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Tzero、HDMI機器を無線化するUWB通信ソリューションを発表

2006年09月11日 18時03分更新

文● 編集部 西村賢

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パソコン業界でUWB(Ultra Wide Band)といえば、Wi-Fi(無線LAN)の数倍という高速データ通信とか、“ワイヤレスUSB”といったことが話題になるが、UWBにはパソコンの周辺機器よりも、はるかに大きな応用市場がある。AV機器やゲーム機の接続を無線化する市場だ。

2万円前後の機器でハイビジョン映像を安定して無線化

米Tzeroテクノロジーズ社は11日、UWBを利用してHDMI機器を無線接続するワイヤレス機器をアナログ・デバイセズ社と共同で開発したと発表した。10m以内であれば、HD映像を3本以上同時に伝送する容量をもつ。HDTV、DVDプレーヤー、セットトップボックス、次世代ゲーム機などで利用できる。

デモ機材 映像デモ
リファレンスボードを搭載したデモンストレーション用機材DVDレコーダーと接続したデモンストレーション

開発されたチップが対応する映像フォーマットは480i/480p/720i/720p/1080i。著作権保護技術のHDCP(High-bandwidth Digital Content Protection System)にも対応する。送信側でいったんHDCPは解除され、無線通信経路は128bitのAESで暗号化。受信側で再びHDCPを付加してHDMIコネクターに映像を出力する。

現在、組み込み用チップの本格生産をはじめ、サンプル基板の出荷を開始している。家電メーカーやゲーム機メーカーにOEMでモジュールを提供するほか、単体のパッケージ製品としても市販。送受信の対向で使える市販セットは12月ごろに200ドル(約2万3400円)以下で出荷予定という。今後量産と普及が進み、単価が下がれば、DVDプレーヤーや液晶テレビに送受信モジュールが内蔵された形で販売される可能性もあるという。

今回のモジュールはUWBの通信チップと、アナログ・デバイセズが開発した画像圧縮チップで構成される。圧縮にはMPEG-2/-4やH.264といった動画コーデックを用いず、JPEG2000を使う。JPEG2000を使うメリットとしてアナログ・デバイセズのアドバンスドTVセグメント ディレクターのビル・バックレン(Bill Bucklen)氏は処理の軽さを指摘。「MPEG-4に比べて圧縮率は約半分だが、画像フレームごとのシンプルな圧縮であるため、チャンネルの切り替え時に待たされたり、エラー発生時に画面にブロックノイズが出て、その影響が多数のフレームに及ぶことがない」と説明する。MPEGで問題となる音声と映像の同期でも有利で、「MPEGのようなコーデックは、エンコードは1度だけで、あちこちで何度も繰り返しデコードされることを想定した規格。処理が重く、リアルタイムでMPEGのエンコード処理をするには5万ドルの機材が必要」と述べ、DVDや放送には向くが家庭向けデバイスに向かないという。

Tzeroが利用するのは3.1~4.8GHz帯の電波。この1.7GHz幅のうち、1.1GHz分は日米で共通して使える周波数帯だ。すでに総務省の試験をパスし、現在は認可待ちの状態だという。同社の無線技術について、Tzeroテクノロジーズ副社長のダン・カール(Dan Karr)氏は「有線のHDMIとほぼ同等のパケットエラーレート」だと説明する。「Wi-FiやワイヤレスUSBなどのデータ通信では100パケットあたり8個のエラーが発生する。メールの送受信やウェブブラウジングはそれで問題ないが、映像では問題となる。Tzeroではエラーレートは1億分の1、つまり2時間の映像で1個のパケットロスしか発生しない計算」。またUWBは、Wi-Fiで避けられない“マイクロスコピック・フェーディング”と呼ばれる現象とも無縁だという。マイクロスコピック・フェーディングとは電波の到達エリア内であるにも関わらず通信が1~5秒途切れる現象。20MHz幅で通信を行なうWi-Fiでは避けられないが、1GHzに及ぶ広い領域に信号を拡散して伝送するUWBでは問題とならないという。送受信に複数アンテナを使い、伝送経路を多重化するMIMO(Multi Input Multi Output)技術も応用されている。

エラーレート比較図
Tzeroの無線チップは高速でエラーレートが低いという
ダン・カール氏 ビル・バックレン氏
Tzeroテクノロジーズ マーケティング&セールス担当上級副社長ダン・カール氏アナログ・デバイセズ アドバンスドTVセグメント ディレクター ビル・バックレン氏

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