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HDMIライセンシング、最新規格“HDMI 1.3”をデモ――CES 2007に対応機器が出展

2006年11月10日 21時53分更新

文● 編集部 小西利明

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HDMI 1.3でサポートされる“Dolby TrueHD”のデモの様子
HDMI 1.3でサポートされる“Dolby TrueHD”のデモの様子

家電機器向け映像/音声伝送インターフェース規格“HDMI(High-Definition Multimedia Interface)”の標準化組織である米HDMIライセンシング社は10日、東京都内にて報道関係者向けの説明会を開催。HDMI 1.3の特徴を解説すると共に、映像や音響に関するデモを披露した。

HDMI 1.3の主な特徴については、こちらの記事を参照していただきたいが、要約すると以下のとおり。既存のHDMIから色と音の表現力を大幅に強化したのがHDMI 1.3と考えればよい。コンシューマー向けのデジタル機器では、11日発売予定の『プレイステーション 3』が対応する。

     
  • 帯域幅の倍増(4.95Gbpsから10.2Gbpsへ)により、“色深度が現行の8bitから10/12/16bit(RGBまたはYCbCr各色)へ増加し、色の再現性が大きく向上(ディープカラー)。
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  • リフレッシュレートが1080p時に60Hzから120Hzへ増加。
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  • 映像と音声の同期(リップシンク)調節機能搭載。
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  • 高精細・多チャンネルのオーディオ規格Dolby TrueHDに対応。

HDMI 1.3の映像面の特徴について説明した米Silicon Image社 戦略的事業開発部門 統括責任者のブレット・ゲインズ(Brett Gainss)氏は、まずHDMIに関する市場概況について述べた。導入企業は2006年第3四半期で462社。対応機器は「本格的な成長」を記録したという2006年度だけで、約6000万台が出荷されるなど(いずれも世界全体)、HD品質の映像を扱うデジタル映像機器の急増により、デファクトスタンダートの地位を確立した現状を紹介した。2009年には5億台以上が出荷されると見込んでいる。市場セグメント別では、デジタルTVの伸びが台数ベースで最も多いのは当然として、パソコン市場の増加も今後は急速に進むとしている。

米Silicon Image社 戦略的事業開発部門 統括責任者のブレット・ゲインズ氏 市場セグメント別のHDMI対応機器の出荷台数予測。2006年時点ではごくわずかなパソコン市場だが、急拡大が見込まれている
米Silicon Image社 戦略的事業開発部門 統括責任者のブレット・ゲインズ氏市場セグメント別のHDMI対応機器の出荷台数予測。2006年時点ではごくわずかなパソコン市場だが、急拡大が見込まれている

映像に関する技術面については、前述のディープカラーに重点を置いた説明が行なわれた。現行HDMIの各色8bitの色深度は、特に暗めのグラデーション表現に弱く、色が縞模様状に変化して見える“カラーバンディング”が顕著である。HDMI 1.3では10/12/16bitがサポートされたが、10bitではバンディングをなくすのに十分でなく、12bit以上が必要になるということだ。

ディープカラーの利点についての解説。現行のDVDやHDMIの階調表現の少なさが、12bit以上のディープカラー対応で大きく改善する
ディープカラーの利点についての解説。現行のDVDやHDMIの階調表現の少なさが、12bit以上のディープカラー対応で大きく改善する

ディープカラーの映像表現についてのデモは、PowerMac G5と米Cine-tal社製の10bit映像に対応した24インチ液晶ディスプレー『Cine-tal2122』を2系統のHD-SDIで接続。さらに、同ディスプレーからDVI経由でデル(株)の24インチ液晶ディスプレーを接続。同じ映像をCine-tal側では10bit、デル側では8bitで出力して、表現力の違いを見るという方法で行なわれた。まずグラデーション表示のバンディングの有無の差は顕著で、8bitでは離れたところからでも暗めの部分にバンディングがはっきりと見えるが、10bitではほとんど目立たない。しかしよく見るとまだバンディングがあるのは分かる。12bit以上が必要という論拠を示した形だ。

ディープカラーのデモ環境の構成。HDMI 1.3の代わりに、スタジオ等で利用されているHD-SDIで出力している
ディープカラーのデモ環境の構成。HDMI 1.3の代わりに、スタジオ等で利用されているHD-SDIで出力している
少女の顔の陰影や背景の芝生の色表現が大きく異なる 10bit側では犬の顔の陰影やディテール表現も正確だ 画面右側の船の帆の色は濃い緑色だが、8bit側では黒くつぶれている
少女の顔の陰影や背景の芝生の色表現が大きく異なる10bit側では犬の顔の陰影やディテール表現も正確だ画面右側の船の帆の色は濃い緑色だが、8bit側では黒くつぶれている
10bit(左)と8bit(右)での映像表現の違い

上の写真は10bit対応のソニー(株)製カムコーダーで撮影された映像を、10bitと8bitで表示して比較したものだが、明暗の表現の差は歴然としている。8bitでは暗部のディテールが潰れたり、暗い緑色が黒に見えてしまったりしているが、10bitではいずれも本来の色やディテールが見えている。

Silicon ImageではBlu-rayディスクプレーヤーおよびHD DVDプレーヤー用に設計されたHDMI 1.3互換の12bit色深度/1080p/60Hz対応のトランスミッターやレシーバーを開発しており、すでに供給可能としている。

Silicon ImageのHDMI 1.3対応トランスミッター/レシーバーを使った対応機器の構成図
Silicon ImageのHDMI 1.3対応トランスミッター/レシーバーを使った対応機器の構成図

オーディオ面については、米ドルビーラボラトリーズ社からコンシューマーエレクトロニクス担当シニアマネージャーのクレイグ・エッガース(Craig Eggers)氏が説明とデモを行なった。HDMI 1.3では豊富な帯域を使い、オーディオについてもよりビットレートの高いDolby TrueHDに対応する。まずエッガース氏はDVDで一般的な“Dolby Digital”や、その上位の規格でBlu-rayディスクやHD DVDでサポートされている“Dolby Digital Plus”とTrueHDを比較。ロスレス圧縮によりスタジオマスターと同品質(bit for bit)を実現するとした。ビットレートは最大18Mbpsにもなり、現在は7.1チャンネルまでだが、将来的には13.1チャンネルまでのサラウンドオーディオを実現する。

米ドルビーラボラトリーズ コンシューマーエレクトロニクス担当シニアマネージャーのクレイグ・エッガース氏 各デジタルオーディオ規格のビットレートと対応チャンネル数の違い。Dolby TrueHDは384kbpsから最大18Mbpsの広いバンド幅を持つ
米ドルビーラボラトリーズ コンシューマーエレクトロニクス担当シニアマネージャーのクレイグ・エッガース氏各デジタルオーディオ規格のビットレートと対応チャンネル数の違い。Dolby TrueHDは384kbpsから最大18Mbpsの広いバンド幅を持つ

将来のDolby TrueHD対応オーディオ機器では、TrueHDのソースをPCMやSPDIF出力向けの5.1チャンネルにデコード→エンコードして出力する経路のほかに、True HDのデータを直接HDMI 1.3経由で出力する経路を備えることになる。

披露されたデモでは、Dolby Digital PlusとTrueHDで同じライブの映像を流し、その音響表現の違いを披露した。ギターのストリングの鳴る音やドラム、シンバルの響きの微妙な部分まで表現されるなど、高ビットレートならではの迫力あるサウンドが体感できた。HDMI 1.3に対応する機器は、2007年1月に米国ラスベガスで開催される家電関連の総合展示会“2007 International CES”にて、各社から出展されるもようだ。

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