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Palmの手書入力システムGraffitiは、XEROX特許を侵害せず

2000年07月07日 00時00分更新

文● 弁理士 古谷栄男

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※古谷国際特許事務所ニュースレター第97号(2000年7月5日発行)から転載。記事の転載にあたっては、外来語の表記などはすべて原文のまま

ニューヨーク西部地方裁判所は、2000年6月6日、携帯PC(PDA)として有名なPalm Pilotのデータ入力システムは、XEROXの特許を侵害していないと判断した。

3 com社、Palm computing社、U.S. Robotic社(以下Palmという)は、ハンド・ヘルドコンピュータPalm Pilotを販売している。Palm Pilotは、一筆書きを基本としたGraffitiという独特の入力インターフェイスを採用している。
(http://palmpilot.3com.com/products/input/)

このGraffitiを用いることにより、キーボードを用いることなく、スタイラスペンによるアルファベット入力が可能となっている。

一方、XEROX社は、一筆書き入力システムの特許5,596,656を保有している。XEROX社は、Palm PilotのGraffitiが、本件特許を侵害するとして訴訟を提起した。

大きな争点は3つあった。1つは、'656特許にいうところの一筆書きシンボルを、Palmが用いているか否かである。Palmは、一部の文字において、一筆書きになっていない。この点につき、'656特許の再審査手続において、発明者が、全てのシンボルが一筆書きとして現される必要があると主張した点を、裁判官は指摘した。つまり、裁判官は、審査経過を参酌して、PalmのGraffitiは、'656特許の一筆書きシンボルに当たらないと判断した。

2つ目は、文字認識の問題である。'656特許が、ユーザがペンをはなしたらすぐに認識を行うものに限定されるのか否かが問題となった。Palmは、ユーザがペンを離した後も、続く入力を待ってから認識を行う場合がある。この点について、裁判官は、やはり審査経過を参照して、ペンを離したら直ちに認識を行うものに限定されると判断した。

3つ目は、空間的な独立性の問題である。'656特許は、全てのシンボルが完全に異なるシンボルである必要があるかどうかが問題となった。PalmのGraffiti は、アルファベット用の記入領域と、数字用の記入領域を有しており、記入領域によって、同じシンボルでも異なった認識をしている。この点について、裁判官は、明細書の記述、審査経過に基づいて、全てのシンボルが完全に異なるシンボルであるものに限定されると判断した。

Palmは、IBMをはじめ多くの企業にライセンスされている。また、日本でも、ソニーが、Palm OSを搭載したPDAの発売を予定している。Palm陣営にとっては、価値のある判決であろう。なお、本件特許は、日本には出願されていない模様である。

なお、判決全文は、下記にて閲覧できる。
http://pub.bna.com/ptcj/9706182.htm

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