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「手の届くコンピューターを創りたかった」――“2ちゃんねる 西スレッド”オフ会開催、アスキー特別顧問西和彦氏も参加


2001年8月13日

インターネット上の匿名掲示板群“2ちゃんねる”で、5月23日より(株)アスキー特別顧問の西和彦氏本人も書き込む“アスキーの西氏が取締役を退任”という掲示版(西和彦スレッド)が設置されている。その西和彦スレッドのオフ会が11日、東京・渋谷のアスキー本社で開催された。

アスキー特別顧問の西和彦氏
アスキー特別顧問の西和彦氏

また、このオフ会の内容は“2ちゃんねる”の“西和彦スレッド”で、掲示板へのリアルタイムな書き込みという形で実況中継した。

“MSXエミュレーター”を

第1部として、1983年にアスキーと米マイクロソフト社の提唱したパソコンの統一規格“MSX”について、参加者と西氏が語り合った。参加者は約50名、会場にほど近い吉野家の牛丼を食べながらの会となった。

西氏はまず、MSXの画面解像度の変遷やアスキーで初めて設計したビデオチップ『V9938』など、MSXの製造初期のことを語った。そして、MSX製造末期に、MSXにCD-ROMドライブとジョイスティックなどを付けてゲーム機として販売しようという考えと、あくまでもキーボードの接続できるパソコンだという考えとの2種類の意見があり、MSXを製造・販売するメーカー間で議論がなされていたことを明らかにした。そして、その時にCDに映像を収録することを考えるようになったという。西氏によると、そういった考えがやがてMPEG-1やMP3といった規格になっていった。MSXはやがて、「1社やめ、また1社やめ」といった形で、製造されなくなった。

“MSXエミュレーター”を
“MSXエミュレーター”を作ります

しかし、西氏はその後、中古パソコンの販売店に掲げられた「MSX買います(「売ります」ではない)」といった貼り紙や、1999年のMSX関連のイベントなどで、まだ多くのユーザーがMSXを続けて使っていることを知った。また、西氏は過去のLSIチップと現在のそれの大きな違いについて「MSXの当時は、プロセッサーは2μmルール(配線の幅が2μm)で設計されており、1μmより先はないと言われていた。しかし、今では0.17μmから0.13μmになった」と語り、現在のテクノロジーならMSXを1チップ化することは可能だとした。そして、MSXを1チップ化してキーボード付きで3000円程度で販売することを考えたという。「1チップMSXなどおもちゃ」だとしながらも、一時は「アスキーを辞めておもちゃ屋に転身することを考えた」と話して、会場を笑わせた。

そして、西氏は“MSXエミュレーター”を開発することを思いついた。“MSXエミュレーター”をWindows、Mac OS、LinuxなどあらゆるOSに提供し、バグの修正などはさまざまな人々にオープンソース方式で行なってもらう。かつて販売されていたMSXのゲームソフトは約4000本あるが、それらをウェブサイトからダウンロードできるようにする。“MSXエミュレーター”の無償配布を開始する時期は2001年末、それが軌道に乗れば、「第1ステージはOK」だという。

パソコンおたくの極致

では第2ステージは何かというと、それは“FPGA(Field Prgrammable Gate Array)”(※1)を利用した新しいプラットフォームだ。西氏は、第1ステージのインフラが整ったら、MSXの次のアーキテクチャーを考えたいとしている。

※1 論理設計の書き換えが可能なLSI。ソフトウェア的に論理設計を変更できる。

西氏は現在、MIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボの客員教授だが、研究室の学生たちと、FPGAによるプログラマブルなプラットフォームを開発中だという。200万ゲート程度のFPGAの周囲に、英アーム(ARM)社のテクノロジーを採用したプロセッサーやビデオチップ、フラッシュROMなどを配置する。この新しいプラットフォームを2〜3年で開発するという。

ホワイトボード
ホワイトボード上に西氏が書いた図。FPGAの概要

西氏によると「このプラットフォームにロジックを組み込めば、これはMSXだけでなく、スーパーファミコンでもApple IIにでも」なり、いろいろな“MSXエミュレーター”を、エミュレートすることができるという。論理設計のためのグラフィカルなツールの提供も検討している。ただし、このプラットフォームを新しいMSXとするかどうかについては、西氏自身も決めかねている。名称も、“SOFTER Hardware”および“Object Oriented Hardware”といった候補はあるが、現状では未定。

CPUにARMを使用する理由について、西氏は「携帯電話」を挙げた。今後のPC・IT業界で最も大きな競争は、携帯電話対ノートパソコンだとし、携帯電話に新プラットフォームを搭載して、処理能力がさらに向上することへの期待を示した。また、マイクロソフトが携帯電話のOSではシェアがほとんどないことを、米マイクロソフト社のビル・ゲイツ会長に話して「恥ずかしくないのか」と聞くと、ゲイツ氏が「恥ずかしくないが、悔しい」と答えたというエピソードも披露した。

さらに西氏は、プラットフォームをレゴのような設計にして、100個並べて簡単にマルチCPUを構成することも検討している。ビデオチップは(株)セガの家庭用ゲーム機“Dreamcast”のそれに似ており、MPEG-2/4のエンコード・デコードも行えるという。しかし、「かつてのアスキーで、チップを売るのはもう懲りた」として、新プラットフォームの製造は行なわず、日米欧や台湾の企業にライセンスを提供するというビジネスモデルを考えている。

もし、似たコンセプトの競合者が現れた場合には「あっさり手を引きたい」としつつも、「競合者は現れないだろう」と考えている。その理由については、これが「パソコンおたくの極致」だからだとしている。

まだ夢は終わっていない

西氏は、新しいプラットフォームを携帯電話、テレビ、冷蔵庫など、あらゆる製品に組み込むことを考えている。家の中に10を超えるこのプラットフォームがあり、それぞれが無線LANでつながっている、というような構図だ。これが本当に普及するかどうかについて、西氏は「安くて、夢があるもの」なら消費者は買うとしている。

まだ夢は終わっていない
まだ夢は終わっていない

MSXが発売された1983年、当時西氏がやりたかったことは「自分の手のとどくコンピューター」を創ることだったという。それから18年、西和彦氏の夢は、まだ終わっていない。

(編集部 中西祥智)


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