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【第2回デジタルフロンティア京都Vol.2】デジタル経済の未来はどうなる?(パネルディスカッションより)


2000年9月29日

9月26日、27日の2日間、キャンパスプラザ京都にて第2回デジタルフロンティア京都が開催された。

会場となった京都キャンパスプラザは京都市が100億円をかけて9月8日にオープンしたばかりである。この6階に今回のイベントを主催したデジタルフロンティア京都実行委員会事務局のある京都デジタルアーカイブ研究センターがある

初日最後に、その日の講演出演者に地元京都出身のゲスト2名を加えてのシンポジウムが行なわれた。タイトルとなった“デジタル経済の未来”について、会場も交えてのインタラクティブなやりとりで盛りあがった。シンポジウムは同イベントのアドバイザーである武邑光裕氏がモデレーターを担当。パネラーも武邑氏のネットワークを通じて招待された。

写真手前からモデレーターの武邑光裕氏(東京大学大学院新領域創成科学研究科助教授)、パネラーの伊藤穣一氏(ネオテニー代表)、サム・インキネン氏(ラップランド大学・ヴァーサ大学研究員)、 ジーン・カン氏(グヌーテラ開発者・インフラサーチ設立者)、スコット・フィッシャー氏(テレプレゼンス・メディア代表、慶応義塾大学大学院教授)、中村伊知哉氏(マサチューセッツ工科大学メディアラボ客員教授)
ガングロ世代の感性と、オープンソース化の流れに期待

まず、京都でこのようなイベントが開催されることに対し、武邑氏は京都ならではのキャッチアップ能力を感じるとコメント。それに対し、京都出身でアスキー24のコラムの執筆者でもある中村伊知哉氏も同じような力を感じるという。

「京都は古い街でありながら世界に通じるコンテンツを数多く持っている。それが、京セラやオムロンのような先端技術を売り物にするベンチャー的な企業を誕生させるのだろう。世界に通じるといえば、僕はガングロに注目している。あれだけケータイを使いこなして、文化に敏感な世代は他の国にはいない。ケータイはTV中継機ぐらいの機能を備えるようになるから、その時に日本発の文化が一気に世界へ広まるかもしれない」

「オープンソース化は著作権や収益モデルをどうするかという問題を生み出す一方で、教育の機会を広めるものになっている。そこで学んだものが次のステップを生み出すことに期待したい」と語るのはフィッシャー氏。

「デジタルを進化させたのは、技術者よりも新しい発想や使い方をするアーティストたちだ。技術の世界はハードウェア優先主義で、昔は特にソフトウェアがないがしろにされていた。ソフトなしの技術が失敗を招くのは、今や誰もが分かっている。その結果、ソフトはオープンソース化の道を進み、今やそれがハードの開発を牽引している。今後はハードもオープンソース化されていくべきだと私は考えている。そうしてソフトとハードを共有することで、デジタル経済の未来は物質社会とは反対のシンプルなライフスタイルになっていくだろう」

多くの時間をインターネットアクセスに費やすようになったという中村氏は「インターネットはいいものも悪いものもすべてを助長する仕組み。今後は対立も多く登場するだろうが、そこから新しい知恵が生まれるのも確かだろう」(写真右)。技術と文化の中間的な位置で、いろいろな研究を進めてきたスコット・フィッシャー氏も、新しい文化がデジタル社会を発展させていくと語る(写真中央)
ニューエコノミーが育っていく可能性

情報も共有するべきだとコメントしたのは、フリーソフト『グヌーテラ』の開発者であるジーン・カン氏だ。

「情報共有の流れは留まることを知らない。ただし、著作権は避けて通れない問題なので、そう遠くないうちに意見をまとめられるようになるだろう」と語るカン氏。今後の動きにも注目したい(写真は記者会見のときの模様)

「情報は自由で、インターネット社会においては“プロパティ”という発想そのものが代わっていくだろう。ナップスターやグヌーテラのようなソフトの登場が、そうした変化を加速している。また、VRやワイヤレスといった新しい技術も同じような効果をもたらすだろう。そこでは、価値がビットに置き換えられ、フィッシャー氏が言うように物質社会と異なる価値感も生まれつつある。それによって新しいビジネスモデルも確立され、ニューエコノミーが育っていくと思う」

