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【MACWORLD/NY 2001 Vol.4】基調講演詳報その1“10 on X”──これからはサードパーティーが活躍する番

2001年07月19日 18時46分更新

文● 林 信行

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今回のMACWORLD/NYにおける米アップルコンピュータ社CEO、スティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)氏の基調講演は、5月に米国でオープンしたアップル直営店の話で始まった。

5月、カリフォルニア州のサンノゼ市で開催した“Worldwide Developers Conference(WWDC)”で披露した、直営店のビデオの再上映も行なわれた。このビデオの中でジョブズ氏は「ぜひ、ここ(直営店)に並べる製品をつくって欲しい」と開発者達に呼びかけている。

その声に応えてか、WWDCで開発者を対象に行なったアンケートでは29%の開発者が3ヵ月以内(つまり8月までに)Mac OS X用ソフトを出荷するとし、55%の開発者が6ヵ月以内(つまり11月までに)出荷する、と答えていたことをジョブズ氏は紹介した。

ジョブズCEOは基調講演で“10 on X”として10社を紹介した
ジョブズCEOは基調講演で“10 on X”として選りすぐりの10社を紹介した

ジョブズ氏は既に、1000以上のMac OS X対応製品の出荷が予定されていることを強調した。実際、今回のMACWORLD/NYの影の主役は開発者達も知れない。東京・初台にあるアップルコンピュータ(株)本社では、通常はアップル社員だけが集まってスティーブ・ジョブズCEO基調講演の衛星放送を鑑賞する場に、今回は日本の開発者達を大勢招いたという話だ。

これからますます増えてくるMac OS X用ソフトだが、ジョブズ氏はその中でも特に優れた製品をつくる10社を選りすぐり、基調講演の壇上に招いた。10社の代表がそれぞれ約5分づつおよそ1時間にわたってMacの次世代アプリケーションの魅力をたっぷりと語ってみせた。これがジョブズが言う“10 on X”だ。

1.マイクロソフト:Mac OS Xらしさを追求したOffice

最初に壇上に招かれた米マイクロソフト社、Macintosh Business Unitのゼネラルマネージャー、ケビン・ブラウン氏は「Mac OS Xのソフトとはかくあるべきだ」と言われるような製品を目指したいと宣言。Mac OS Xでしか動作をしない、完全に1からMac OS X用につくられた製品を提供したいという意向を強調した。

ジニーエフェクトでパレットが吸い込まれていくところ

同氏はその後、開発途中の“Microsoft Office X for Mac OS X”を紹介。パレットがジニーエフェクト(Mac OS Xのドックにアプリケーションがするりと吸い込まれるあれ)でツールバーに吸い込まれる『Word』や、ブラウン氏が「これまで出荷されたどのプラットフォーム用のものと比べても、これこそが最高傑作だろう」という『Excel』のデモと、軽く『PowerPoint』の紹介も行なった。

Mac OS Xらしさを持ったWordのデモ
Mac OS Xらしさを持ったWordのデモ

保存用のダイアログ(正確にはシートという)が出ている状態でも、新規書類を開いたりグラフィック要素の透明度を設定できる“Mac OS Xらしさ”を強調した。

2.アドビ:アプリケーション間のスムーズな連携を強調

続いて壇上に招かれたのは、MACWORLD/NYにブースを出展しないことで話題となった米アドビシステムズ社の副社長、シャンタヌ・ナライエン氏だ。ナライエン氏はアドビ社がオンライン、紙媒体、ワイヤレスなどに対応したコンテンツ開発をサポートする“ネットワークパブリッシング”こそがアドビ社の重要な戦略だと説いた。

初めて披露した『Illustrator for Mac OS X』
初めて披露した『Illustrator for Mac OS X』
『GoLive for Mac OS X』
『GoLive for Mac OS X』

同社が紹介した製品は、今回が初披露となる『Illustrator for Mac OS X』で、同じく初披露の『GoLive for Mac OS X』や5月のWWDCでも紹介された『InDesign』とのスムースな連携を中心にデモを行なった。Illustratorの画像データーをそのまま質を落とさずにWebグラフィック用のスライスに分割できる点がポイントだった。

『InDesign for Mac OS X』
『InDesign for Mac OS X』

3.クォーク:Photoshopいらずでウェブページにも対応

つづいてアドビのライバル、米クォーク社の上級副社長、ブレット・ミューラー氏が壇上に招かれた。クォークの強みはなんといっても、世界中の多くの雑誌が同社の製品で実際につくられていること。今回は、QuarkXPress 5.xをベースにしたMac OS X開発途中版でのデモが行なわれ、インラインで表の作成ができることや、PhotoshopやIllustoratorを使わなくても(自動的に画像フォーマットなどを変換してくれるため)ドラッグ&ドロップ操作で、印刷用のページデザインをウェブページデザインに変換でき、しかも、その際、スタイル情報なども保持されることを示した。

開発中の『QuarkXPress』Mac OS X対応版
開発中の『QuarkXPress』Mac OS X対応版

4.ファイルメーカー:秋には全製品Mac OS X対応

つづいて壇上に招かれた米ファイルメーカー社の社長、ドミニク・グピール氏は『FileMaker Pro 5.5』が出荷開始から既に5万本も売れたと発表し、今回はそのコンパニオンとして最適な『FileMaker Server 5.5 for Mac OS X』を紹介した。これは同社の製品としては初めてCocoa技術を使って開発されている。グピール氏は、さらにCATV会社の映画番組の管理やファッション情報誌の情報提供の事例を紹介した。

