【INTERVIEW】「『QuickBooks(クイックブックス)』日本語版を発売できることは大きな喜び」米インテュイット社James J. Heeger上級副社長
1998年08月20日 00時00分更新
中小企業向けの会計ソフトの開発販売を行なうインテュイット(株)は4日、SOHO向け経理ソフト『QuickBooks(クイックブックス)』日本語版を発表した。10月2日に発売される同製品は、親会社である米Intuit(インテュイット)社の製品を日本向けのローカライズした製品。
米インテュイット社の日本法人であるインテュイット(株)は、日本マイコン(株)と(株)ミルキーウェイが'97年5月に合併した会社であり、会計ソフトメーカーとしての実力を備えている。米での実績と日本での実力をあわせもった『QuickBooks』日本語版。日本でもトップシェアを目指すという米インテュイット社のJames
J. Heeger(ジェームズ・J・ヒーガー)上級副社長にお話を伺った。
----『QuickBooks』とはどのようなソフトですか。
「中小規模の事業者が迅速に経理業務を行なうことのできるソフトです。米で'92年に最初の製品を発売し、現在は中小事業者向け経理ソフトの約81パーセントのシェアを占めています。また、ドイツ、イギリスでも好評をいただいております」
米インテュイット社上級副社長James J. Heeger(ジェームズ・J・ヒーガー)氏 |
----『QuickBooks』を日本で発売する理由は?
「米では約200万本のユーザー登録があります。米には約2000万社の中小事業者がおり、その60パーセント程度がPCを導入しています。このうち半分ほどが何らかの会計ソフトを使っています。200万社くらいが『QuickBooks』の、300万社くらいが『Quicken』のユーザーです。日本にも非常に多くの中小規模の事業者がおり、大変有望な市場だと考えています。数十万社、100万台のPCに『QuickBooks』日本語版を載せていきたいです」
----7月25日にマイクロソフトから『Microsoft Money』日本語版が発売されましたが、今回の発表はこれと何らかの関係があるのでしょうか。
「別段関係があるわけではありません。マイクロソフトの『Microsoft
Money』は個人向けの商品ですが、『QuickBooks』は中小事業者向けの製品です。顧客層が違っていますし、目的も違っています。『Microsoft
Money』は個人の資産管理を行なうもの、『QuickBooks』は会社の売買掛管理などを行なうためのものです」
----『QuickBooks』の特徴は。
「製品のコンセプトが斬新であることや、セットアップも使用するのも簡単に行なえること、会計知識を必ずしも必要としないことです。簡単だといっても低機能なわけではなく、奥のほうに高度な機能も隠されていて必要に応じて使用できるものです」
『QuickBooks(クイックブックス)』日本語版 |
----QuickBooksの知名度を上げるためにどのようなプランを用意していますか。
「米では口コミによって知名度があがっていきました。会計士や税理士がいいものだと顧問先に薦めてくれたことや、店頭で店員が薦めてくれたことが大きかったようです」
「日本では広告を打つほかに、製品の出荷前に体験版を配布します。ユーザーに実際に使ってもらって良さをわかってもらうのが一番ではないかと考えています。また、製品を説明するスクリーンセーバーを制作して、これを店頭で動かして宣伝を行ないます」
----日本語版は日本向けに独自に開発したものですか。
「元になるソースコードは米製品のものを使用し、これを日本の開発スタッフが日本語化などのローカライズを行ないました。商習慣や会計規則が違うのでローカライズは必ず要ります。ある地域に製品を投入するときに、その地域のことを熟知した人がローカライズを行なっているのが我々の強みです。例えばマイクロソフトのWordやExcelはどこの国へ持っていっても同じインターフェースです。『QuickBooks』日本語版は、日本でよく使われる帳票に合わせたインターフェースにローカライズしています。『QuickBooks』のような製品はローカライズを強く必要とするものですから、当然アプローチの仕方も違ってきます」
----日本法人を設立した理由は?
「日本は米国以外では最大の市場で、大変魅力的、かつ期待している市場です。しかし、商習慣の違いなど壁が高いとも感じていたのでヨーロッパに対して行なったものとは違うアプローチを取りました。その際に考えたことは、日本では小規模向けの市場がポテンシャルが高いということ、そして日本の市場を良く理解した有力なパートナーが必要だろうということでした」
「元CEOのビル・キャンベル(Bill V. Campbell)は日本でのビジネスの経験を多く持っています。これを発揮してパートナーを探していましたが、その際に融合した、日本に根付いた法人の必要性を感じました。そこで2年ほど前に当時で約6000万ドルでミルキーウェイを吸収し、さらに日本マイコンを吸収しました。全部で約1億ドルかかりましたが、両社を吸収することで東京のミルキーウェイのセールス、マーケティング力を、大阪の日本マイコンの製品力を併せ持つ会社にすることができました」
「『QuickBooks』の日本への投入は日本法人を設立するころから考えていました。米でも大きな成功を収めた製品でもあり、『QuickBooks』がターゲットとするユーザーは日本においてポテンシャルが高い市場だと考えていたからです」
----『Quicken』を日本の市場に投入するお考えはありますか。
「今はその予定はありません。検討はしましたが、日本の市場にはあわないだろうというのが私たちの結論です。『Quicken』はもともと小切手を使うことを前提としたソフトなので、日本には適さないと結論しました。米では『Quicken』はパーソナルファイナンスのソフトとして拡張していき、“Quicken.com”(米インテュイット社の運営する個人の資産運用のための情報を提供するWebページ)になりました。日本でも金融ビッグバンで個人の資産運用が盛んになれば“Quicken.com”のようなサービスも考えていきます」
----日本の読者へのメッセージを。
「我々の『QuickBooks』という製品を日本に紹介できることをうれしく思います。『QuickBooks』が日本の市場で大いに活用されることを期待しています」
聞き手:月刊アスキー 笹川達也
構成:報道局 植草健次郎
インタビュー日:8月4日
場所:全日空ホテル
・インテュイット(株)
http://www.intuit.co.jp/
・米インテュイット社
http://www.intuit.com/
・関連記事
http://www.ascii.co.jp/ascii24/issue/980804/soft02.html
[このインタビューの詳細は9月18日発売の『月刊アスキー 10月号』に掲載されます]