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国際大学対抗プログラミングコンテストアジア地区予選が京都で開催――優勝は中国Tsinghua大学チーム

1999年12月07日 00時00分更新

文● 野々下裕子

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編集部注:中国、韓国などの大学名および人物名は、英文での表記とさせていただきました。

国際計算機学会(ACM:Associate for Computing Machinery)が主催するACM国際大学対抗プログラミングコンテスト(ICPC:International Collegiate Programming Contest)のアジア地区予選京都大会が、12月の3、4日の2日間、京都市・下京区の京都リサーチパーク(KRP)を会場にして行なわれた。ACMでは、このような国際コンテストを'70年から開催しており、昨年初めて日本で予選が行なわれた。

このアジア地区予選は、11月5日にインターネットを利用して行われた国内予選に引き続き、アジア地区代表を選出するもので、上位入賞チームは、2000年3月に米フロリダ州のオーランドで開催される国際大会への出場権が得られる。

ちなみに11月のインターネット予選では、今回の京都大会に出場する20チーム以外に、上海・台湾大会に参加する2チームがそれぞれ選出された。先週行なわれた上海大会では、京都大学が18位入選と善戦した。なお、台湾大会は来週に開催される。

大会のルールは国内予選と同じで、3人1組でチームを作り、出題された問題に対し、C、C++、Java、Pascalの、いずれかの言語を用いてプログラムを組んでいく。すべてのプログラムを短時間で組み終えたチームの勝ちだが、基本戦略としては、簡単な問題から早く解いていくほうが有利になる。審査は別室でネットワークを経由して行なわれた。集計等は、審査員らが専用のシステムで行ない、その結果が、ホームページ上に随時更新されるようになっていた。また、戦績以外に会場内の画像も、ホームページを通じてインターネット上で中継された。

今回のアジア地区予選が、先日の国内予選と最も違うのは、参加者が全員同じ場所で同じマシンという条件の中で、一斉に問題に取り組むという点だ。ただし、予選と同じくマシンは1チームに1台なので、どういう作戦とチームワークで闘うのかが勝負の決め手になる。構成を考える、プログラムを組み立てる、ただひたすら入力する、というように3人がそれぞれ作業を分担する“パイプライン方式”や、3人が各自一斉に問題を解き、早くできた順でキーボードから打ち込んでいく“パラレル方式”など、作戦にもいろいろあるようだ。

そうして問題を解き、審査員に送信した答えが正解だった場合、チームのテーブルに風船がくくりつけられる。問題は全部で8つだから、8つの風船が上がったらすべてクリアしたことになる。風船を手にしたスタッフが会場内に入ってくるたびに、プレッシャーがかかるので、本選では、こうしたプレッシャーにどう立ち向かうかもポイントになる。また、チームにはそれぞれコーチが同行しており、競技前の戦略を練ったり、アドバイスをする。もちろん本選中のアドバイスはできないが、海外のチームの中には熱心なコーチが多く、そうした存在が学生たちにとっては大きな存在でもあるのだろう。

コンテスト開始

初日の3日は説明を兼ねた練習日だったので、学生たちもリラックスムードだったようだが、4日の本選では雰囲気が一変し、会場全体が緊張感でいっぱいになった。ただひたすら問題用紙をめくる音と、キーを打ち込む音だけが響く。

3人×30チームが一斉にプログラムに取り組む姿は圧巻
3人×30チームが一斉にプログラムに取り組む姿は圧巻



スタートからわずか7分で1問目の正解を出したシンガポール国際大学チーム。昨年のアジア地区大会の優勝チームでもある
スタートからわずか7分で1問目の正解を出したシンガポール国際大学チーム。昨年のアジア地区大会の優勝チームでもある



このようにホームページで流される試合の状況を真剣な表情で見つめるコーチたち
このようにホームページで流される試合の状況を真剣な表情で見つめるコーチたち



本選開始後、まず最初に問題をクリアして風船を手に入れたのが、シンガポール国際大学のSeniorシンガポールチームだ。開始からわずか7分という驚異的なスピードである。彼らは昨年のアジア地区予選の優勝チームで、メンバーも同じ構成という優勝候補。その後も順調に風船の数を増やしていった。

だんだんと会場に風船の数が増えていく
だんだんと会場に風船の数が増えていく



参加者は皆おそろいのTシャツを着ている。白は参加者、黒はスタッフで色分けされている
参加者は皆おそろいのTシャツを着ている。白は参加者、黒はスタッフで色分けされている



アジア予選の場合、ほとんどの国が日常的に英語を使っていないので、プログラム辞書に加えて、英語を読むための辞書も必要になる。会場内での言葉も基本的に英語以外は使ってはいけないそうだ
アジア予選の場合、ほとんどの国が日常的に英語を使っていないので、プログラム辞書に加えて、英語を読むための辞書も必要になる。会場内での言葉も基本的に英語以外は使ってはいけないそうだ



それから1時間後、あちこちのテーブルに風船が上がりはじめた頃、一気に状況が変化した。中国から参加しているTsinghua大学が、5問目までを立て続けにクリアし、続いて韓国Yonsei大学のYonsei Eagleチームが5問をクリア。その後はしばらく両チームのデッドヒートが続いた。レベルの高い戦いが繰り広げられる中、Tsinghua大学が一気にラストスパートをかけ、制限時間を1時間も残して、すべての問題をクリアしてしまった。これには会場のスタッフもかなり驚いたようだ。さらに、優勝候補ナンバー1と言われていたシンガポール国際大学も制限時間前に全問クリア。結局、最後の最後に追い上げた韓国国際大学を含むトップ3チームは、制限時間内に全問解答してしまったのだ。

タイムアウト前に全問終了して、ちょっと余裕のTsinghua大学チーム
タイムアウト前に全問終了して、ちょっと余裕のTsinghua大学チーム



終了のカウントダウンをする実行委員長の京都大学の湯淺太一教授(写真右)
終了のカウントダウンをする実行委員長の京都大学の湯淺太一教授(写真右)



終了の合図が画面に表示される
終了の合図が画面に表示される



試合後の表彰式は、会場をKRP内の400人が収容できるバズホールに移して行なわれた。まずは国際ルールに準じて、18位のチームから順番に名前が呼ばれ、それぞれ賞状と商品が手渡された。日本からの出場チームで最も上位だったのは、東京工業大学のoratrioチームの5位入賞だったが、かなりレベルの高い試合だっただけに、善戦だったといえるだろう。

表彰式とパーティー会場
表彰式とパーティー会場



今回優勝したTsinghua大学のメンバーには、国際大会出場用にと副賞で旅行カバンが贈られた。会場でのパーティーのあと、参加者たちは京都見学ツアーへと出かけた
今回優勝したTsinghua大学のメンバーには、国際大会出場用にと副賞で旅行カバンが贈られた。会場でのパーティーのあと、参加者たちは京都見学ツアーへと出かけた



Tsinghua大学のメンバー。左からコーチのFan Wang氏、Wenhu Wu氏、Xiaoling Weiさん、Lei Chenさん、Zhunping Zhanさん
Tsinghua大学のメンバー。左からコーチのFan Wang氏、Wenhu Wu氏、Xiaoling Weiさん、Lei Chenさん、Zhunping Zhanさん



日本ではまだ参加校も少なく、経験も浅いので、今後の成長に期待をかけたい。来年の日本での予選開催は、筑波大学が主催すると決まっており、次回こそは日本からの出場チームが地区予選を勝ち抜いて、国際大会に参加できるよう期待したいところだ。

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