グピール氏は短い演説の最後を「ファイルメーカーの製品はこの秋までに全製品ともMac OS X対応になる」点を強調して締めくくった。

5.コネクティクス:CADソフトもへっちゃら?のVirtual PC

ジョブズ氏は「もし、Mac OS Xで動かないソフトを使いたい場合はどうしたらいいか?」と聴衆に問いを投げかけ、次のゲスト、米コネクティクス社のカート・シュマッカー副社長を壇上に招いた。シュマッカー氏が紹介したのは、待望のMac OS X対応版Virtual PCだ。『Virtual PC 4.0』の登録ユーザーであれば、今日からでも同製品のプレビュー版、『VPC Test Drive』をダウンロードして試用することができる。

Mac OS X対応『Virtual PC』上で『AutoCAD』を動作させるデモ
Mac OS X対応『Virtual PC』上で『AutoCAD』を動作させるデモ

シュマッカー氏はWindows 2000、Windows 95、Windows 98、Windows Me、Windows XPなどがインストールされたVirtual PCからWindows 98を起動、一瞬にして作業ができる状態になる点や、VirtualPCのウィンドウ枠を境目に、カーソルがWindows用のものからMac用のもの(あるいはその逆に)切り替わる点を強調した。さらにWindows用の『AutoCAD』を使って自動車のモデルをレンダリングしてみせた。

6.IBM:圧巻のデモに大喝采が鳴り響いたViaVoice for Mac OS X

つづいて2年前に、MACWORLD/NYでデビューを果たした米IBM社の『Via Voice』のMac OS X版が同社のトビー・マナーズ氏によって紹介された。

『ViaVoice』Mac OS X対応版
『ViaVoice』Mac OS X対応版

Aquaインターフェースの採用や、きわめて正確なディクテーション(音声認識とテキスト化)機能のデモに聴衆はただただあっけにとられ、デモが終わると喝采が鳴り響いた。PowerPC G4のVelocity Engineやデュアルプロセッサー仕様に最適化された同製品は、今年の終わりにも出荷予定だ。

7.WorldBook:Mac OS X専用の教育タイトル

続いて壇上に招かれたのは教育用タイトルの出版社、米WorldBook社のマイケル・ロス氏だ。『Worldbook』は、学校や家庭を対象にした製品で、ビデオ、グラフィック、テキストと多彩なコンテンツで世界の国々に関するあらゆる情報を提供するタイトル、価格は59.95ドル(約7400円)で、Windows版も旧Mac OS版もなく、Mac OS Xのみに対応する。

Mac OS X版しかないエデュテイメントタイトル『WorlBook』
なんと、Mac OS X版しかないエデュテイメントタイトル『WorlBook』

8.Blizzard Entertainment:Battle.netで会いましょう

つづいてゲームの紹介が始まった。まず招待されたのは米Blizzard Entertainment社の創立者、フランク・ピアース氏だ。同氏は同社のオンラインサービス『Battle.net』で対戦可能な、リアルタイムストラテジーゲーム『Warcraft III』を紹介。その素晴らしい3Dグラフィックスを披露した後、「Battle.netであいましょう」と演説を締めくくった。

Windows/Mac上で大ヒットしたWarcraftシリーズ第3作『Warcraft III』
Windows/Mac上で大ヒットしたWarcraftシリーズ第3作『Warcraft III』

9.Aspyr Media:最高のゲームを最高のプラットフォームに

3Dグラフィックスを使った人気スポーツゲーム『Tony Hawk's Pro Skater 2』を披露した米Aspyr Media社のマイク・ロジャーズ氏は「最高のゲームを最高のプラットフォームに提供していきたい」という力強いメッセージで講演を始めた。効率的な仮想メモリーなどの採用でMac OS Xではゲームがスムーズに動く点を強調した。

『Tony Hawk's Pro Skater 2』はスケートボードを題材にしたゲーム
『Tony Hawk's Pro Skater 2』はスケートボードを題材にしたゲーム

10.エイリアス・ウェーブフロント: [Maya]

“10 on X”の紹介で大トリを務めたのは米エイリアス・ウェーブフロント社の3Dアニメーション作成ソフト『Maya』で、同製品とMacの架け橋でありながら、先日同社を去ったリチャード・ケリス氏が製品の紹介を行なった(ケリス氏は現在も、同プロジェクトに外部から関わっている)。

『Maya』のロゴ。Mayaは多くのテレビや映画で利用されている
『Maya』のロゴ。Mayaは多くのテレビや映画で利用されている

ケリス氏は、Mayaがいくつものゲームや映画作品の制作につかわれている製品だというお決まりの紹介を手短にした後、大トリに相応しい見応えのあるデモを披露してくれた。Mayaの最大の特徴は自然界のさまざまな物理特性、運動特性を正確に再現してくれるダイナミックスエンジンを搭載していることだ。

ロボットがバランスを崩して……
ロボットがバランスを崩して……
……倒れる
……倒れる

これを利用して、ロボットが前のめりになって倒れて壊れるところや、同じロボットが後ろ向きに倒れるところ、いったん前に倒れそうになるが反動で後ろに倒れるなど、さまざまなリアルな動きをリアルタイムで表示させてみせた。

Mayaで作成したアニメーションムービーを再生して見せた
Mayaで作成したアニメーションムービーを再生して見せた

ジョブズ氏は、これら10社の製品が、これからMac OS Xにやってくる1000のアプリケーションのうちの10だと紹介し、まもなく発表されるMac OS Xのメジャーアップデート版、Mac OS X v10.1の紹介へと移った。

(基調講演詳報その2に続く)

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