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立体CG映像の『ゲゲゲの鬼太郎~鬼太郎の幽霊電車~』が登場

1999年03月03日 00時00分更新

文● 報道局 西川ゆずこ

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 水木しげる原作のテレビアニメ『ゲゲゲの鬼太郎』が、立体CGになって登場する。これは、(株)デジタルアミューズの子会社である(株)ビジュアルサイエンス研究所(以下:VSL)とテレビアニメ『ゲゲゲの鬼太郎』の制作を手掛けてきた東映アニメーション(株)が共同で制作したもの。2月25日、出来上がったばかりの立体CG映像『ゲゲゲの鬼太郎~鬼太郎の幽霊電車~』の完成披露試写会が、都内で行なわれた。

『ゲゲゲの鬼太郎~鬼太郎の幽霊電車~』 (c)水木プロ・東映アニメーション (c)東映・VSL・DA 1999
『ゲゲゲの鬼太郎~鬼太郎の幽霊電車~』 (c)水木プロ・東映アニメーション (c)東映・VSL・DA 1999



 この立体CG映像、専用の偏光レンズ方式メガネをかけてスクリーンを見ると、映像が飛び出して見える作品だ。もちろん、『ゲゲゲの鬼太郎』が立体CG映像、いや、CG映像になるのさえも今回が初めてである。


「テレビアニメで築いた鬼太郎の世界観を損ないたくなかった」

 「テレビアニメで築いた鬼太郎の世界観を損ないたくなかった」と、東映アニメーションの清水慎治氏が語っているように、プロデュースと演出は東映アニメーションが担当している。CG制作は、VSLが担当。

『ゲゲゲの鬼太郎~鬼太郎の幽霊電車~』『ゲゲゲの鬼太郎~鬼太郎の幽霊電車~』


(c)水木プロ・東映アニメーション (c)東映・VSL・DA 1999

 本作品のため、完全オリジナルストーリー『ゲゲゲの鬼太郎~鬼太郎の幽霊電車~』が新たに執筆された。主人公は、劇場版『おばけナイター』にも登場した、三太郎。ゲゲゲの鬼太郎はもちろんのこと、ねずみ男、目玉の親父などが登場する。

 東映アニメーションとVSLの共同制作により、今までにないおもしろさで、迫力のある立体CG映像がスクリーンに登場した。ストーリーもさることながら、細部にいたる演出が立体CG映像の鬼太郎の世界をみごとに表現。12分間、画面に釘付けになるのは間違いない。

 なお、本作品は3月20日から東京・浅草にある『花やしき』の敷地内で上映される予定。そのほか、全国の遊園地、イベント会場に上映される予定だ。

左から、VSLの稲石祐喜子さん、青木要氏、村上大氏、東映アニメーションの清水慎治プロデューサー、VSLの新井啓介氏、東映アニメーションの細田守監督、VSLの中村一夫氏
左から、VSLの稲石祐喜子さん、青木要氏、村上大氏、東映アニメーションの清水慎治プロデューサー、VSLの新井啓介氏、東映アニメーションの細田守監督、VSLの中村一夫氏



【INTERVIEW】東映アニメーションの清水慎治プロデューサー、演出を担当した細田守監督、そしてCG制作を担当したビジュアルサイエンス研究所の方々に制作背景について伺った

将来的には、テレビアニメの『ゲゲゲの鬼太郎もCGに!?

東映アニメーションの清水慎治プロデューサー:

「鬼太郎のよさは、そのアナログ的な世界観。つまり、ださくていいと思っていました。わたしは、テレビアニメ『ゲゲゲの鬼太郎』を4シリーズ担当してきたのですが、4シリーズ目ではむしろレトロな感じに戻そうと思っていたほどです。ですから、3DCGには踏み切れなくて、はじめは逃げ腰だったわけです。でも、CG制作担当の彼らの顔を見たら、作れるかなと思って、制作に踏み切りました。

 唯一、テレビアニメの鬼太郎の世界観だけは大事にしようと思って制作に携わりました。そこの、ハートだけは渡さないぞと。だって、イベント会場に来る人もテレビを見た人が来るわけですから、その点は気をつかいました。

今日みたいな結果になるとは思ってもいませんでしたよ

立体CG映像が、今日みたいな結果になるとは思ってもいませんでしたよ。逆に2Dだとなにか物足りないとさえ、感じるほど。3DCGのほうがキャラクターが生き生きしている。3DCGのテレビアニメ化に関しても、お金と時間がゆるせばやってもいいかなと思っています。これから、鬼太郎は5シリーズ、6シリーズと続いていきますし、もし権限を持っていたら、テレビアニメのCG化を叡断(えいだん)しますね」

演出担当の東映アニメーション細田守監督:

「はじめ、この企画の担当になった時は正直いって、悩みましたね。まず、3DCGのキャラクターを人間がキャラクターとして見てくれるのか、疑問に感じましたね。鬼太郎の世界観を大事にしようと思った時、テレビアニメで親しんできている視聴者が、3DCGの鬼太郎を見て「あ!!鬼太郎だ!!」と、言ってくれるのか。不安でした。キャラクターのモデリングの段階では、まだ確信は持てませんでしたね。

今回、モーションキャプチャー技術を使っていません。

 でも、ある瞬間、鬼太郎に見えたんですね。これは、VSLのCGデザイナーの力量のおかげです。今回、モーションキャプチャー技術を1カットにも使っていません。鬼太郎にはリアルすぎる動きではなくて、デフォルメされたアニメっぽい動きにこだわっていますので、アニメーターの力量にゆだねました。実感としてのリアルさは表現できたのではないかと思っています」

VSL CG制作担当の村上:

「これまで、技術的な方面で3DCGの制作に走り勝ちでした。でも、技術ではなくて、話としておもしろいものを作るのが重要なんだなと。今回は、おもしろいものを作る手法を勉強させてもらいました。

3DCG技術ではなくて、話としておもしろいものを作るのが重要

 はじめて“普通”のものができたと思っています。技術を知らない人が見ても、アニメーションとして、誰がみても、「おもしろいね」「あ、三太郎君かわいかったね」と感じるものができたと思っています。CGだから、映像がすごいというのは、間違った固定観念ですね。今、続々と競合他社がCGに進出してきているので、逆にCGに本質的に“いいもの”が必要とされています。この作品では、やっとスタートラインに立てたと感じています。

 絵の具としてはCGは優秀なものです。でも、結局人間が作るわけですから、作る人によって出来上がる作品も違ってきます。清水プロデューサーが言ったように、アニメーションの制作には、絵心を持つということが大事なのだと実感しました。期待していた以上の経験を得ることができました」

 やはり、すでに確固たる地位を築いている2Dアニメーションの制作側としては、新たな表現方法である3DCGでの制作には戸惑いがあったようだ。3DCGは、まだまだ新しい表現手段である。誌面で「○○をフルCG映像で制作!」といった記事を読んだことがある人も多いだろう。新しい技術ということで、多くの制作者がさまざまな試みを行なっているのも事実だ。でも、まだ“いい”作品と言えるものは数えるほどしかなく、当初2Dで確固たる地位を築いた制作側に戸惑いがあったのも理解できる。

 大きな壁を取り除き、2D制作と3D制作のスタッフが結集して制作した今回の作品は、3DCGの新天地を開拓したのではないか。

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