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外国パワーをITに活かせ! ドイツでITグリーンカード制度はじまる


2000年8月4日

ドイツ政府は1日、独国外のIT専門家に発行する移民制度、“ITグリーンカード”をスタートした。コンピューター関連の人材不足を補うことが目的で、第1号はインドネシアの青年に発行された。

CeBIT2000での独首相の演説がきっかけ。ドイツの危機感がスピード可決へ

先月31日、ドイツ政府が発表したところによると、同移民制度は、独国外のIT分野の専門家に適用される制度。就労ビザと滞在ビザを同時に有効とするもので、有効期間は5年間。グリーンカード取得者の家族も滞在が可能だ。

1日付のニュルンベルグナハリヒテン紙によると、同制度適用の第1号は25歳の青年、Harianto Wijaya氏。Wijaya氏はインドネシアの出身で、ドイツ中西部のアーヘン市のアーヘン大学で情報工学を専攻。トップレベルの成績で卒業した。現在、移動体通信関連の企業で働いているという。

ITグリーンカードの議論は今年2月にさかのぼる。世界最大級の情報通信関連の見本市CeBIT2000でのGerhard Schroeder首相の演説がきっかけ。その後ドイツ国内で盛んに議論が行なわれてきた。7月14日に政府案を提案。衆議院で可決され実現した。同月31日現在、政府管轄の職業仲介所だけでも、5458人が申請しており、国別ではパキスタン、ブルガリア、インドからのものが多い。

数年前からドイツ国内ではITの専門家不足が問題になってきており、その数は15万人(独政府発表)とも28万人(ニュルンベルグナハリヒテン紙)ともいわれている。連邦雇用庁長官のBernhard Jagoda氏は人材不足をカバーするには外国からのマンパワーが必要だとし、来年6万人の職場が創出できればひとまず成功だという。

沖縄でのシュレーダー首相。国際政治の中でもITの存在感は大きい(写真=ドイツ連邦政府広報)
浮かび上がるドイツの国内事情。2010年までに情報通信で75万件の雇用を

今回の移民制度の開始にあたって浮かび上がってくるのがドイツの危機感だ。たとえば、専門の大学を卒業していなくとも、ITグリーンカードをもらえる資格がある。10万マルク(約500万円)以上の年収があることが条件だが、ドイツは、マイスター制度に見られるように専門性を重視した資格社会だ。にもかかわらず、人材確保のために柔軟な姿勢を見せていることがうかがえる。

さらには、独国内における産業構造の変革の起爆剤としたい意向もあるようだ。短時間労働のうえ、高い税金と人件費が課せられるドイツでは、企業にとってよい経営環境とはいいがたい。ゆえに独企業が国外へ流出することもあり、昨今、労使協調路線がとられてきた。今回の制度はIT業界、労働組合、政府とがいっしょに作り上げた政策であるとしており、労使協調路線の成功例としたいかたちだ。「合理的でスピードのある決定だ」(独政府)と自らも評価している。

ちなみに先月10日に発表された同国の『経済白書2000』では、情報通信の分野で2010年までに75万件の雇用が創出の可能性があると見込んでおり、アメリカのニューエコノミーと同様、中期的にはITが経済成長につながっているとしている。労働大臣のWalter Riester氏は「グリーンカードはドイツの市場を世界にむけて広げる機会になる」という(1日付、ニュルンベルグナハリヒテン紙)。

EU圏以外の外人パワーと国内の人材育成を組み合わせる

まさに、IT革命による経済の流動性と国内の雇用を守る動きとが真正面からぶつかる同制度だが、それゆえにドイツ国内で人材育成システムの整備も重要な課題になっていた。こうした議論に呼応するかたちで、独政府の発表ではあくまでも即効性のある政策として明確に位置付けている。

2月のSchroeder首相の発言以降、5月31日の時点で政府への問い合わせが5700以上あり、内訳もインド(1200)、アルジェリア(500)、パキスタン(400)、ブルガリア(350)、ロシア(300)という数だ。これまで独国内をにぎわしていた議論の核は、外国人問題と労働問題に集約される。「IT専門家の外国人とは正確にはEU以外の外国人といわねばならない」(1日付 南ドイツ新聞)。

具体的には政策の可決にあたって、企業側ではオン・ザ・ジョブ・トレーニングなど職業教育の機会を4万人ぶん用意することをきめた。2、3年後には6万人にまで拡大する予定だ。一方、労働省でも職業訓練の機会を提供しているが、3万6000人から4万人にまで、枠を増加した。Jagoda氏は、外国人によるマンパワーの増加と、国内での長期的人材育成を組合さねば成功とはいえないとしている。

*ドイツ語独自の表記は英文表記にかえた。

(ジャーナリスト/高松平藏)


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