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ブロードバンドは速度や値段よりも品質重視に──@NetHomeパネルディスカッション


2001年6月23日

アットホームジャパン(株)は22日、“ケーブルテレビ2001”会場において、パネルディスカッションを開催した。同社の廣瀬禎彦代表取締役社長、マサチューセッツ工科大学メディアラボ客員教授の中村伊知哉氏、(株)アスキー 月刊アスキー編集長の遠藤諭氏が出席し、“ケーブルテレビネットが作る地域情報インフラの将来像”をテーマにCATVインターネットの将来像について語った。

パネルディスカッションには数百人の聴衆が集まった
パネルディスカッションには数百人の聴衆が集まった

廣瀬氏はディスカッションの冒頭「昨年はブロードバンド元年だといわれたが、年初はファイバー・トゥ・ザ・ホーム(FTTH)などは遙かに先のことで、ブロードバンドといえるのはCATVインターネットだけだった。(ADSLや国の政策変更などで)それが変わったのは10月くらい。ではブロードバンドの中で、CATVの強みは何かということに焦点が移ってきた」と切り出した。そして「(事業者から見ると)ADSLの場合、交換機のある電話局からの距離にしておよそ半径1.5km以内にどのくらいユーザーがいるかが重要で、人の少ない地域までは行き渡らないのではないか。その点でCATVは国の政策もあって全国の各地域に広がっている」と、CATVとADSLの地域的な広がり方の違いについて述べた。

続いて中村氏がかつて郵政省で情報通信行政に従事した経験から「15年くらい前に郵政省にいたときから、CATVが地域の情報インフラになるという認識はあった。CATVは地域のコミュニケーションの質を高める役割を持っている」と、CATVの“テレビ放送”にとどまらない情報インフラの役割に言及した。

アットホームジャパン代表取締役の廣瀬禎彦氏
アットホームジャパン代表取締役の廣瀬禎彦氏

廣瀬氏はここで、地域の情報インフラとしてのCATVの事例として、三重県津市における(株)ZTVの例を挙げた。地域情報としてのネットワーク構築の上で、地域に点在する学校や病院を繋ぐことが重要だが、電話局からの距離が問題となるADSLよりも、CATVに向いているなどとした。また廣瀬氏はアットホームがインターネットサービス事業を開始するに当たって、すでに存在するCATVのネットワークを利用することで、「一気に全国展開が行なえた」とも述べた。

次に中村氏は米国のCATVインターネットの状況について説明した。米国ではCATVネットワークはほぼ全国に行き渡っており、「そこにADSLが殴り込んできた」という。CATV事業者には、インターネットサービスを無理に進めなくとも、コンテンツ(番組)の配信で十分にビジネスができるという雰囲気があるのに対し、ADSLを展開する電話会社は、音声電話サービスには先が無いという考えから必至でサービスを展開しているのだという。また、“コンテンツ”産業がこれから大きくなるという予測を郵政省や通産省が数年前に行なったが、この“コンテンツ”というものに対してニュースとかエンターテイメントというイメージが広まっている。しかし娯楽に使う時間やお金には限りがあり、ここでいうコンテンツの拡大とは、教育や医療、銀行などがインターネット上でサービスされるようになることを指していると述べた。そして「CATVがこれらのコンテンツのどのくらいを取ってこれるかが重要だ」とした。

MITメディアラボ客員教授の中村伊知哉氏
MITメディアラボ客員教授の中村伊知哉氏

これに廣瀬氏は「CATV事業者は、FTTHや無線インターネット、ADSLが普及したとしても、きちんとしたコンテンツをやっているところなら、CATV以外のコンテンツを提供するといったことが可能になる」と同調する考えを示した。

月刊アスキー編集長の遠藤諭氏
月刊アスキー編集長の遠藤諭氏

ここで遠藤氏が、韓国で増えつつある“サイバーマンション”を紹介して、日本の2年先を進んでいるという韓国のインターネット事情を話題にした。遠藤氏が訪れたサイバーマンションは、何棟もの建物に700世帯が入居しているという大きなもので、全世帯にネットワークが引かれてWindows CEベースのアプライアンス端末が配布されているというもの。ここで提供されているコンテンツは、動画のエンターテイメントコンテンツとかそういったものではなく、マンションの管理運営の話し合いや不要品の売り買いの情報、引っ越しの挨拶といったように、マンションの掲示板で行なうような情報のやりとりがネットワーク上に移ったイメージの、生活に根ざした情報だという。常時接続されることで、ローカルなコミュニティーが育ったとコメントした。

