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「未来を築くのは子供や!!」――CSK、故大川功氏の理想を受け継ぐ“CAMP”の成果を発表
2001年11月13日
故大川功氏の夢を実現
1995年にベルギーのブリュッセルで開催された、先進7ヵ国の情報通信担当大臣による“情報サミット”に、(株)CSK創業者の故大川功氏も出席した。
その席上、大川氏はこんな趣旨の発言したという。「情報社会の未来を担うのは、子供たちだ。未来のない現在の大人による会議ではなく、未来の大人である子供たちの意見を聞くべきだ」。その発言への反響は大きく、大川氏の提唱による子供たちの会議“ジュニアサミット”が、1995年の11月、東京で開催された。
MIT(米マサチューセッツ工科大学)メディアラボ(The MIT Media Laboratory)も、ジュニアサミットをバックアップしており、1998年11月には第2回のジュニアサミットが、MITで開催された。その同じ月、MIT内に計画された“Okawa Center for Future Children(MIT大川センター、2004年完成予定)”に大川氏は数十億円の私財を投じている。そして、CSKと(財)大川情報通信基金は2001年4月、京都府精華町の関西文化学術研究都市に、大川氏の理想を具現化する施設として“大川センター”を設立した。
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“大川センター”外観 |
この大川センターで行なわれている、子供たちの創作や表現を支援する活動が“CAMP(Children's Art Museum & Park)”だ。インターネット上で募集した、7歳から15歳までの子供を対象に、共同作業の場である“ワークショップ”を提供する。
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“ロボスポーツ ワークショップ” |
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“ロボスポーツ ワークショップ”で子供が製作した玉入れロボット。玉を置いてスイッチを入れてみたが、同じ場所をずっと回っていた |
ワークショップには、デンマークのレゴ(LEGO)社製のロボット製作キットで玉入れロボットを作る“ロボスポーツ ワークショップ”や、MITメディアラボの開発した小型コンピューター“クリケット(Cricket)”を使ってオリジナルのロボットを作る“クリケット ワークショップ”などがある。ワークショップは月に数回、土日に行なわれている。
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“クリケット ワークショップ”で製作したピッチャーロボット。落花生と胡桃の殻でできた腕をぐるぐる回して球を投げる |
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モーターで回転する両腕で、紙コップの太鼓を叩き続けるロボット |
なぜ神様は戦わせるのか
CSKは10日、そのCAMPの成果と将来構想の発表会、および識者によるパネルディスカッションを、京都・大川センターで行なった。
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大川センター内の発表会場 |
第1部の成果発表会の冒頭、挨拶に立ったCSKの青園雅紘代表取締役社長は、大川センター設立の経緯について説明したあと、大川氏が「子供はうそをつかない、子供はだまさない」と口癖のように語っていたこと、イスラエルの少女からの「なぜイスラエルとアラブは仲が悪いのか、なぜ神様は戦わせるのか、どうすれば子供たちは仲良くできるのか」というメールに、大川氏が非常に感動したことを語った。
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CSKの青園雅紘代表取締役社長。「CSKのモットーは、より人間性を重視したサービスを展開することだ」 |
そして青園氏は、CAMPを事業に結びつけるつもりはないとし、CAMPで子供たちにチームワークの重要性などを学んでもらい、「まだ小さな輪ができあがったばかりだが、未来の主役である子供たちに、大きく育ってほしい」と結んだ。
子供たちの意見を聞こう!!
