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「専用回線経由の侵入が多い」--ten6/d'Boxセミナー“ウェブを越えて…”

1998年12月08日 00時00分更新

文● 正月孝広

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 大阪市北区天神橋に、“ten6/d'Box”と呼ばれる阪急系列の施設がある。デジタルクリエーターのための共同オフィスである。この“ten6/d'Box”主催によるインターネットビジネスセミナーが2日、阪急電鉄本社ビルのエコルテホールで開かれた。会場には関西のウェブビジネスに携わるたくさんの参加者が詰め掛け、“ten6/d'Box”の影響力を強く感じさせた。

エコルテホール
エコルテホール



 プログラムとして、『とくとくページ』で有名な山本恭弘氏をゲストに迎えるなど多彩なセッションが用意されていた。しかし、持ち時間が短く全体的に駆け足になってしまったのは残念であった。なお山本氏は、“ten6/d'Box”の入居者でもある。

「独自ドメインの取得が必須」

爆発的人気サイト『とくとくページ』を運営する山本恭弘氏のテーマは“アクセス数を飛躍させる‘技’”。

話は、'95年7月に開設してから現在に至るまでを丁寧にトレースし、ポイントの部分を解説するという形で展開した。有名にする技が気になるが、これに関して、5つの基本に集約されると述べた。“手作り感・自己主張”、“応援者の確保”、“メディアをまたぐ広報”、“マスコミの利用”、“欲望の刺激”--である。それぞれを詳細に解説した。

とくとくページ 山本恭弘氏とくとくページ 山本恭弘氏



特に興味深いのは、ホームページの広報(アナウンス)に関する山本氏の発言である。「インターネットのことはインターネットで」との固定概念を持つ人が多いが、実際にはその枠を越えた視点が大切でありるという。サーチエンジンの登録だけで満足するのではなく、新聞、雑誌に対する投稿やプレスリリースの送付など、既存のメディアを利用することも必要である。

また独自ドメインの取得は必須であるとも述べた。URLは短くてオリジナリティーのあるものほど覚えやすく、メモを取るなどの手間を強要させないので、訪問者の垣根を1つ外してあげることに繋がる。とくとくページでも独自ドメインを取得してからは飛躍的にアクセス数が向上したという。

そして広報に限らず、効果的な企画には、ウェブマスターのファンを作ることが必要であるとも指摘する。

質疑応答では、1日のサイトメンテナンスに費やす時間は--との質問が出た。その時間は、現在3時間前後。また、日常的な自己管理もウェブマスターには必要であると語った。

「専用回線経由の侵入が多い」

トランステックの川本俊行氏のセッションは、クラッカーに関するもの。前日の新聞記事から具体的な事例を実名で挙げる。その被害の実態を聞いて、会場内に緊張が走った場面もあった。問題はクラッキングを受けてもその事実に全く気が付かない企業が多いということである。

トランステック 川本俊行氏トランステック 川本俊行氏



気になるクラッキングは実際にどのような技術的手法で実行されるのか? 川本氏は、TCP/IPの仕組みから解説に移った。

一例として、次のようなやり口がある。TCP/IP上で動くアプリケーションにはポートという番号が決まっている(例えばWWWなら80番など)。目標にアクセスし、まず、このポートスキャンを実行し、セキュリティーホールなどを突いていくのである。

また意外なことだが、インターネット経由ではなく、社内の独自回線経由のアクセスの方が圧倒的に多いという。アクセスポイントとパスワードを調べ上げ、社員になりすましてネットに入ってくるのである。その後管理者の権限を取得し、社内データにアタックを開始する。

不正アクセスに関して、現状では法律上罰することが難しい。しかし今後は、法整備も進んでいくという。不正アクセスに関するウェブサイト『JPCERT/CC』も紹介した。

クラッキングへの対応策である。まず、管理者の怠慢、技術的知識の不足、ソフトウェアの未更新など、まず現状を見直し、改善していくことが重要である。また、アクセスログの管理解析や未使用のポートの閉鎖、ルーターのフィルタリングなども効果的である。そして定期メンテナンスとして第三者からの具体的なチェックも効果が大きいという。

インターネットには“光と影”の部分があるという川本氏。その影の部分を知識的技術的に把握することがサイト管理者には求められていると述べて、セッションを終えた。

「ウェブマスターがいないウェブも多い」

パネルディスカッションは、“ten6/d'Box”の入居者であるセンスオブワンダーの中西博氏が中心となって進行した。この日のテーマ“ウェブを越えて…”を中心にして進む。参加者は同じく入居者の7th-Artsの七田正明氏、ガイジンズの藤井智行氏、スタジオアイズの山口亜希氏の3名。中西氏は、ウェブ制作現場の生の声をテンポよく引き出し、ソフト、ハードの両面から問題点を鋭く指摘する。今一度現状を把握したうえで、今後の指針を探っていった。

センスオブワンダー 中西博氏センスオブワンダー 中西博氏



ウェブに対するクライアントの意識の格差は、企業によってどんどん開いているのが現状である。自社のウェブ制作の訂正をネット上ではなくファクシリでやり取りしている点、素材の提供があまりにも少ない点、担当のウェブマスターが不在である点--といった点にウェブに対する意識改革の必要を強く感じるという。

後半では、魅力ある海外のウェブサイトを多数紹介した。国内のウェブビジネスでは、先端技術よりもコミュニケーションの円滑さが重要になっていくと告げてディスカッションを締めくくった。

今回のセミナーの主宰団体であり、オフィススペースでもあるデジタルオフィス“ten6/d'Box”はオープンしてから1周年を迎えた。関西のデジタル系ベンチャー企業の実践の場として多くの実績を残している。今後は、ウェブでの表現の多様化、矢継ぎ早に登場する新技術の解析、クライアントとの高いレベルでの技術、意識の共有化などが問題になる。残された課題も多いが、これからどうやって展開していくのか注目したいところである。

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