ニューエコノミーに対して懐疑的な発言も飛び出した。フィンランド出身のサム・インキネン氏だ

「情報共有はするべきだが、自身の著作物であることを明確にする権利だけは失われて欲しくない」とインキネン氏。名前が残ることに価値を見出すのは、昔よりも今のほうが強くなってきているかもしれない

「ニューエコノミーにはバブルの匂いばかりする。実態がなく、新しいものだけがいいものだと言われているようだ。しかし、OSが最新版よりも古いバージョンのほうが、安定して使いやすいこともあるように、いつも新しいものがいいとは限らない。フィンランドは歴史の若い国だが、古いものも大切にすることで成長してきた。デジタル革命はあくまで進化であり、積み重ねによって生まれたものだということを、もう少し考えるべきではないだろうか」

この意見に対し、デジタル社会に明るい伊藤穣一氏は「それでも革新は起きている」と言い切る。

「コピーライトとの使い勝手が悪くなることで対価収益は変わっていくはず」と語る伊藤氏

「ニューエコノミー社会では何もないところからいきなりバリューが生まれ、とんでもない価値を生み出す。すると既存のセオリーが通じない、全く新しい対応が社会に必要になる。だが、まだまだ既存のメタファーにそれを押し込めようとする動きしかない。それが代わったときに、経済やバリューに対する革新を実感するようになるだろう」

特に変わるのは仕事に対する価値観ではないかと伊藤氏は続ける

「お金儲けよりも楽しいことをするのを目的とする人たちが増えてきた。そのためには、お金を儲けなくちゃいけないんだけれど(苦笑)。貨幣価値だって信用のみで成り立っているんだから、将来的に人気度とか利便性とかいった、新しい価値で経済が回る可能性だってあるはずだ」

デジタル化が問題ではなく、デジタルが著作権の問題を浮き彫りにした

後半は会場からの質問を受けて、著作権問題についてのコメントが続いた。

会場となった京都キャンパスプラザの講義室は、参加者でほぼ満席となった。の6階には京都デジタルアーカイブ研究センターがオープンし、初日はそのセレモニーも合わせて行なわれた

「今後、コピーライトという発想は無くなっていくだろう」と大胆な発言をしたのはカン氏である。

「なぜなら、それはあくまで物質社会を対象にしたものだからだ。現在のコピーライトの対象になっているもののほとんどが、目に見えないデジタルデータである。流通も保存の仕方もあまりにも違う。たとえば、このセミナーで聞いた知識は誰のものかといえば、誰も明確に提議できない。ただし、間違えてほしくないのは、著作権そのものは存在するということ。それを今後どういう形で考え、守っていくかは考えていかねばいけないだろう」

伊藤氏も同じ意見で「今のコピーライトに違和感があるのをみんな分かっているからこれだけ議論になる」としている。

「そもそも、インターネット社会ではホームページで発表したものが、世界のどこかの法律に触れる可能性がある。つまり、すべての世の中をひとつの法律で括るのは無理なのだ。それを無理矢理ひと括りで解決しようとしているのが今の著作権法なのだから、そうした考えを根底から変える必要がある。人の行動は法律で規制できないけれど、倫理観は変えられるはず。たとえば、好きなアーティストが作品をつくるためのお金を払わないファンはいないだろう。また、好きだからこそオリジナルの作品やライブ演奏を聴きたいというニーズが生まれる。となると、本物を見抜けるようになり、コピーは自然と価値観を失っていくようになる。そうしたところからもコピーライトの在り方を考えていくべきなのではないだろうか」

モデレーターの武邑氏も同意見で「コピーライトというのは、アーティストとユーザーの間で結ばれるはずの契約なのに、間に業者が入ったためにおかしい関係になってきた。音楽業界もキャピタルとして存在したはずが、利益主義に走り出したのがだんだんと見抜かれてきている。それと同時にデジタル技術が登場したことが混乱を招いていた。デジタル化が問題ではなく、デジタルが問題を浮き彫りにしただけなのだ」としている。

ウォーターマークやコピープロテクトのように、著作権を守る技術はこれからも登場するだろうが、それらと平行して著作への倫理観を高めなければ意味がないと、パネラーたちは異口同音に語る。デジタルフロンティアとは技術よりも心の持ち方の変化ではないかという気がする。

(野々下裕子)


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