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スパコンを使った高校生のプログラミングコンテスト、“第7回SuperCon”開催

2001年08月03日 23時52分更新

文● 編集部 中西祥智

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スーパーコンピューターを使った高校生のプログラミングコンテスト“第7回スーパーコンピュータコンテスト SuperCon2001”の本選が3日、東京工業大学学術国際情報センターの主催で開催された。

スマイルマーク?
スマイルマーク型に配置された星
崩れてしまった。
複雑な運動をくり返して、崩れてしまった

“SuperCon”は、東工大のスーパーコンピューター『SGI Origin 2000』(※1)を使用して、与えられた課題を解くプログラムを作成し、その処理速度を競うコンテスト。今回、メールでの応募となる予選を突破し、本選に挑んだのは高校生チームが10チーム、東工大の大学生チームが3チーム。

※1 『SGI Origin 2000』は、256個のCPUを並列に接続して、153GFLOPSで処理を行なうスーパーコンピューター。

『SGI Origin 2000』
『SGI Origin 2000』

課題は“N体問題”と呼ばれるもので、本選の課題はN個の星に関する位置や質量、速度といった初期データを入力すると、一定時間後の位置を出力するプログラムを作成すること。ただし、空間は2次元で星も2次元だが質量は存在し、星間には距離の2乗に反比例した引力が働く、32単位以上距離が離れると引力は働かない、などの条件が与えられる。

使用するプログラミング言語はANSI Cで、MPI(Message Passing Interface)ライブラリーを用いて32個のCPUによる並列処理を行なう。なお、逐次処理を行なう参考プログラムが参加者には配布され、それを基に最適化、高速化を行なう。参加者は、7月31日から8月2日までの3日間のうち、朝8時から夜8時までの12時間、合計36時間で本選に応募するプログラムを作成することになる。

本選では、

  • 問題A……星の数2000個、時間200ステップ
  • 問題B……星の数1万個、時間200ステップ
  • 問題C……星の数2万個、時間200ステップ

の3問が出題された。星の初期配置や質量、速度などの情報は事前には知らされない。それぞれの問題を最も早く処理したチームにポイント1、以下は1位のチームに対してかかった秒数倍のポイントが与えられる。つまり、3問ともトップで処理できたチームは3ポイントとなる。

3日の本選では、それぞれのチームが自分たちのプログラムの特徴についてのプレゼンテーションを行ない、実際に問題Aの処理が行なわれた。OHPやプロジェクターを使った高校生たちのプレゼンテーションは愉快なものが多く、会場内の父兄や大学関係者の笑いを誘っていた。

高校生のプレゼンテーション
高校生のプレゼンテーション。これは浅野高校“hal9801”チーム。池田高校“noting”チームの藤崎友樹さんはOHPとプロジェクターの両方に、説明することは何もないと表示させ、会場内は爆笑

本選で優勝したのは、筑波大学付属駒場高等学校“KALA”チーム。“KALA”チームは林崎弘成さん、三木優彰さん、宮川拓さんの3人で、本選に提出したプログラムは宮川さんが作成し、林崎さんが改良したもの。三木さんはそのプログラムが動作しなかった場合に備えて、保険として別のプログラムの作成を行なった。

喜ぶ“KALA”チーム
優勝して喜ぶ“KALA”チーム

“N体問題”を並列処理で効率的に解く方法として、n個の粒子ごとに分けて処理する“粒子分割”と、一定の空間ごとに分けて処理する“空間分割”がある。優勝した“KALA”チームは、主に“粒子分割”的なアルゴリズムを用い、また“空間分割”的な手法を併用することで、高速化に成功したという。細かい手法では、たとえば32×32単位の大きさのマス目に空間を分割した場合、32単位以上離れた星には重力が及ばないため、対象の星を含むマスとその周囲8マス以外の計算を行なわないことで、計算量を削減したという。

“KALA”チームを表彰する日本SGI代表取締役社長の和泉法夫氏
“KALA”チームを表彰する日本SGI代表取締役社長の和泉法夫氏。和泉氏は会場内の高校生たちを「大学に進学しないでSGIに就職しないか」と誘った

なお、“第7回SuperCon”には日本SGI(株)と日本電気(株)、コンパックコンピュータ(株)が協賛しており、上位3チームにはそれぞれ副賞が贈られた。優勝した“KALA”チームには、日本SGIから『SGI ビジュアルワークステーション』が贈られた。“KALA”チームに表彰状を手渡した日本SGI代表取締役社長の和泉法夫氏は、最近子供たちの理科離れなどが問題視されているが、“SuperCon”を見ている限り、そんな心配は必要ないと語った。

“KALA”チーム3人
“KALA”チーム3人。左から林崎弘成さん、宮川拓さん、三木優彰さん

“KALA”チームの3人は、副賞として贈られた『SGI ビジュアルワークステーション』について、どう扱うかはきめておらず、とりあえず高校に置くという。また、将来について、具体的な進路や職業については決めていないが、3人とも口をそろえて「プログラマーにはなりたくない」と語った。

全員で記念撮影
全員で記念撮影。前列左から4人目が東工大学術国際情報センター長の藤原英二氏、5人目が日本SGI代表取締役社長の和泉法夫氏

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