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【INTERVIEW】萩野正昭ボイジャー社長に訊く、同社の模索するビジネスモデルとは?

1998年06月11日 00時00分更新

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----萩野さんは、(株)ボイジャーの社長業の傍ら、季刊『本とコンピュータ』の副編集長を務めておいでですね。
       
萩野氏「はい。映画やレーザーディスクなど動画を扱う“テレビ的視点”から、電子出版テキストを中心とした“本”へと視点を移してきました。電子出版へのアプローチにはいろいろありますが、そのひとつがWeb上ですべてを快適に解決する“on screen project”の実現です。そこで6月21日にデジタルテキストを軽快に読むためのツール『T-Time』を発売します。これを使うことによって、HTMLのデータを好きなように段落付けし、縦書き・横書き、段組、書体の設定など自由にレイアウトをすることができます。
 例えば、6月19日は、太宰治ファンにとっては重要な日なのですが、何の日か知っていますか? この日は50回目の桜桃忌、つまり太宰の死後、ちょうど50年が経過した日です。著作権は著者の死後50年で消滅するので、この日から太宰の小説を誰でも自由に出版したり、Web上に公開したりすることが可能になります。
 太宰に限らず、ボランティアや趣味で入力された文学作品や論文が世の中に大量に存在します。そのため、一部にはプロの手で非常に見やすくレイアウトされたWebが存在するものの、一方では読む気が喪失してしまうようなレイアウトも存在しています。だからこそ、この『T-Time』が必要です。デジタルテキストをオン・スクリーンで読むことで、プリントアウトによる資源、時間のムダがなくなる“電子の紙”の実現といったところでしょうか」

----その“on screen project”には、テキスト以外を対象とした取り組みもあるのですか?

萩野氏「ええ。最近では疲れた体を音と画像が癒してくれるアートタイトル『Cluster Works』の販売も行なっています。マウスを動かすとモニター上のドットが不思議な模様とサウンドを奏でるCD-ROMです。“MACWORLD Expo”で800部売れたという実績から商品化しました。パッケージに羅列されている様々な作品を、オンラインでバラ売りもしています」

----ボイジャーでは、このようなマルチメディアタイトルの多くを、書籍で言えば専門書のように数千部という単位のビジネスモデルで考えていらっしゃるのでしょうか。

萩野氏「最近のゲームや映画などは、多額の資金を投入し大規模で、完成度の高い物を大量に売る。これと対極になりますが、小粒であってもピリッと辛みの効いた、数千本でも採算の採れるようなタイトルを売っていくという方法もあります。それには数十万円から数百万円の投資で、数千本単位の市場を確実に握るための販路の確立が必要です」

----デジタローグとの合弁会社によるオンライン販売など、流通に関してもいろいろ新しい試みをされているようですが。

萩野氏「ええ。現在では、SONY流通、ソフトバンクに代表されるPCソフトの卸、書籍流通、中堅書籍取次によるマルチメディア専門卸などのように、様々な読者を捉える流通チャネルが、形を成してきています。本のビジネスモデル対テレビや映画のビジネスモデルという図式の中で、本派のアプローチが成立しうることが証明されたと思っています」

(報道局 篠田友美)

http://www.voyager.co.jp/

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