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メタリンク、IEEE 802.11nの動画転送デモを実施

2006年03月08日 19時37分更新

文● 編集部 小林久

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イスラエルのメタリンク(Metalink)社は8日、IEEE 802.11n対応の無線LANチップセット“WLANPlus”を利用したビデオ転送のデモを行なった。昨年5月に発表されたRFチップ『MtW8150』と8月発表のベースバンド/MACチップ『MtW8170』を利用し、3本同時に流されたMPEG-4のビデオストリームをリビング、バスルーム、寝室の3ヵ所で受信するというもの。

ボリンスキー氏
デモを行なったボリンスキー氏

Mt8150/8170は、IEEE 802.11nのドラフト仕様に盛り込まれた“MIMO”(Multiple Input Multiple Output)技術に対応。物理速度は最大243Mbpsとなっている。通信には送信2本、受信3本のアンテナを使う2×3システムを採用。受信用アンテナのスイッチングにより、アクセスポイントから離れた状態でも速度を落とさずに通信が行なえるという(国内では40MHz帯が使用できないため、物理速度は最大135Mbps)。同社のベンチマークでは、半径20m程度離れた状態で、アプリケーションが実際に利用できる実質的なスループットは70Mbps程度。IEEE 802.11aの10Mbps程度を大きく上回る結果となっている。

チップ ドングル
大きい方がベースバンド/MACチップ、小さい方がRFチップアクセスポイント(ドングル)。Mini PCIカードを内蔵している

現在入手可能なMt8150/8170は、ともにセットメーカーの開発試作をターゲットにした第1世代の製品。フォームファクターはMiniPCIで、ドングルと呼ばれるアクセスポイントタイプの製品もある。

11nの普及期 スループット デモの構成
2007年の正式仕様確定後、11nの普及は急速に進むとみられるスループット。右の実質的なスループットがより重要になるデモの構成。3つの部屋で異なる、MPEG-4ファイルを受信する

メタリンクでは、今年の後半には量産製品への搭載をターゲットにした第2世代の製品、2007年後半にはローコスト版の第3世代製品をリリースする予定。第2世代では、第1世代がサポートしていた5GHz帯に加え、2.4GHz帯もサポートし、IEEE 802.11a/b/g規格との相互運用性も確保される。製造ルールも0.18μmから90nmに変更され、現状2チップのベースバンドチップも1チップになる。これにより、30~40%の低消費電力化が図れるという。

価格は20ドル(約3400円)以下。現状で予定されているフォームファクターはMiniPCIのみで、USB、Ethernet、PCI Expressなどは派生物として市場の動向を見ながら採用を検討する。PCI Expressに関しては、第3世代以降の製品でサポートしていく方針だという。

デモ風景 11g
部屋は半径10~15mの範囲で、戸を閉め、10人程度の人がいたが、合計で50Mbps程度のスループットは出ており、映像もとぎれなく再生されていた同じ環境で同一ソースを11gで送受信したところ。通常でもジッターが発生していたが、別室で電子レンジをつけると、さらにジッターが多く発生してしまい、使用に耐えない状況となった

IEEE 802.11nに対応した無線LANチップセットとしては、米アセロスコミュニケーションズ社も1月に3×3の通信に対応した『AR5008』を発表している。今回デモを行なった、メタリンク家庭用ブロードバンド製品担当副社長バリー・ボリンスキー(Barry Volinsky)氏は、記者の質問に対して「アセロスは3×3を標榜しているが、やりとりするデータストリームの数は300Mbpsという転送速度から分かるように2×2と同じ2本。本来の3×3を実現するためにはコストがかかるもので、市場を混乱させているのではないかとすら思える」と辛口にコメントした。

ただしボリンスキー氏は「とはいえ、アセロスの製品が悪いとは言っていない。メタリンクの製品がよりよいというだけだ。チャレンジングな企業は歓迎すべきであり、11nのチップベンダーは4~5社という状況を考えても共存できると思う」とも述べた。

アセロスでは、3×3(送信3本、受信3本)アンテナで2つのデータストリームを送受信し、さらに通信の冗長化も行なう(Signal-Sustain Technology:SST)。対するメタリンクは、2×3(送信2本、受信3本)の構成となっており、受信側はアンテナがブロックされた際に別のアンテナにスイッチして、MIMO通信を継続するために利用している。3×3は2×3より高い製造コストがかかる反面、パワーアンプなどの追加も必要になる。一方で転送速度もそれほど向上しないというのがメタリンクの主張。

ボリンスキー氏はSSTに関しては「プロダクトが出ていない段階であり、何とも言えない」と前置きしたうえで、「パフォーマンスもコストもデモを目で見ないと分からない。比較できた時点でホワイトペーパーなどを公開したい」とした。

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