基調講演は、MITメディアラボの共同創設者であり、チェアマンでもあるニコラス・ネグロポンテ(Nicholas Negroponte)氏が行なった。
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ニコラス・ネグロポンテMITメディアラボチェアマン。「生まれたてのアヒルが泳げるのと同じように、貧しい国の5歳の子供でも、(きちんと教えれば)パソコンが使えるのだ」 |
講演でネグロポンテ氏は、「子供たちをソーシャルエンジニアに、社会のデザイナーにして、意見を求めよう」と訴えた。2度のジュニアサミットで、ネグロポンテ氏は大人たちのミスを子供たちが修正することを、何度も経験したという。そして、子供にはそもそも偏見はなく、大人が偏見を植え付けているとし、子供たちが世界に関する問題に関与できる場を提供するよう主張した。
また、教育についてネグロポンテ氏は、「子供は生まれてから5年間は自由に遊ぶが、6年目からその後12年間は大人から教え込まれる。15年前にはほかのオプションはなかったが、コンピューターの世界になると、自ら学ぶことと教えられることの境い目がなくなってくる」とし、子供たちが遊ぶことによって学べる場所、自らデザインし、発明できる場所が必要だと語った。MIT大川センターや、CAMPがその場所となる。
そのほかの取り組みとしては、子供たちが取材し、記事にして毎月ウェブ上に掲載する“The Junior Journal”など。またコロンビアでは、同国の内戦・テロリズムにどう対処するか、子供たちの意見を集める試みを行なっているという。
ネグロポンテ氏は、世界平和を達成する方法は「教育しかない」、と語って、基調講演を締めくくった。
大川さんとの約束を1つ果たせた
続いて、CSK特別顧問でMITメディアラボ客員教授の中村伊知哉氏が、CAMPやMITメディアラボの活動を紹介した。中村氏はCAMPについて、「大川さんとの約束を、1つ果たせた」と語った。
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中村伊知哉CSK特別顧問兼MITメディアラボ客員教授。「大川さんの、“未来を築くのは子供や”という言葉を覚えている」 |
中村氏は、誰でも簡単に音楽を楽しめる楽器として、“トイ・シンフォニー”を紹介した。トイ・シンフォニーは従来の楽器とは違って、握ったり振ったり、叩いたり、あるいはパソコンの画面上に線を書いたりして、簡単に音を鳴らすことができるという。「敷居が高くなった」音楽に誰でもチャレンジできることを目指しており、2002年にはトイシンフォニーを使う子供たちとプロの交響楽団の共演も予定しているという。
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“トイ・シンフォニー”の一種。ボールに触れば、あるいは握れば音が鳴る |
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こちらはパソコン上のトイ・シンフォニー。画面上に描いた線によって、音程や音量が変化する。1本の時間軸を表す線と複数の音を表す線で構成しており、時間軸との距離や画面上の位置によって、音程や音量が変化する |
また、複数の国の子供たちをインターネットで結ぶ“デジキャンプ”も行なっており、言葉の壁はあっても「写真や映像に壁はない」ため、子供たちは写真を撮って、ウェブ上で見せ合う。「何をどう表現すればいいかは、子供が考えてくれる」という。
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“デジキャンプ”インドの子供が、自分の日常生活を説明している |
中村氏は、インターネットの本質は「道路ではなく広場」だと考えており、子供たちがお互いの文化や習慣を、どこが似ていてどこが違うのか、考えてくれる場所を提供したいとしている。
また、CAMPについても、中村氏は「閉じていても仕方がない。世界に開いていかなければ」として、茶道や華道、漫才からゲーム(任天堂(株)の本社は京都)など、京阪奈ならではのオリジナリティーのあるワークショップを、行なっていきたいと語った。
CAMPから始めよう
第2部は、“Better Future for Children”と題してパネルディスカッションを行なった。司会はMITメディアラボのミッチェル・レズニック(Mitchel Resnick)準教授で、パネリストはウォルター・ベンダー(Walter Bender)MITメディアラボ所長、シンシア・ブリゼール(Cynthia Breazeal)MITメディアラボ助教授、アレックス・サムナー(Alex Sumner)BBC(英国放送協会)開発ディレクター、上田信行甲南女子大学教授、森由美子CAMPエグゼクティブプロデューサーの5名。
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パネルディスカッション。左から順に、ブリゼールMITメディアラボ助教授、上田甲南女子大学教授、森エグゼクティブプロデューサー、司会のレズニックMITメディアラボ準教授、サムナーBBC開発ディレクター、ベンダーMITメディアラボ所長 |
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ミッチェル・レズニックMITメディアラボ準教授。「“小学4年生の心を持つ40歳”だとマスコミに取り上げられたことがある。違う。まだ40歳にはなっていない」 |
まず、司会のレズニック準教授が「大人になっても好奇心やクリエイティブな心、子供のような心をもつことは重要だ。子供たちが、子供の心を持ち続けられるよう、今の段階から子供たちに場を提供すべきだ」と語った。以下、パネリストの発言を順に紹介する。
新聞は大学だ
ベンダーMITメディアラボ所長は、子供たちによるウェブ上の新聞“The Junior Journal”について説明した。
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ウォルター・ベンダーMITメディアラボ所長。「新聞は、真実、公平、平等を考える大学だ」 |
