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インテル、開発者向けフォーラム“インテル・デベロッパ・フォーラム 2001 Fall Japan”を開催

2001年09月27日 01時29分更新

文● 編集部 中西祥智

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インテル(株)は26日、開発者向けの技術フォーラム“インテル・デベロッパ・フォーラム 2001 Fall Japan”(以下IDF-J 2001 Fall)を開催した。期間は26日、27日の2日間。

“IDF-J 2001 Fall”基調講演
“IDF-J 2001 Fall”基調講演。出席できなかった米インテル社のゲルシンガー副社長の映像を上映している

今回のIDF-J 2001 Fallでは、基調講演を行なう予定だった米インテル社のパトリック・P・ゲルシンガー(Patrick P. Gelsinger)副社長らが、米同時多発テロの影響で来日できなくなった。そのため、基調講演の話者のほか、いくつかのセミナーのスケジュールを変更しての開催となった。26日には基調講演と11の技術トラック(セミナー)を行ない、27日には2つの技術トラックのほか、“e-Business Day”としてEビジネスについての基調講演と5つのセミナーを開催する。

基調講演では、インテル日本法人のジョン・アントン(John Antone)代表取締役社長がIDFの役割について、ラヴィ・アガルヴァル(Ravinder P Agarwal)通信半導体営業本部長がワイヤレスインターネットについて、高橋恒雄通信技術本部長は有線ネットワークについて、マイク・トレイナー(Mike O. Trainor)e-マーケティング本部長がプロセッサーをはじめとするプラットフォームについて、それぞれ講演した。

ジョン・アントン代表取締役社長
ジョン・アントン代表取締役社長

アントン社長はIDFについて「現在インテル社員以外の講演者が30%を占めており、またさらに増加する傾向にある」とし、今後IDFがますます重要なフォーラムになるとの考えを示した。また、今回出席できなかったゲルシンガー副社長の挨拶もビデオで上映した。ゲルシンガー副社長は「インテルの製品・テクノロジーと、日本のデベロッパーのそれが融合することで、現在の不況から抜け出す」ことを期待していると語った。

またアントン社長は、ゲルシンガー副社長が米国時間の25日に、米インテルのCTO(Chif Technology Officer:最高技術責任者)に任命されたことを語った。インテルでCTOという職名は初めてだという。

ラヴィ・アガルヴァル通信半導体営業本部長
ラヴィ・アガルヴァル通信半導体営業本部長

続いて演壇に立ったアガルヴァル通信半導体営業本部長は、「インターネットは、ただひとつ」であることを繰り返し強調した。同氏はまず、WAPやiモードなど、端末ごとにインターネットへの接続が限られていることへの疑問を呈した。「携帯電話などの、ワイヤレスでのインターネットへの接続は、そもそもヨーロッパでのWAP(Wireless Application Protocol)が始まりで、サイト数は約1万サイトになった。そして日本のiモードが大きな成功を収め、サイト数は4万サイト以上になっている。しかし、パソコンから見られる通常のインターネットには約3200万のサイトがある」

インターネットのサイト数のグラフ
サイト数のグラグ。インターネットに比べれば、iモードやWAPのサイト数は微々たるものだ

アガルヴィル氏は、ワイヤレスインターネットの利用を加速するためには、ワイヤレス環境をインターネットに近づける、つまり「PDAでもスマートフォンでも、ユーザーがパソコンと同じ体験ができる」ことが重要だと説いた。そして「インターネットの成長速度に即して、早急にハンドヘルド製品やそのためのアプリケーションを開発する必要が」あり、そのための環境として“インテル パーソナル・インターネット・クライアント・アーキテクチャ(PCA)”を推進すると語った。

アガルヴィル氏によると、PCAによって「アプリケーションを切り替えるたびにネットワークを認証しなおさなければならない」状況を解消できる。コミュニケーションとアプリケーション、それぞれのスタックをPCAでは切り分けるため、アプリケーションを切り替えてもネットワークへの接続はそのまま持続できるという。

