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松下電池工業、独自の安全技術を取り入れた高容量リチウムイオン電池についての説明会を開催

2006年12月19日 19時46分更新

文● 編集部 小西利明

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松下電池工業が開発した高容量リチウムイオン電池を使用した、ノートパソコン用バッテリーパックのサンプル 通常のリチウムイオン電池の極板(上)と、新しい安全技術によるHRL極板
松下電池工業が開発した高容量リチウムイオン電池を使用した、ノートパソコン用バッテリーパックのサンプル通常のリチウムイオン電池の極板(上)と、新しい安全技術によるHRL極板

松下電器産業(株)の子会社である松下電池工業(株)は19日、東京都内にて記者説明会を開催し、18日に発表した“安全技術を搭載した高容量(2.9Ah)リチウムイオン電池の本格量産体制確立”についての説明を行なった。同社が開発した耐熱層(HRL)を形成したセパレーターを使用することで、高容量リチウムイオン電池の熱暴走・発火事故の原因であるセパレーター内の不純物による電池内部でのショート(内部短絡)が発生しても、発熱を抑えることでショートが損傷~発火につながらない工夫を凝らしている。

説明会の冒頭で挨拶を述べた同社取締役社長の石田徹氏は今回発表のリチウムイオン電池について、高容量化を実現する電池内の正極材料の開発と、安全性の技術開発の2つの技術が重要であったと述べた。また安全技術については今回発表の新電池だけでなく、2.6Ah未満のリチウムイオン電池にも導入していくとしている。

松下電池工業 取締役社長の石田徹氏 同社 技術開発センター所長の生駒宗久氏
松下電池工業 取締役社長の石田徹氏同社 技術開発センター所長の生駒宗久氏

技術面からの説明を担当した、同社技術開発センター所長の生駒宗久氏は、まず発火事故の背景となっているリチウムイオン電池の高容量化の実情を述べた。それによると、特にノートパソコンで使用される円筒型の需要は引き続き拡大を続けるという。特に2.6Ah以上の高容量電池は大きく普及を拡大し、現在の円筒型リチウムイオン電池の出荷割合12%から、2010年には半分以上(54%)を占めるまで拡大するとの同社の予測を示し、今後も高容量化へのニーズは高まり続けるとした。

同社による円筒型リチウムイオン電池の容量別出荷数予測。2.6Ah以上の高容量帯が大きく拡大すると見ている 米国での電池に関するリコール件数の推移を示すグラフ。高容量化に合わせるようにリコールも増加している
同社による円筒型リチウムイオン電池の容量別出荷数予測。2.6Ah以上の高容量帯が大きく拡大すると見ている米国での電池に関するリコール件数の推移を示すグラフ。高容量化に合わせるようにリコールも増加している

こうした高容量化へのニーズの高まりの一方で、高容量リチウムイオン電池に対するリコールの件数も大幅に増大していると生駒氏は述べた。そして、リコールの要因となる障害を4種類挙げたうえで、電池内部でのショートは他の要因とは異なり、システム面での保護がかけられないという課題があるとした。電池内部でのショートの要因は、電池内部の正極と負極の間に挟まれた薄い絶縁層(セパレーター、素材は合成樹脂のポリオフィレン)内に導電性の異物が混入してしまうことで、絶縁層を貫通して正負極間でショートが発生。ショートによる熱が熱に弱いセパレーターを溶解させて、絶縁層としての機能を失わせ、さらなる発熱~発火に至ってしまう。そこでリチウムイオン電池の製造企業では、異物の混入を防止する対策やセパレーターの強度向上などの対策をとっている。しかし生駒氏は異物混入防止対策には、設備・工法上の限界があるとし、アプローチを転換して“異物が混入しても熱暴走しない”ための安全技術の開発を行なったという。

リチウムイオン電池の内部短絡の原因と、同社の対策を示すスライド。セパレーターを混入異物が貫通して、正負極間をショートさせる
リチウムイオン電池の内部短絡の原因と、同社の対策を示すスライド。セパレーターを混入異物が貫通して、正負極間をショートさせる

新しい安全技術では、セパレーターの表面に絶縁性金属酸化物による層“HRL(Heat Resistance Layer)”を形成(生駒氏は「塗る」と表現した)することがポイントとなっている。絶縁性を持ち耐熱性にも優れたHRL層でセパレーターを補強することで、仮にセパレーター内に異物が混入していてショートが発生したとしても、熱の発生を極限してそれ以上広げないことで、熱暴走を防ぐのだという。HRL層は厚さにして数μmとのことで、HRL層が付加される分だけセパレーターを薄くしているという。

従来型のセパレーターと、HRL層を加えたセパレーターの違い。耐熱・絶縁性に優れた層を加えて、ショート時の発熱を抑える
従来型のセパレーターと、HRL層を加えたセパレーターの違い。耐熱・絶縁性に優れた層を加えて、ショート時の発熱を抑える

HRL層を加えたことにより、従来のリチウムイオン電池より若干のコスト高にはなるとしたうえで石田氏は、「(高容量に加えて)安全性も含めた性能をユーザーに理解していただきたい」と述べ、コストアップに見合ったメリットがあるとの見解を示した。

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