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映画の作り手と売り手、2つの視点からデジタルを語る。石井、押井、塚本、3大監督が登壇――“eAT'00 KANAZAWA”開催(後編)


2000年3月2日

奥深い伝統芸術、文化を育んできた金沢市が、新たな芸術、文化、産業の創造と人材育成を目的として毎年開催している“eAT'00 KANAZAWA(イート2000金沢)”が2000年2月24日から26日の3日間にわたって開催された。本稿では25日午後に、金沢市民芸術村で開かれたセミナーを中心にレポートする。

映画こそデジタル技術で“変わりたがっている”
午後のセミナーCは“デジタルが映画を変えられるか!?”と題して、現代日本映画界を牽引する監督らが参加。会場は当然満員である。開口一番「このセミナーのタイトルはおかしいよ」と押井守監督が声をあげる。

新作『ELECTRIC DRAGON 80000V』と初の時代劇『五条霊戦記』で話題をまく石井聰亙監督(左)。“最後のアナログ作品”『人狼』、フルデジタル作品『BLOOD』の映像を公開した押井守監督
新作『ELECTRIC DRAGON 80000V』と初の時代劇『五条霊戦記』で話題をまく石井聰亙監督(左)。“最後のアナログ作品”『人狼』、フルデジタル作品『BLOOD』の映像を公開した押井守監督



「デジタルが映画を変えられるか?じゃなくて、もう変わってるんだ。たかだか100年の歴史の中で、生まれた当初からテクノロジーなしに成り立たなかった映画が、変わらないわけがない。映画こそが“変わりたがってる”んだ」と象徴的な発言。

石井監督も「アビッドが出てきた時、やった!映画が俺に帰ってきた!!って思った」と語る。自主制作8mm映画から16mm、35mmとメディアが大きくなるにつれ、制作に関わる人間も増え、そのたびに映画が“遠ざかる”ような気がしたという。

手回し編集機とCG
「共同作業を否定するわけじゃないけど、8mmをいじくっていたころのスピード感がデジタル編集でまた戻ってきたんだ」(石井)

3人とも自主映画から出発したキャリアを持つ監督たち、思いは同じようである。

『鉄男』のヒットで“サイバーっぽい映画人”という印象が内外に流布している塚本晋也監督。しかし、いまだに“手回し編集機”が手放せない生っ粋のアナログ人間であると語る。

「僕の発言が誤解されて一度雑誌に叩かれたことがあるんだよ。“デジタル技術をちゃんと理解してないくせに、デジタルはつまらないなんて言うな!”って。パソコンレベルで映像編集ができる環境もたくさん出ているし、実際にそれを使ってみて思うのは、デジタルが全部つまらないわけじゃないってこと。才能ある人間がその才能のもとにデジタル技術を使えばいいんだって……」

飄々(ひょうひょう)とした口調で「僕は徹底したアナログ人間」と語る塚本晋也監督。本木雅弘主演の『双生児』で初めてCG合成を導入した。'98年制作の『バレット・バレエ』では、デジタル編集機で約300カットにおよぶ編集のやり直しを施し、待望の日本公開バージョンを完成
飄々(ひょうひょう)とした口調で「僕は徹底したアナログ人間」と語る塚本晋也監督。本木雅弘主演の『双生児』で初めてCG合成を導入した。'98年制作の『バレット・バレエ』では、デジタル編集機で約300カットにおよぶ編集のやり直しを施し、待望の日本公開バージョンを完成



巷に溢(あふ)れるデジタル映像の大半が、どこかで見たような新鮮味を失ったものに感じられる昨今、塚本監督の“才能”という一言は、映像のプロとして強烈なパンチを放った、というところだろうか。

デジタルは作り手と売り手との距離を縮める
セミナーCが映画の作り手を集めた内容であるのに対し、同時開催のセミナーDは映画の売り手=プロデューサーによるもの。特に海外でも好調なセールスを続けるアニメーション分野のプロデューサーも集まった。

午前のセミナーでも「もうそろそろ日本も映画を“商品”として考えてもいいんじゃないか」との発言が出ていたが、日米ともに大成功した『ポケモン』のプロデューサー奥野敏聡氏は「アニメーションが日本映画のグローバル化を牽引するだろう」と語る。

