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【ビジネスシヨウ2000 OSAKA Vol.2】日米間のネット市場格差と価値基準の変化。ベンチャーのマネジメントはプロに任せる時代に


2000年6月19日

6月14日から16日までの3日間、インテックス大阪会場にて“ビジネスシヨウ2000 OSAKA”が開催された。ここでは15日に国際会議ホールで開かれた特別シンポジウムの中から、ネットイヤーグループ代表取締役CEOの小池聡氏を講師に迎えて行なわれた“IT革命時代のビジネスモデル――日米最新情報と成功要件”を紹介する。

BI/AI(Before Internet/After Internet)におけるビジネスの変容
小池氏は1年の半分をアメリカで過ごし、サンフランシスコやシリコンバレーを中心に、ネットビジネスの最前線とも言える位置でビジネスを展開している。その小池氏がアメリカと関わりを持つようになったのは、電通に在籍中の'90年の始め頃に、電通とGEの合弁会社の駐在員としてN.Y.に赴任したためだった。当時の日本はバブル末期だったが、まだ不況の中にあったアメリカに対して、精力的にビジネス拠点を開発している頃。ただし、その頃はまだインターネットは一般化されておらず、ビジネスの対象はマルチメディア。その後、小池氏は'98年にMBOによって独立し、ネットイヤーグループを立ち上げたが、同じ街は“シリコンアレー”と呼ばれるほどビジネスの中身を変化させていた。

「アメリカが大きく変わったのは'92年の大統領選以降。徐々に不況ムードから脱出し、'93年にゴア副大統領が宣言した“情報ハイウェイ構想”と、その翌年にアーパネットが商業向けサービスを開始したのをきっかけにして、一気にネットビジネス市場を拡大していきました。そうした10年間の変化を肌身で感じて言えるのは、インターネット以前と以降でビジネスのスタイルがまったく変わってしまったということです」

それを明言したのは、アメリカのベンチャーキャピタル支援団体のIVP(Institutional Venture Partners)のルーサン・クィンドレン(Ruthann Quindlen)氏。この変化を“インターネットは20世紀における歴史的な変化の境目である”とし、さらに「BI/AI(Before Internet/After Internet)」と表現している。

小池氏はQuinden氏からさまざまな影響を受け、クィンドレン氏の著書である『リアル・ストーリー・オブ・ベンチャー・キャピタリスト』の翻訳監修も担当している。その中には、3つの起業家マインドとして、1.正しいアイデア(Right Idea)、2.正しいタイミング(Right Time)、3.正しい環境(Right Place)があるといったものや、現在のインターネットにおける具体的な5つの投資カテゴリーとしてB2C-3C(Custmer、Community、Consumer)/B2E(employer)/B2B(Vortal-Virtucal Portal)/Wireless/Broadbandがある、といった話が紹介されている。

これからのベンチャービジネスは経営のプロとアマが明確に分かれていくと語る小池氏。自らもアメリカでのベンチャービジネス創造者の1人として、今後の市場育成に力を貸したいといている
これからのベンチャービジネスは経営のプロとアマが明確に分かれていくと語る小池氏。自らもアメリカでのベンチャービジネス創造者の1人として、今後の市場育成に力を貸したいといている



日米ネットビジネス市場の格差の要因とは?
  「今までのインターネットは売り手主体でしたが、これからは買い手主体、すなわち顧客重視になっていきます。そうした流れの中で、アメリカのインターネットビジネスの対象となってきたのが、45歳以上の人たちと女性です。いずれもお金をよく使う世代で、インターネットを占める人口率もそれぞれ30パーセントと45パーセントを超えようとしています。しかし、日本は個人のIT化が遅れているうえに、市場を育てる材料がないので、45歳以上は6パーセント、女性も45パーセントを超えましたがみんな会社でしか使っていない。日本ではまず、コミュニティーとコンテンツをおさえて、市場全体を育てるべきでしょう」

日米のこうした市場格差が生まれ要因としては、情報に対する価値判断のちがいがあると小池氏は言う。

「アメリカでは顧客情報を集めるためにIT化でコスト削減を図る一方で、新しい技術やアイデアには積極的に投資します。マイクロソフトが赤字で採算の取れないホットメールを買収したのがその一例。ホットメールのシステムもさることながら、ホットメールという名前が持つネームバリューすなわちインターネットブランドを買収したのです」

インターネットにおけるブランド価値創造はますます重要になっている。それはブランド価値がそのまま株価に反映されるからだ。たとえば、2000億ドルの資産を持つGMの株価より、無形資産のマイクロソフトが7倍の価値を持っている。

「それをバブルと言うのは間違い。社会の価値基準が変わってきていることに、日本も早く気がつかなければならないのです」

セミナーの中では「日本のベンチャーはアイデアも技術もあるが、経営経験が全くない」という辛口の意見もあった
セミナーの中では「日本のベンチャーはアイデアも技術もあるが、経営経験が全くない」という辛口の意見もあった



ベンチャーキャピタルの考え方にも大きな違いが……
こうした価値基準の違いは他にもある。日本企業のIT化はかなり進んでいて、年を追うごとにアメリカとの差は縮まっているのに、なぜ市場格差が縮まらないのか。これは日米のビジネス習慣もあるが、ベンチャーキャピタルの考え方の違いが大きいようだ。
 
「日本のベンチャーキャピタルはただ資金を出すだけなのに対し、アメリカでは資金どころか口も出すハンズオン型投資で、何よりも一緒にビジネスを育てようとしている。だから、実際は審査1万件に対し、投資するのはたったの15件しかない。ほとんどが“IPO or Buyout(上場か売却か)”という明確なゴール設定があるため、一緒にビジネスができる件数は限られてくるんです」

アメリカでは無尽蔵にベンチャーが登場していると思われているが、N.Y.におけるベンチャーキャピタルの成功件数は、'97年から'99年まで、21件、32件、110件程度。そこからIPOしたのは2社、8社、41社と現実の数字はかなり厳しい。そもそも、本物のインキュベーターになれるだけの経験者が、まだまだ少ないのだ。

「経験者が支援しても失敗するのに、若いビジネス未経験者を資金力だけ社長にするという、今の日本のベンチャーキャピタルはかなり異常。これから必要なのは創造経験であり、経営者の問題がますます大きくなっていくでしょう」

現在、アメリカではマネジメント会社が誕生し、そこにはトップクラスの経営のプロが次々とヘッドハンティングされているという。マネジメントをプロに任せる、そんな時代が始まっているのだ。

国際会議ホール会場は来場者でほぼ満席状態だった
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(野々下裕子)


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