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文化庁吉田大輔氏講演−−「ゲームの著作物は映画の著作物とは別に新たな権利構成を考える道もある」


1999年9月22日

“東京ゲームショウ'99秋”併催イベントとして、“知的財産シンポジウム”が17日に開催された。主催は、(社)コンピュータエンターテインメントソフトウェア協会(CESA)と(社)コンピュータソフトウェア著作権協会。文化庁長官官房著作権課長の吉田大輔氏を招き、シンポジウムの副題となっている“中古ゲームソフト問題から21世紀のデジタル文化を考える”をテーマに約1時間の講演を行なった。

なお同氏は、争いが司法の場で行なわれている以上中立であるべきとした上で、後述する発言の多くに「……という見方もある」といった語尾を付け、断言を避けている。ただし、本稿では、字数の関係もあり、一部そうした語尾を省いている。

文化庁長官官房著作権課長の吉田大輔氏
文化庁長官官房著作権課長の吉田大輔氏



以下は、吉田氏の講演の内容である。

「5月27日に東京地裁で判決が下された中古ソフト販売をめぐるエニックス訴訟について、裁判の中では、“映画の著作物”にあたるかどうかが大きな焦点となった」

「過去の裁判例を見ると、パックマン事件('84年判決)以降、映画の著作物に該当するという判断が重ねられてきたことも事実である。エニックス訴訟についても、“頒布権がある”という結論に落ち着くということも予想された*

*著作権審議会第1小委員会が昨年12月に提出した映画の著作物の頒布権に関する審議のまとめは、〔ゲームソフトの映像については、映像の効果に類似した視覚的または視聴覚的効果を有するものが増加する傾向にあり、これを映画の著作物に該当するとの判断を示した裁判例も存在することから、その解釈に委ねることとし、現時点では、ゲームソフトについて特段の対応を必要とする必要がないものと考える〕と結論付けている。「ここでいわんとしていることは、あくまで昨年の12月の時点の結論であり、そのことについて留意せねばならない」(吉田氏)


「映画の著作物と認められると、頒布権が認められる。譲渡権では、いったん複製物が譲渡されるとその権利が消尽するのに対し、頒布権は権利の消尽が発生しない。すなわち、頒布権が適応されれば、いったん譲渡された後でも、2次3次……と頒布権の行使ができる。すなわち、著作権者が中古販売業者に対し、使用料の徴収や販売行為の差し止めといった権利行使が可能になる」

ゲームソフト自体が“映画の著作物”にあたるのか
「エニックス訴訟の判決は、従来の判例の流れから考えて、若干驚いた」

「裁判官は、ゲームソフトを映画の著作物*に該当しないと判断した。従って、頒布権は認められなかった。裁判所の判断のポイントは、頒布権がなぜ設けられ、なぜ消尽しないかということにある」

*映画の著作物とは、映画の効果に類似する視覚的または視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物を含むものが該当する(著作権法2条3項)

「ゲームソフト自体が映画の著作物にあたるのかということだが、(1)視覚的または視聴覚的効果を有するもの、(2)物に固定されている著作物であること−−この2つが焦点になる。まず、(1)は、ゲームソフトの場合、その多くが当てはまると思う。エニックス訴訟の場合、固定要件と呼ばれる(2)が中心となった。裁判所は、映画の著作物とは常に同一内容が同一の順序によりもたらされるものであり、内容が一定不変のものでなければならないと判断し、ゲームソフトは該当しないと結論づけた」

「この判決の評価であるが、ある意味において従来の判決と異なる。過去、多くの場合、“映画の著作物と認める->上映権の侵害を認める->ゲームセンターの違法ソフトの使用を差し止める”であったと思う。しかし、今回争われたのは頒布権についてであり、結論には2つの“道”があっただろう」

「1つは、判決のように(ゲームソフトは)映画の著作物にあたらないと一種の門前払いをすること。もう1つは、映画の著作物であるとした上で頒布権がないとすること。2つめは法律の内容を縮小解釈することに当たるかもしれない。また、(映画の)ビデオとゲームのバランスを考えると、なかなか判断が難しいことではなかろうか。エニックス訴訟に感しては、ある一面で極めて論理的な判決だったと評価することもできる」

「また、判決のポイントは、同一映像が同一順序で提示されているかというところにおかれている。劇場用映画やTV番組は監督やディレクターが映像を編集し、一連の流れは固定されたものである。著作権法制定当時は劇場用映画、それ以降にテレビ放送が加わった。すなわち、同一映像が同一順序でという文句そのままであった*。昭和59年以来、ゲームの問題が法定で争われているが、いわゆるインタラクティブ性のある映像の提示については、ある意味で度外視したと言えなくもない」

*野球中継など録画撮りでない(創作性のない)生放送番組の場合は、著作隣接権で保護される

「(ゲームの映像を)観た限りでは、映画とまったく違うと言いづらい感もある。こういった判断が判例で廷釈されるのか、もうしばらく裁判所の判断をみる必要がある」

「さらに考察を加えると、判決は、映画の著作物の権利の中身は、やはり映画の著作物の制作流通実態を反映し権利が与えられたものであり、映画の著作物の概念ですべてを渡ってしまおうという姿勢に警告を発したものとも受けとれる。ゲームの著作物は映画の著作物と別の概念で、新たな権利構成を考えるという道も考えられる」

ネットワークを介したコンテンツ配信
「中古ゲームソフト販売の問題がなぜ発生したかということについて、権利の問題だけでなく、流通の問題も含んでいる。こちらも同時進行で考えなければならない」

「中古販売店を世の中からなくしていくというのは難しい。調和をとるための努力、世論がどう反応していくかも重要。立法となると最終的に国会で判断される。中古販売の産業界は、説得力のある議論が必要になる」

「小売店を介したパッケージ販売に加え、ネットワークを通じた販売の構想が、いろいろな会社からあがっている
*。今後、こうした流通形態の移行に合わせ、小売店をどうするのかといった問題を含め、権利のあり方を考えなければならない。現在のところ、こうした問題は音楽業界の方が先行しているが、中古ゲームソフトの問題について、“今の時点でこうあるべきだ、このように進めたい”ということは言いにくい。当面は司法判断の動きを見守りたい」

*ゲームソフトのネットワーク流通に関していえば、近日(株)ソニー・コンピュータエンタテインメントから『プレイステーション 2』に関して、CATV網を利用したコンテンツのビット配信ビジネスを2001年に開始するという発表があった。

(編集部 伊藤咲子)


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