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【世紀末マシーン・サーカス!! Vol.4】ICCサテライト会場編――135Mbpsの高速回線で映像を配信。ロボットの遠隔制御も

1999年12月28日 00時00分更新

文● 編集部  井上猛雄

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23日、マーク・ポーリン率いるサンフランシスコのパフォーマンスグループSRL(Survival Research Laboratories)がついに日本上陸を果たした。SRLのパフォーマンスは、東京・渋谷の国立代々木競技場オリンピックプラザ内の特設会場において行なわれた。同時に主催者側であるNTTインターコミュニケーション・センターICCでも、その模様がリアルタイムに伝えられた。本稿では、サテライト会場となったICC特設ギャラリーの模様を報告する。

準備段階での映像もインターネットで放映された
準備段階での映像もインターネットで放映された



代々木会場のケーブルが焼き切れるというハプニングも

23日6時を過ぎてから、サテライト会場となったICCギャラリーに、SRLのパフォーマンスをひと目見ようとする観客たちが集まりだした。なかには満員となった代々木会場からはじかれて、あわててギャラリーにやってきた観客もいたようだ。

ICC特設ギャラリーで入場を待つ人々
ICC特設ギャラリーで入場を待つ人々



マシン調整に手間取ったのだろうか? ショーの始まりを観客たちが今か今かと固唾を飲んで見守るなか、定刻を少しだけ過ぎて、スクリーン上にパフォーマンスの映像が淡々と流れ始めた。ICCギャラリーの中央には、代々木会場の模様を伝える大型スクリーンがあり、そのスクリーンの両側には『TrackRobot』に設置してある映像も映し出された。

代々木会場には、固定カメラと回転カメラを2台ずつ設置してあった。その4台のカメラ映像をスイッチャーで切り替えて、ICCギャラリーの大型スクリーンに伝える仕組みになっていた。このイベントの映像は、回線速度135Mbpsという高速ATM専用回線で伝送された。MPEG2エンコーダーで変換し、メーンの代々木会場とサテライト会場であるICCギャラリー、NTT大手町ビルを結ぶ。さらにNTT大手町ビルでは、実験的にIPマルチキャスト網*を使い、ストリーム配信も行なわれた。

*IPマルチキャスト:インターネット上で大量のデータを効率よく配送するための基礎技術。 特に大容量になるマルチメディアデータを混雑なく配信する効果がある

サテライト会場となったICC特設ギャラリーの模様
サテライト会場となったICC特設ギャラリーの模様



会場で見た映像は高速回線ということもあってか、非常に滑らかであった。しかしパフォーマンスの後半で、代々木会場のスイッチャーのケーブルが途中で焼き切れるというハプニングが起こり、映像が途切れてしまう事態が発生。SRLのショーの過激さが伝わる一幕であった。しかし、実際に始まったら何が起こるか分からないライブ中継においては、妙に納得させられるような出来事でもあった。

代々木会場から送られてきた滑らかな映像。代々木会場からの映像をリアルに再現
代々木会場から送られてきた滑らかな映像。代々木会場からの映像をリアルに再現



表舞台のパフォーマンスを支える高度な技術

また、TrackRobotに取り付けられたビデオカメラからの映像も、MPEG2の映像ストリームとして高速光回線で送られた。ICC会場では、ネットミーティングでTrackRobotの映像を見ながら遠隔操作するという試みも行なわれた。代々木会場内のロボットは無線LANで接続されており、TCP/IPレベルで制御できるようになっていた。

ICC会場では、ロボットコントロール用のパソコンが3台ほど設置してあった。それぞれのマシンにはJavaアプレレットで作った専用のコントロールソフトを実装してあり、ブラウザー上からロボットを操作できる。ロボット本体は、slow/medium/fastという3段階の速度調整と、方向制御、前進・後退、アームのアップダウンやグリップ制御まで行なえるようになっていた。イベントが始まる直前の準備段階では、カメラから送られてくる映像を見ながら、現地スタッフが手に持った紙をロボットのアームでグリッピングするなど、いろいろな調整が綿密に進められていた。


ICC会場のコントロールマシン。写真手前のトラックボールで代々木会場にあるTrackRobotを制御する

TrackRobotのコントロールパネル。ブラウザー上から操作できる。写真右はTrackRobotに備えられたカメラからの映像
TrackRobotのコントロールパネル。ブラウザー上から操作できる。写真右はTrackRobotに備えられたカメラからの映像
当初、ICC会場にいる観客がロボットを制御するという企画もあったそうだが、代々木会場の観客に大変な危険を伴う恐れがあるため、急遽、ICCのスタッフがロボットをコントロールすることになった。制御できるロボットには、TrackRobotのほか、丸太を投げつけるロボット『Pitching Machine』も用意されていた。このロボットは壁をぶち抜くぐらいの威力があるため、万が一のこと考慮してICC会場からのコントロールは見送りとなった。準備段階で完全に制御が可能であったというだけに少し残念だった。

ICC技術チーフは、「代々木会場とICCでは10日ほど前から準備を進めていた。準備段階ではウェブカムを使って、ロボットに設置してあるカメラのチルト制御やパン制御などをしながら実験していたが、そのときの映像を本番でお見せできなかったのが残念」と語った。


ICCの舞台裏。代々木会場からの映像をここで受けた


いずれにしても、これだけ大掛かりなテクノロジーを使ったパフォーマンスは、いままで日本では前例がなかったと言えよう。SRLとICC、そのほかたくさんの関係者の協力によって贈られた一足早いスケールの大きなクリスマスプレゼントに感謝の意を表したい。

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