インテル パーソナル・インターネット・クライアント・アーキテクチャ
インテル パーソナル・インターネット・クライアント・アーキテクチャ

インテルはXScaleアーキテクチャーによるプロセッサーを2002年に、また2.5Gおよび3G携帯電話に対応するベースバンド・チップセットを2002年から2003年にリリースするとしている。また、ワイヤレス環境に関連する製品としてインテルは同日、携帯電話やPDF向けのフラッシュメモリー『3V シンクロナス インテル StrataFlash メモリ』を発表した。同メモリーは0.18μmプロセスで製造し、また多値セル技術によって1セルに2bitのデータを格納できるため、アガルヴィル氏によると「同じサイズで従来製品の2倍の容量になる」という。

『3V シンクロナス インテル StrataFlash メモリ』
『3V シンクロナス インテル StrataFlash メモリ』

3V シンクロナス インテル StrataFlash メモリは66MHzバーストモードによって高速なメモリー読み出しが可能で、スループットは最大で毎秒92Mbitとなり、アガルヴィル氏によると「通常のフラッシュメモリーの4倍の性能を発揮」するという。同メモリーは64Mbit、128Mbit、256Mbitの3種類で、2001年の第4四半期(128Mbit)および2002年の第2四半期(64Mbit、256Mbit)にサンプル出荷を開始する。またアガルヴィル氏は、インテルの『StrataFlash メモリ』シリーズが多くの携帯電話やPDAで使用されており、1997年以来の累計出荷bit数が20億Mbitになり、現在も増加し続けていることを説明した。

高橋恒雄通信技術本部長
高橋恒雄通信技術本部長

アガルヴィル氏に次いで、高橋通信技術本部長が有線ネットワーク、特にGbit Ethernetイーサネットについて講演した。すでに10BASE-T/100BASE-TXおよびサーバー側のGbit Ethernet化は普及しているが、今後の課題として「クライアント側のGbit Ethernet化」を同氏は挙げている。イーサネットの普及にはプラットフォームの1チップ化が1つの要因だったが、Gbit Ethernet化にも同様のプラットフォームレベルの技術革新が必要だとしている。

“第2世代IXA”
“第2世代IXA”

また、高橋氏はネットワークプロセッシングの重要性についても言及した。近い将来の10Gbps通信時には1パケットあたりの処理時間は35ナノ秒となり、ネットワークプロセッサーの動作周波数は1.4GHz以上になるという。高橋氏によると、インテルはXScaleプロセッサーを基にした次世代のネットワークプロセッサー“第2世代IXA”の開発によって、10Gbpsに対応するという。

マーク・トレイナーe-マーケティング本部長
マーク・トレイナーe-マーケティング本部長

最後に登壇したマーク・トレイナーe-マーケティング本部長は、まず現在の市場環境について説明した。トレイナー氏は、現在の不況について米国の発明家チャールズ・ケタリング(Charles F. Kettering)の言葉「人が欲しいと思うものを作れば、ビジネスは自ずから回復する」を引き合いに出し、ユーザーの望む「GHzクラスで低消費電力のプロセッサー」を提供するという。

デスクトップ向けプロセッサーロードマップ
デスクトップ向けプロセッサーロードマップ
モバイル向けプロセッサーロードマップ
モバイル向けプロセッサーロードマップ

インテルでは2001年度の下半期に、SDRAMに対応する『Intel 845』チップセットによって、Pentium 4プロセッサーへの移行を加速する。トレイナー氏によれば、2001年第4四半期までに800ドル(約9万3600円)以上のメインストリームパソコンは、すべてPentium 4を搭載するようになるという。すでに他社の競合製品とは、クロック周波数で500MHz以上の差があり、トレイナー氏は「競合製品を圧倒」したとの自信を示した。

電力の“壁”を克服
電力の“壁”を克服

また、モバイル向け市場については、2002年にはモバイルPentium 4プロセッサーを投入するという。プロセッサーは性能が向上するのに比例して消費電力も増加し、発熱も増大する。この問題について、トレイナー氏は「高性能を維持しながら消費電力を削減する“Banias(バニアス)”テクノロジーによって、電力の“壁”を克服する」と語った。ただし、Baniasの詳細については触れなかった。


今回のIDF-J 2001 Fallは、基本的には米国で8月27日から4日間開催された“Intel Developer Forum Fall 2001”の内容の、日本向け説明という印象が強かった。しかし、アガルヴァル氏の語った「インターネットは、ただひとつ」という言葉は、強く心に残った。WAPやiモードのように限られたネットワークではなく、パソコンでもPDAでも、携帯電話からでも、アクセスできるのは同じインターネットであるべきだという主張には、納得できる。

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