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【第2回デジタルフロンティア京都Vol.3】さまざまな環境にバーチャルな形で情報を埋め込む


2000年9月29日

9月26日、27日の2日間、キャンパスプラザ京都にて第2回デジタルフロンティア京都が開催された。その初日、バーチャルリアリティー(VR)の第一人者であるスコット・フィッシャー氏を迎え、“デジタル時代と感覚のフロンティア−VRを超えて”というタイトルで基調講演が行なわれた。

iモードを使ったナビゲーションシステムを開発中

フィッシャー氏は現在、テレプレゼンス・メディア社の代表として、また慶応義塾大学大学院政策メディア研究科の教授として、さまざまなプロジェクトに関わっている。今回は、前半でテレプレゼンスに関わる研究事例を、後半は氏が具体的に関わったプロジェクトの紹介が行なわれた。

スコット・フィッシャー氏は、VR環境とリモートプレゼンスを体現するアートデザイン会社のテレプレゼンス・メディア(旧テレプレゼンス・リサーチ)社の代表を務める。バックの写真は同社の作品で、血管内をVRで探索するといった、映画“ミクロの決死圏”のような実験も行なわれている

フィッシャー氏は、VRを使ったエンターテイメント作品やナビゲーションシステムの開発に数多く関わっている。その中にはAR2 Hockey(ホッケゲーム)やAqua Gantlet(サメやクラゲと闘うアクションゲーム)などのような、技術よりもユーモアが前に出るようなものもある(前者の開発は株式会社エム・アール・システム研究所が担当)。このような物体をVRで視認できるようにする技術は“オーギュメントリアリティー”と名付けらえている。実物のメタファーを応用することで、より現実味を感じさせようというものだ。

オーギュメントリアリティーとは現実の情報を現実のメタファーを使ってサポートするシステム。氏が直接関わってはいないが、日本での研究事例として、東京大学デジタルミュージアムのバーチャルキャラクターを使った作品など、他にも多数紹介された

また、iモードを使ったナビゲーションシステムも開発中で、こちらは実際にコンテンツが動く段階まで開発が進んでいる。ゴーグルやアンテナなどのさまざまな実験機材を身に付けたスタッフが公園を歩きまわり、そこで目に入る植物や虫の情報を、ワイヤレスでインタラクティブに手に入れるというものだ。

SFCでドコモと共同で行なっているWearable Environmental Mediaの実験風景。現時点ではゴーグルからインタラクティブな情報を得るために20kgもの装備が必要だが、将来は携帯電話サイズにまで小型軽量化されていく
モバイル技術で手のひらサイズを実現

「ベル研究所では、情報とそれを結ぶ端末がシームレス化していくことを、“コミュニケーションスキン”と呼んでいたが、アイデアは同じところにある。最近では、ウェアラブルコンピューターという名称が一般的だ。現時点では20kgもの重装備が必要で、とてもスキンとは言えないが、次世代携帯電話規格をはじめとしたモバイル技術の進化は、そう遠くないうちに全装備を手のひらに収めるまでにするだろう」

フィッシャー氏がそう断言する理由は、ここ数年の技術進化にめざましいものがあるからだ。

「'80年にアスペンムービーマップという、実際の映像を使っての道路案内情報システムを実験していた。当時は膨大な画像データベースをレーザーディスクで再生していたが、それでも最先端だった。それが今では、もっと少ないデータ量で映像をスムーズに再生できるようになっている」

ナビゲーションシステムをレーザーディスク時代と現代のもので比べてみると、その違いがよく分かる

さらに、具体的な事例として、フィンランドのオウル大学で実験中のサイフォンのデモムービーを紹介。映像の中では携帯電話が、ある時はVR情報にアクセスできる双眼鏡として、ある時は電子サイフ代わりに使われていた。

フィンランドのオウル大学が研究中のサイフォン(Cyphoe)。携帯端末やディスプレー付きのメガネなどを通じて、さまざまな情報が手に入れられる
さまざまな環境に埋め込める情報“エンバイロメントメディア”

「情報はさまざまなところにバーチャルな形で埋め込まれようとしている。たとえば、看板を見るだけでその商品に関する情報が得られたり、ウェブを通じて買物して、その支払いもすべてオンラインで済ませられるようになる。こうした実験は世界各地で行なわれており、それに合わせて高性能なモバイル機器が開発中だ。日本のドコモは2010年にはどこからでも、インタラクティブな情報にアクセスできる技術を実現するとしている」

NASAが開発中のセンサーウェブ。丸いカプセルの中に機械が詰まっていて、映像や周囲の環境情報を無人で、周囲に影響を及ぼすことなく収集できる。深海や宇宙開発などにも応用できる

フィッシャー氏は、こうした環境の中に埋め込まれた情報を、エンバイロメントメディアと呼んでいる。

「先のiモードの実験もそのひとつ。さまざまな情報へバーチャルにアクセスできるようになれば、環境への影響も最小限に抑えられる。今度の愛知万博ではバーチャルが採用されるそうだが、ぜひとも成功させてほしい」

VRを使った仮想パビリオンの実験も進んでいる「2005年の愛知万博ではぜひとも実現したい」

VRはやはりエンターテインメント分野で取りいれられる場合が多い。最近ではディズニーのアトラクションにもVR技術が利用されている。

「一方で企業はVRをコントロールしきれるかを心配している。私もそれには同感で、技術精度が高くなればなるほど、現実と混同するケースが起きると思う。しかも、デジタル世代ではバーチャルな情報も現実として受け入れるようになっている。そこで大切なのは、どうやって素晴らしいVRに接するかということ。それこそが、今後のデジタル文化に求められていくのだろう」

(野々下裕子)


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