ。

チップセット内GPUのみ、ローカルフレームバッファ、Display Cacheの違い
チップセット内GPUのみ、ローカルフレームバッファ、Display Cacheの違い

クローラン氏が「来年力を入れたい」として紹介したのが、日本で開発されたモバイルノート向けプラットフォームである。同社は今年初めに、日本にジャパンエンジニアリングラボ(AMD JEL)と呼ばれる組織を設立。モバイル向けCPUの機能やスペックの設定、ユーセージモデルの研究、薄型(Thin&Light)ノート用放熱機構の研究開発、さらにモバイル向けベンチマークや消費電力解析といった、モバイルノート開発に関わるさまざまな要素の研究を行なってきたという。そのAMD JELが最初に取り組んできたのが、“Yamatoプロジェクトと呼ばれる”次世代のモバイルノート向けプラットフォームの研究であり、その最初の成果が、前掲の写真にある“Yamato”である。

Yamatoについて説明する、日本AMD ジャパンエンジニアリングラボ所長の福井健人氏
Yamatoについて説明する、日本AMD ジャパンエンジニアリングラボ所長の福井健人氏

Yamatoは重量にして2kg前後かそれ以上のモバイルノートをターゲットにしたもので、AMD製CPUと米エヌビディア社(Nvidia)製のGPU内蔵チップセット、さらに液晶ディスプレー(Yamatoでは15インチ/1920×1200ドット)やHDD、光ディスクドライブ、無線LAN機能、電源とバッテリーなど、ノートパソコンに必要なコンポーネントすべてを組み上げて構成されている。AMDはノートパソコンメーカーに、Yamatoの回路図やレイアウト、ファームウェアなどを提供する。これによりノートパソコンメーカーは、AMD CPUベースのノートパソコンの開発期間・コストを縮小でき、短期間で市場に投入できるというメリットがある。Yamatoの開発にはAMDとNvidiaに加えて、日本アイ・ビー・エム(株)も共同開発に名を連ねている。

Yamatoの概要説明図。ノートパソコンに必要なコンポーネントがすべて用意されている
Yamatoの概要説明図。ノートパソコンに必要なコンポーネントがすべて用意されている
Yamatoデモ機のマザーボード。左の黒いファンの下にCPUがあると見られる。チップセットはNvidia製。カードスロット類も備わっている
Yamatoデモ機のマザーボード。左の黒いファンの下にCPUがあると見られる。チップセットはNvidia製。カードスロット類も備わっている

デモ機のCPUの仕様は公開されなかったが、Yamatoでは2006年前半に投入予定という次世代のモバイル向けCPU、“デュアルコアTurion 64”の搭載を前提としている。またバッテリー駆動時間は5時間を念頭に置いているとのことだ(デモ機はバッテリーではなく、AC電源で駆動)。

日本AMD ジャパンエンジニアリングラボ所長の福井健人(ふくい たけと)氏は、Yamatoのパフォーマンスデモをいくつか披露した。1つのフルHD解像度のWMVビデオを再生しながら、同時にMPEG-2ビデオを再生しても、コマ落ちどころかCPU消費率は50%程度しか消費されていない様子や、最近のパソコンでも荷が重い高解像度のH.264ビデオ映像をデコードしても、CPU消費率が40〜70%程度に止まる様子などを示して、Yamatoのパフォーマンスが非常に優れたものであることをアピールした。

Yamatoのパフォーマンスデモの1つ。バックでWMV HDの映像を再生しつつ、手前でMPEG-2ビデオを再生している。左側のCPUメーターは、50%程度の負荷に止まっている
Yamatoのパフォーマンスデモの1つ。バックでWMV HDの映像を再生しつつ、手前でMPEG-2ビデオを再生している。左側のCPUメーターは、50%程度の負荷に止まっている
高解像度のH.264デコードのデモ。現在最高速クラスのCPUでもきつい処理だが、Yamatoのデモ機は楽にこなしていた
高解像度のH.264デコードのデモ。現在最高速クラスのCPUでもきつい処理だが、Yamatoのデモ機は楽にこなしていた

Yamatoがターゲットとしているのは、モバイルノートと言っても日本で言うB5モバイルクラスではなく、重量2kg前後でA4サイズのパフォーマンス重視型モバイルノートや、それより大きいサイズのThin&Lightノートなどである。デスクトップパソコン並みのパワフルさをどこにでも持ち歩けるため、パワーユーザーやビジネスユーザーに人気のジャンルだ。同ジャンルにはインテルも、モバイル向けデュアルコアCPU“Yonah”を搭載する“Napa”プラットフォームを2006年の早期に投入する意向を示している。モバイル分野ではややインテルに出遅れた感もあったAMDの巻き返しにより、2006年のモバイルノート市場は多彩な製品の登場でおもしろくなりそうだ。

(編集部 小西利明)


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