「子供たちがアクティブに参加することで、メディアを変えることができる。The Junior Journalを、バングラディシュ、カナダや日本など、世界54ヵ国の子供たちが参加して、すでに35ヵ月続けてきたが、先月はほとんど、テロに関する記事だった。また、バングラディシュの子供は父親が死んだことを記事にした。個人的なことでも、何でも材料にする」
「おもちゃではない、本物の新聞であり、子供たちも責任を果たさなければならない。毎月、Eメールで編集会議をしているが、プロのジャーナリストと変わらない、素晴らしい経験をしている。新聞は、真実、公平、平等を考える大学だ。子供が学ぶ場として、素晴らしいと思う」。
子供たちにもっとインタラクティブな体験を
アレックス・サムナーBBC開発ディレクターは、BBCの取り組みを説明した。
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アレックス・サムナーBBC開発ディレクター。「BBCにとって、インターネットは、実は頭痛の種なんです」 |
BBCは2002年、子供のための2つのチャンネルを、新たに開設するという。サムナーさんによると、BBCは教育に注力しており、特に子供がメディアで遊ぶということを重視している。子供たちにもっと、インタラクティブな体験をさせたいとし、子供たちも制作に関わる視聴者参加型の番組作りを目指す。
また、BBCはトイ・シンフォニーにも関わっている。メディアラボと協力して2002年7月2日に、これまで楽器を演奏したことのない50人の子供たちにトイ・シンフォニーを持たせて、グラスゴーの交響楽団との共演させることを計画しているという。
博物館は、展示だけではもう限界
森由美子CAMPエグゼクティブプロデューサーは、CAMPや関連する活動のために、世界中を駆け巡ったことを説明した。
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森由美子CAMPエグゼクティブプロデューサー。「玩具や場で、子供が表現する手助けをしたい」 |
森さんは、デジキャンプのプロジェクトを成功させるために、カンボジアからサンフランシスコ、ダブリン、CAMPを理解してくれるパートナーを探して、さまざまな場所を訪れた。それぞれの土地で、最初は博物館を訪問したが、どこの博物館も通常の展示だけでは限界であり、さまざまな実験を、“ハンズオン(実際に自分の手や身体を使って何かを行なう)”のものをやろうと協力してくれたという。森さんは、「玩具や場で、子供が表現する手助けをしたい」と語った。
CAMPは家庭、学校以外の第3の場所に
上田信行甲南女子大学教授は、自分が作った小さな博物館を通じての体験を語った。
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上田信行甲南女子大学教授。「テクノロジーが進んでも、私たちが鈍感になってしまってはいけない」 |
上田教授は奈良・吉野に“ネオ・ミュージアム(neoMuseum)”を作った。森さんの考えと同じく、博物館は本来どんどん触る場所であるとし、さまざまなワークショップを展開してきたという。「学校や家庭では経験できないことを」子供たちに経験してもらう場として、地元の紙すきへチャレンジしたり、河原の石の音を聴診器で聞いて回ったりといったことを行なっている。
そうやって遊んだことを、メディアで表現できることも、また重要なことだという。そして、上田教授は「家庭、学校以外の第3の場所に、学びのコミュニティーにCAMPがなってくれることを期待している」と述べた。
また、シンシア・ブリゼールMITメディアラボ助教授はまだメディアラボに着任してから日が浅く、以前に研究していたマイクロロボットや認知学について話した。
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シンシア・ブリゼールMITメディアラボ助教授。「子供でも、社会的な反応というものは、幼いころから育っている」 |
CAMPから始めよう
パネルディスカッションでは、遊びやおもちゃについての議論もなされた。
森プロデューサー「ままごとのようなごっこ遊びはなくならない。ただし、使うツールは変わっていく」
上田教授「綾取りは非常に面白い。1人でもできればコラボレーションもできる。伝統の綾取りとコンピューターが組み合わさると面白い」
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綾取りをする上田教授。「伝統の綾取りとコンピューターが組み合わさると面白い」 |
ブリゼール助教授「レゴが好きだった。新しいものが作れるおもちゃがいい」
レズニック準教授「何かを作れる、手の中で何かを作れるおもちゃが重要だ」
上田教授「おもちゃは自分で作るものだ。子供はどんなものでもおもちゃにしてしまう。CAMPでは作る楽しみを教えるべきだ。そして、それをコーディネートしていく教師を育てることも重要。これからの学びをどうすればいいのかを、ここから、CAMPから始めよう」
子供たちが自らの将来をクリエイトする社会を
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大川氏の夢を、実現したい |
そして、パネルディスカッションの最後を、司会のレズニック準教授は、こう語って締めくくった。
「大川氏の夢を実現させるためには、子供たちに自分たちの将来を作りさせるような力を与えなければならない。しかし、メディアラボの数千人だけでは、リーチが足りない(手が届かない)。世界の子供たちに、アプローチしなければならない」
「情報でものごとが変わる社会ではなく、子供たちが新しいことをクリエイティブして変わっていく社会、情報化社会ではなく、クリエイティブな社会を目指さなければならない」
「子供たちが、自らの将来をクリエイトするという、大川氏の夢を、実現したい」
大川氏は、子供たちの可能性を信じた。子供は決して間違わないと考えていた。現在、アメリカの同時多発テロとそれに対する報復攻撃で、世界は騒然としている。では、この世界を子供たちはどう見ているのか、どうすればいいと考えているのか。
子供によるウェブ上の新聞“The Junior Journal”の、パキスタンの子供記者の記事には、こう書かれている。
「私たちの進む道が愛、平和、同情、そして寛容でありますように」
(編集部 中西祥智)
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