『ポケットモンスター』を米国で公開した立役者、オー・エル・エムの代表取締役、奥野敏聡氏(左)。『攻殻機動隊』、『新世紀エヴァンゲリオン』をプロデュースする傍らゲームソフトも多数手掛ける、Production I・Gの代表取締役、石川光久氏(右)
『ポケットモンスター』を米国で公開した立役者、オー・エル・エムの代表取締役、奥野敏聡氏(左)。『攻殻機動隊』、『新世紀エヴァンゲリオン』をプロデュースする傍らゲームソフトも多数手掛ける、Production I・Gの代表取締役、石川光久氏(右)



「僕が会社を作ったころは、もうそろそろセルがなくなると言われていた時期。アニメ制作会社として遅れてきた世代の人間だからこそ、先にコンピューターに走った」(奥野氏)

(株)ジェンコの代表取締役、真木太郎氏(左)。東北新社時代にTVアニメ『機動警察パトレイバー』のプロデュースを手掛け、以後アニメ、実写ともに敏腕制作者として活躍している。本セミナーのコーディネーターを務める(株)ボイジャーの代表取締役、萩野正昭氏も映像制作のキャリアを持つ。教育映画の演出、パイオニアLDC制作部時代に数々の名作ソフトを手掛けた
(株)ジェンコの代表取締役、真木太郎氏(左)。東北新社時代にTVアニメ『機動警察パトレイバー』のプロデュースを手掛け、以後アニメ、実写ともに敏腕制作者として活躍している。本セミナーのコーディネーターを務める(株)ボイジャーの代表取締役、萩野正昭氏も映像制作のキャリアを持つ。教育映画の演出、パイオニアLDC制作部時代に数々の名作ソフトを手掛けた



「デジタルのいい面は、それが作り手と売り手の距離を近づけたことだね。デジタルならキャラクターを動かしてみせるといったことがすぐできる。プロデューサーはそれを見て宣伝の方法を考えるられるし、監督とのコミュニケーションツールとして機能している」(真木太郎氏)

アニメ制作と同時にゲーム開発も手掛ける石川光久氏は、社内にプログラマーを抱えるメリットをこう語る。

「機械を入れただけで“デジタル化した”なんてとても言えない。うちでゲームをやってよかったと思うのは、プログラマーを抱えることによって、その機械を“どう使うか”考えるスタッフを持つようになること。これがアニメ制作にも生きてきますね」

世界中から人材を集め、効率よく制作し、事実“儲かる映画”を数多く制作しているプロデューサーたち。いきおい話がビジネスライクになるところ、本セミナーのコーディネイター、萩野氏は「こういうのどう思う?」と意外なデモ映像を流した。それはロシアのアニメ作家ユーリ・ノルシュテイン氏のドキュメンタリー映像。

'60年代の日本人の顔は実写では再現できない
たった1人でこつこつと切り紙アニメを制作し、その美しい映像世界はコアなアニメファンを魅了してきたが、とても爆発的に“売れる”ものではない。実際、ソ連崩壊以前から制作している作品は制作費がなくなり、18年を経た今でも完成を見ていない。

「アニメってチームを組んでシステマティックに作ることもできるし、どんどん狭い個人の世界に没入する方向もあるし。皆さんアニメの魅力ってどんなところにあると思う?」(萩野氏)

これに対して真木氏は“生身の人間が演じるのとは違う不思議な距離感”を挙げた。

「小説の映画化でガッカリするようなことが、アニメでは少ないんじゃないでしょうか?同じものを扱っても実写とアニメでは違う肌合いがあるっていうか……」

「高畑勲監督の逸話に『おもひでポロポロ』をなぜ実写で撮らなかったのか?と言われて“あれはアニメだったから成功したんだよ”という話があります。うちで制作している『人狼』は時代背景が'60年代。これについて押井守が言ったのは“'60年代の日本人の顔を、今の役者はできない。でもアニメーターなら描けるんだ”ということ」と石井氏は語る。

日本映画のドル箱であると同時に、夢と虚構の美で人々を魅了する不思議なメディア、アニメーション――その魅力について“ビジネスマン”であるプロデューサーが熱く語っていたのが、印象的であった。

(Yuko Nexus6)


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