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“情報バリアフリー社会とボランティア”パネルディスカッションより

1999年11月15日 00時00分更新

文● 狭間太一郎

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9日に東京年金基金センター、セブンシティにおいて開催されたシンポジウム“情報バリアフリー社会とボランティア”。会場では手話通訳と要約筆記のスクリーン表示で講演内容が伝えられ、さらにはIRCによって同時中継も行なわれた。後編の本稿では、パネルディスカッションと技術デモの模様をお伝えする。

パネルディスカッションでは、基調講演を行なった東京女子大学現代文化学部助教授の小田浩一氏がコーディネーターとなり、6人のパネリストによる発表があった。

伝達者の手を照らす、講演者の声に問合い

全国視覚障害者インターネット接続支援連絡会アクセスボランティアコーディネーターの木村文子氏は、アクセスボランティアによる活動を紹介。アクセスボランティアは、障害者宅を訪問し、“その日のうちにソフト導入、プロバイダーに接続して電子メールを送れるようになるまで”をサポートするもの。

木村氏は、「交通費はユーザー負担になるので、できれば全国津々浦々にアクセスボランティアがいる状況が望ましい」と語った。また、情報をリアルタイムに取得しよう、障害者がアクセスしていることを知ろう、ウェブマスターは音で聴くことを考慮して欲しい、メーカーはより使いやすいソフトを、といった要望が出された。

左から日本障害者協議会の薗部氏、仙台シニアネットクラブ事務局の庄子氏、全国要約筆記問題研究会の太田氏、全国視覚障害者インターネット接続支援連絡会の木村氏
左から日本障害者協議会の薗部氏、仙台シニアネットクラブ事務局の庄子氏、全国要約筆記問題研究会の太田氏、全国視覚障害者インターネット接続支援連絡会の木村氏



全国要約筆記問題研究会副会長の太田晴康氏は、パソコンの性能向上により音声が有用になったと指摘。現時点で字幕の作成が難しいリアルタイムのテレビ放送にも要約を採用すべき、と主張した。

また「目に見える壁は取り除きやすいが、目に見えない壁はバリアーと気づかない」、「日常的に音声でやり取りされることがバリアー」として、シンポジウムの進行についても「要約のパソコン入力の手元や手話通訳者のスポットライトはもっと明るくすべき、話者はひと呼吸置くべき」と厳しく意見。当事者参加と「ルールを全員が共有すること」の重要性を訴えた。

権利を奪われている障害者にこそパソコンを

仙台シニアネットクラブ事務局長の庄子平弥氏は、リタイア後の高齢者を再生、社会参加のきっかけ作りをしようとパソコン教室からスタートしたと発言。活動を紹介するビデオを上映、「いつでも、誰でも、どんなところからでも、どんな状況でも情報に到達できる」という目標を示した。また、NPO法人として活動する予定であることも伝えられた。

日本障害者協議会情報通信ネットワークプロジェクトプロデューサーの薗部英夫氏は、「情報アクセスは現代の人権であり、社会などのバリアーで権利を奪われている障害者にこそパソコンを」と訴えた。インターネットのパソコンボランティア、通称“パソボラ”の取り組みについてビデオを上映、カンファレンスとメーリングリスト、パソコンリサイクルプロジェクトといった活動を紹介した。

テープをパソコンに録音して編集するデジタル録音図書

DAISY TOKYO副代表・朗読グループ代表の幸野尚子氏は、デジタル録音図書について報告した。“DAISY”は国際標準の規格で、テープをパソコンに録音して編集するもの。CD1枚で20時間の録音が可能であり、テープでは20から30巻になるものも、ほとんどが1枚で済む、ページでも引けるというメリットがある。また幸野氏は、再生装置であるプレクスターの『PLEXTALK(プレクストーク)』で、実際に図書を再生するデモも行なった。

視覚障害者用のCD読書機『PLEXTALK(プレクストーク)』。製品情報は、http://www.plextor.co.jp/reader/r_1.html
視覚障害者用のCD読書機『PLEXTALK(プレクストーク)』。製品情報は、http://www.plextor.co.jp/reader/r_1.html



日本電子工業振興会、広報・国際部長の清紹英氏は、業界と通産省の間に立つ中間媒体としての立場から意見を述べた。またCOM Japanでの“アクセシビリティ&バリアフリーサークル”といった取り組みも紹介した。

発表に続く質疑応答では、企業の取り組みに話が及んだところで清氏より「やりましょうと言っても掛け声だけのことも。言われてできることではない、文化にすることが重要」との発言があった。またボランティアのあり方について庄子氏は、「人に与えるのがボランティアという感覚ではなく、自分自身のための活動」であることを強調した。

左から東京女子大学の小田氏、日本電子工業振興会の清氏、DAISY TOKYOの幸野氏左から東京女子大学の小田氏、日本電子工業振興会の清氏、DAISY TOKYOの幸野氏



協賛企業の情報バリアフリーに対する取り組み

続く技術デモでは、協賛企業の取り組みが紹介された。富士通中部システムはWindows95/98対応の画面読み上げソフト『outSPOKEN』のデモを行なった。@niftyは在宅ケアフォーラム、障害児教育フォーラム、すこやか村、医と社会のフォーラム、障害者フォーラムを紹介した。
またイーステックオンラインは、パソコンの操作を記憶し、リモコンで再生できる『アイDo・ソーサ』を、日本アイ・ビー・エムはブラウザー読み上げソフト『ホームページ・リーダー』を、ミサワホームは22キーで日本語入力が可能な小型キーボード『CUT Key』を紹介した。

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