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日本アイ・ビー・エム、新ThinkPadミレニアムモデルの内部をのぞく――“ThinkPadセミナー”より

2000年05月19日 00時00分更新

文● 編集部 井上猛雄

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15日、日本アイ・ビー・エムは、同社の東京基礎研究所において、マスコミ向けの“ThinkPadセミナー”を開催した。このセミナーではIBMが進める基礎研究活動の内容や、先日発売されたThinkPadミレニアムモデルの開発ポイントを担当者が説明した。

東京基礎研究所で進める“低消費電力の研究”と“テキストマイング技術の研究”

まず、IBMの基礎研究部門の活動について、同研究所の清水茂則氏より全般的な説明があった。IBMは全世界に8つの基礎研究所があり、蛋白質の合成の情報をシミュレーションしてコンピューターに応用する“ぺタフロップスコンピューター”などのユニークな研究もしている。最も大きな研究所は、米国のWatoson研究所で、1400名の研究員を擁している。

東京では約200名が研究開発に従事しており、既存製品やビジネスに寄与するような研究や次世代製品の種となるような研究を進めている。

具体的には、測定ツール、解析ツールの考案や開発から始まって、いかに低消費電力で長時間駆動が可能な製品をつくれるかを研究したり、1日4万件以上もあるユーザーの問い合わせをデータベース化し、その傾向や特別な質問事項を抽出する“テキストマイング技術”、Almaden研究所の成果をもとにしたトラックポイントの研究などがある。

未来のビジョンとしては、腕時計タイプの“WatchPad”、手のひらサイズの“Badge Computer”、WorkPadに搭載されるRSAチップやサーバー用暗号PCIボードなどのセキュリティー技術、人間の視線をトラッキングしてマウスの代わりに利用し、焦点があったときにクリックするといった技術の簡単な紹介もあった。

手のひらサイズの“Badge Computer”の紹介
手のひらサイズの“Badge Computer”の紹介



ThinkPadミレニアムモデルの機構部に施された工夫とは?

次に、先日発売されたばかりの新ThinkPadミレニアムモデルの開発ポイントを、ソフトウェアと機構という側面から開発担当者が説明した。

新ラインアップのThinkPadミレニアムモデルは、従来のThinkPad600に代わる『ThinkPadA20p』、390/770代わる『同A20m』/『同T20』を発売している(製品の詳細はhttp://www.ascii.co.jp/ascii24/call.cgi?file=issue/2000/0511/hard02.html を参照のこと)。

ThinkPadミレニアムモデル。ThinkPad A20pは、ThinkPadミレニアムモデルの最上位機種
ThinkPadミレニアムモデル。ThinkPad A20pは、ThinkPadミレニアムモデルの最上位機種



機構開発の面からは、機構開発担当の米持健信氏より説明があった。機構部の大きな設計ポイントは各機種間の整合性にある。共通化設計、操作性を向上するためのユーザービリティー設計、強度の向上や特別な熱対策がなされている。

たとえば、共通化設計では、従来ばらばらだったパワースイッチやLCD表示部ラッチをすべてキーボード上に配置したり、ポートリプリケーター、ドッキングステーション、ベイデバイス(FDD/ZIP/DVD/CD/CD-RW/LS-120/セカンドHDD/セカンドバッテリー)の共通化が図られている。

また、“ThinkPadボタン”(後述)やボリューム調整用のボタン、暗い場所でキー操作をするための“キーボードライト”、カメラや無線LANなどを可能にするUSBポート(ウルトラポート)などの配置も共通化し、使い勝手を向上している。

キーボードの上面左に“ThinkPadボタン”(後述)やボリューム調整用のボタンがある。電源スイッチやインジケーターも統一
キーボードの上面左に“ThinkPadボタン”(後述)やボリューム調整用のボタンがある。電源スイッチやインジケーターも統一



ノートパソコンなどモバイル製品の機構部の中でも、特にキーボードについては各メーカーで様々な工夫を凝らしているようだ。今回のThinkPadミレニアムモデルでも、いかにキータッチを快適にするか、力のかかり具合とキーストロークの関係などについて綿密に研究したという。また、トラックポイントも内部に空間を設けることで、たわみやすく指のなじみをよくする工夫もした。

特別な熱設計をしている冷却システムは、従来ファンとヒートパイプだけで冷却していたものにサーマルヒンジを設けた。ファンからヒートパイプで熱を伝導させ、サーマルヒンジからヒートスプレッダーで放熱部を広げることで放熱性をよくしている。これはThinkPadA20pで採用しているものだ。

“ThinkPad A20p”のカバーを開けたところ。中央下にCPUがある(左)。冷却ファンとヒートパイプを外したところ(右)


サーマルヒンジから底面カバーのヒートスプレッダー(右)に放熱する
サーマルヒンジから底面カバーのヒートスプレッダー(右)に放熱する



ThinkPadボタンを押してみると……

ソフトウェアの面からは、エンジニアリングソフトウェア開発担当の熊木淳氏が説明をした。ソフトウェアのポイントとしては、上記のThinkPadのワンタッチボタンにより、必要な情報をオンラインで提供できるようにしたこと。

キーボード上にあるシンクパッドボタンを押すと“AccessThinkPad”という画面が現われる。ここでオンラインマニュアルの閲覧や検索などを行なえる“ThinkPad Assistant”、BIOSや修正ドライバーなどをアップデートするサイトにつながる“ThinkPad Patrol”のメニューが表示される。

“AccessThinkPad”の画面。ThinkPad Assistant”と“ThinkPad Patrol”のメニューが表示される
“AccessThinkPad”の画面。ThinkPad Assistant”と“ThinkPad Patrol”のメニューが表示される



また、ThinkPadはプレゼンテーション用に使われることが多いので、プレゼンをする際の表示デバイスに適合する解像度を自動設定する“プレゼンテーションディレクター”も採用ている。

これ以外にも、バッテリー寿命を長くするための“BatteryMaxiMiser”も用意している。これは、従来設定するのが難しかったパワーマネージメントの詳細を簡単に設定できるようにしたもの。メニューから、ワープロ操作、プレゼンなど“行なう仕事”に選んで、その仕事に合った電源管理を設定できる。また、タスクバー上にバッテリーゲージを表示したり、バッテリーの電圧、電流、消費電力やサイクルカウントなども表示できるようになった。“BatteryMaxiMiser”をうまく使えば、バッテリー寿命に30分から40分程度の差がでるという。

“BatteryMaxiMiser”。バッテリーの電圧、電流、消費電力やサイクルカウントなども表示できる
“BatteryMaxiMiser”。バッテリーの電圧、電流、消費電力やサイクルカウントなども表示できる

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