遠藤氏が紹介した韓国のサイバーマンションに設置されたインターネットアプライアンス
遠藤氏が紹介した韓国のサイバーマンションに設置されたインターネットアプライアンス

常時接続が話題に出たところで、廣瀬氏がインターネットサービスについてアットホームでの経験を披露した。それによると、昨年ユーザーが10万人を超えたときにインターネットサービスが停止して、問い合わせの電話が殺到し大騒ぎになったという。廣瀬氏は「ブロードバンドサービスが広がって、エンターテイメントとかというものでなく、生活のインフラとして入り込んだときにサービスの質が問われるようになる。今の電話サービス並みの信頼性にしなければいけないと考えている。いまは値段やスピードばかりが比較されるが、将来は信頼性が比較とポイントになる」と述べて、信頼性が最も重要になるという予測を示した。

続けてシカゴのCATV局を視察した際の経験として、「(シカゴの局が)システムの信頼性確保に大きなコストを掛けているのに驚いた。そのうえシカゴのにある2つの局が互いにバックアップを取る体制になっていた。こうした信頼性のコストは、サービス価格に反映しづらいところがあるが、やっていかなくてはならない」と、信頼性の向上について重ねて強調した。

また中村氏は、関西の学術研究都市で、インターネットを利用した教育の研究に携わっている立場から、「どうもこれまでの日本は、どこかに誰かが作ったコンテンツがあって、それを引っ張ってくるというように、インターネットを“道”として使うやり方だ。しかし、インターネットの本質は“広場”のようなもので、Linuxがそうだったように、アイデアをお互いに出して交換しながら、新しいものを作り出すコミュニティー参加型のものだと思う。ただ、今までの日本人は苦手だったとしても、いまの携帯電話でメッセージをやりとりしている子供たちはそういうことが得意かもしれない」と述べ、インターネットの使い方が繋がっていることに慣れた世代の登場によりこれから変わってくるとした。

最後に廣瀬氏がケーブルテレビ2001の自社ブースで展示している、インターネットを使って動画像を送ることができる“@Neteye”や、大学の公開講座をコンテンツとして流す計画などを紹介し、放送などがカバーできないコンテンツを提供するなどとしてディスカッションを終了した。

廣瀬氏もパネルディスカッションの冒頭で述べているように、昨年までは家庭向けの常時接続のブロードバンドインターネットサービスといえばケーブルテレビが主流だった。すでにあるCATVのネットワークを使って追加サービスするということで、サービス料金も比較的割安だったといえる。しかし、イー・アクセス(株)らのADSLによるインターネットサービスが本格的な立ち上がりを見せ、東西NTTも“フレッツADSL”を開始し、スピード面でも価格面でもCATVインターネットの優位性は失われつつある。19日にはヤフー(株)が月額2280円で、8Mbps(下り最大)のインターネット接続サービスが利用できる“Yahoo! BB”を8月に開始すると発表し、大きな注目を浴びた。ADSL以外では(株)有線ブロードネットワークスが月額6100円の100Mbps FTTHサービスを開始し、無線を使ったサービスも数多く試験サービスを行なっている。

ディスカッションではこれらのサービスとの直接的な比較は行なわれなかったが、「速度や価格だけでなく品質が重要になってくる」「しっかりしたコンテンツを持っているCATV事業者であれば、ほかのネットワークサービスにも提供することができる」(いずれも廣瀬氏)といった発言があり、パネルディスカッションに出席したCATV事業者らに“単にインターネットサービスを提供すればいい時期は終わりつつある”というメッセージを送っているように感じられた。ディスカッションでは地域に密着したコミュニケーションインフラの話題が多く登場したが、こうした地域に根ざした情報サービスとインターネットを使ったサービスをうまく結びつけることが、CATVインターネットが発展するための条件になってきたようだ。

(編集部 佐々木千之)


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